以前から気になっていた"難題"に着手しようかと……。
難題というのはケンタッキーフライドチキン(KFC)です。毎月やっている"掲載店舗数No.1"のレストラン検索・予約サイト「食べログ」を使った全国のハンバーガー店の調査。その「ハンバーガー」の検索にKFCが引っ掛かっるんですよ。ケンタッキーフライドチキンはハンバーガー屋なのか? ……いいえ、ケンタッキーフライドチキンはハンバーガー屋ではありません。
22年10月からKFCは「チキンバーガー」なる呼び方をするようになりました。百歩譲ってソレを認めるにしても、それでも、ケンタッキーフライドチキンはハンバーガー屋ではないです。一番の売り物は「フライドチキン」なので「フライドチキン屋」が正しい呼び方ではないかと。でも実際問題、「ハンバーガー」の検索結果にKFCが含まれる――これは"ジャンル"の項目に「ハンバーガー」を登録しているからです。そうしたKFCが全国に"数百"あります。全店ではないんですね。ここがまた問題で。
KFC全店が「ハンバーガー」で登録されているなら、それはそれで処理のしようもありますが、店によってハンバーガーで「登録されていたり・いなかったり」という……この不徹底・不統一は実によくない。
果たして登録の実態はどうなっているのか? ……これが私が前から気になっていた問題です。調べるのに8日かかりました。いつもの調査が3日で終わるところを。その成果を発表します……。
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まずは日本全国のKFCの店舗数です。公式の店舗検索ページで確認出来た店数は本年4月11日時点で「1,281」店。4月3日〜14日の間に食べログで検索出来た店数は「1,280」店。ほぼ同じ数字が得られました。もっと大きな誤差を覚悟していたので、思いのほかの上首尾です。
これら1,280店のKFCが果たしてどんな「ジャンル」で登録されているのか……これが大問題。答えは以下の表をご覧下さい。
全部で「23」のジャンルで登録されていました。毎度ご案内の通り、食べログのジャンルは最大「3つまで登録可能」です。例えば「レストラン」のみ登録している店もあれば、「レストラン、ハンバーガー、鳥料理」の3つのジャンルで登録されている店もあって、それらのパターンを合計すると、全部で「133」通りの組み合わせがありました。とにかくポイントは、1つの店に対して複数のジャンルが登録出来る点です。
最も多く登録されているジャンルは1位「レストラン」、次いで「ハンバーガー」「鳥料理」。この辺はわからなくもない選択ですが、「からあげ」? 「コロッケ」?「ヨーロッパ料理」? ……「当たらずといえども遠からず」なワードが以下続いて、「KFCというお店は一体何屋さんでしょう?」という"クイズ"をやっている感覚ですね。しかも、ビミョーに答えから離れて行ってる感じの。
とにかく、これら23のジャンルを巧みに組み合わせて、全部で133通りの登録がなされているワケですが、今回全てお見せします。登録件数の多い順に並べました。ご覧の通り、一部のパターンに非常に偏っています。その極端な偏りについては後でやります。でもまぁ、そこまでヘンなジャンルも特に無く、まずまず常識的なものが序盤は並んでいる印象です。それが下位に進むにつれて不思議なものもチラホラ……。
例えば77番に登場する「おにぎり」。この「ハンバーガー、おにぎり、カフェ」というジャンル登録のKFCは、東京のイトーヨーカドー東大和店。ところが、食べログページを覗いてみると、本当に「焼おにぎり」の写真が載ってるんですよ。ウソじゃなかった。その該当商品がこちら……「香ばし醤油の焼おにぎり」。これを食べた人が「おにぎり」で登録したのかな?
お次は92番に登場の「ハンバーグ」……これも一瞬「ハンバーグ?」と思うんですが、かつて「ビストロ風ハンバーグサンド」というメニューが本当にありました。恐らくコレを食べた経験をもって、福島の郡山西部プラザ店は「ハンバーグ、カフェ、肉料理」と登録されたんですね。
「ジェラート・アイスクリーム」は大阪の天満駅前店の登録に使われています。ネットで探すと「カーネルモナカアイス」やソフトクリームの情報などが出て来ますが、その辺の商品のことかな?
食べ放題をやっている店があるので「ビュッフェ」のジャンル選択は妥当です。大型商業施設に入る数店が食べ放題実施店とネットにあるのですが、「ビュッフェ」で食べログに登録されているKFCは大阪・箕面の小野原店です。
あとは114番の「焼き鳥」ですか。「焼き鳥、鳥料理、ハンバーガー」で登録は東京の東久留米店。三番手ならまだしも、ジャンルの先頭が「焼き鳥」です(笑)。で、KFCの焼き鳥メニューを探したところ、「ケンタのテリヤキ焼鳥丼」にヒット。東久留米店では売っていないメニューですが。そして129番「売店」で登録されているKFCは甲子園球場店……なるほど、売店かも(笑)。
と言うことで、133通り中の82通りはオンリーワン=「件数 1件」の組み合わせで、全体の85%は上位の10通りで占められる、という結果でした。あらためてトップ10を見てみると↓、1位が「レストラン」一択の418店、2位が「ハンバーガー」一択239店……でも、この2つのジャンルだけだと「フライドチキン屋」のこととは到底思えません(笑)。が、この2トップが過半数を占めているという。
3位が「からあげ」……ケンタッキーフライドチキンが「からあげ」? 気持ちは若干わからなくもないのですが、でも、唐揚げチェーンと言ったら「からやま」みたいなことでしょ? 同一視は出来ないですよね。4位で「アメリカ料理」が初登場。これはわかります。5位が「鳥料理」。むしろこれこそ1位であるべきですね。実に的確なジャンル説明です。
と言うことで最後に、食べログに登録されている1,280店のケンタッキーフライドチキンのうち、「ハンバーガー」をジャンルに含む店は何店あるのか……。答えは「446」店。逆に、ジャンルに「ハンバーガー」を含まない店は「834」店。つまり、全国の3分の1のKFCは「ハンバーガー」の検索にヒットし、残り3分の2はヒットしないという実態が明らかになりました。
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総務省の家計調査もそうですが、ひとつには「ファストフードの代表として」ハンバーガーが使われているのかな……という気がします。つまり、「フライドチキンはファストフード=ハンバーガーの仲間」という認識ですね。ファストフードの総称・代表がすなわちハンバーガー。「そば」も「うどん」もみんな「そば」と呼ぶような感覚です。
そして1位「レストラン」、2位「ハンバーガー」、3位「からあげ」というこの状況……これはお店が悪いワケでも、レビュアーが悪いワケでも全くなくて、一番悪いのは食べログですよ。「フライドチキン」というジャンルを新たに作れば片付く話です。「フライドチキン」が無いから、"当たらず but 遠からず"なジャンル選択を皆さん強いられるワケで、そのものずばり「フライドチキン」さえジャンルにあれば、誰もこんな苦労はしない筈です。韓国系のチキンも増えて来ましたし、20周年を機に、食べログ様・価格.com様、考えてみてはいかがでしょうか……これが結論! (おわり)
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