「ラーメン店「尾道らーめん柿岡や」など飲食店を展開する太魯閣(品川区)は9月22日、六本木交差点の三菱東京UFJ銀行六本木支店隣に、ハンバーガーショップ「R-Burger(アールバーガー)」(港区六本木4、TEL 03-6805-3119)をオープンした」「今後5年間で100店舗まで拡大を目指す」――というニュースを見ておーっ!! と思った。'92年の「フレッシュネスバーガー」以来実に14年ぶりに「バーガー」と名の付くチェーン店が登場したのである。
こういうときニュース記事というのは実に優秀である。知りたい情報を過不足無く、簡潔に伝えてくれる――私には到底無理! 上に引用した記事も、実際に店を訪ねて思った「コノ部分一体どうなってんだろ?」といった疑問に100%応えるパーフェクトな内容で、正直、ココに新たに長文をしたためる気など微塵も起こさせないほどの無欠さ(ま、あんちょこみたいなモンです)……と持ち上げるのはこの辺にしておこうか。最初に言っときます――この食べ物をハンバーガーと呼べる人はまず居ないと断言します(注意:別にお店に文句付けてるわけでも、恨みがあるわけでもありません)。
コレは誰がどう頑張って食べても「肉まん」という食べ物に対する既成概念の域から抜け出せるものではない。「肉まんの白い皮を上下に2つに切り、間に豚肉を挟んだもの」――と表現するのが適確だろう。それを、である……「これまでのハンバーガーとの違いは「手作り」「食材」「食感」へのこだわり」「長年かけて完成させてきたオリジナルバンズはかつてない食感を実現……」って……。ゴメン、聞くまでもないことかも知れないけど、ソレ本気で書いた?
いや、今言ってるのはお店がどうの……いう話ではないんですよ。言いたいのは、記事として最も伝えるべき重要な部分がすっかり抜け落ちているがために「コレ、絶対バーガーテング張りのジョークに決まってるヨ!」という解釈よりほかに受けとめようが無いという、この本気ともジョークともつかぬ記事に対するクレーム……いや、文句通り越して、もう殆ど嘆息ですな。
実物を見た上でなら「肉まんの生地をバンズに見立て……」とか「流行りのバーガー風に肉まんをアレンジ……」とか書くでしょ、ゼッタイ。そうじゃないってこたぁ、つまりプレスリリースをそのまま載せてるワケですネ? 伝え手としての意思とか主張といったものはこの際どーでもよいのですネ? ……何だか「報道の在り方を問う」なんて方向に向かいそうだが、まぁいいや。この辺にしとかないと「オトナの事情の解らぬ世間知らず」と思われそうだから。
とにかく――もしこれが広告ならば店の用意した資料そのままでも構わないけど、一応「新聞」とか「ニュース」とか銘打ってる以上ねぇ……。じゃあニュースと広告の違いは何なのよ……と問いたくもなりますて。
六本木交差点に立てばすぐ分かる、白と赤の店。入ると正面にレジ、奥にキッチン。入り口脇にカウンター席4つ。階段を上って2階は31席。全席禁煙。椅子もテーブルも白。トレーは赤。床は木。BGMはとらえどころなくフツウに洋楽ch。
バーガー類5品、ドッグ1品。大葉や甘酢漬け大根を添えた「Rバーガー」¥480、竹炭粉入りの黒バンズに酢豚風の具材をあわせた「黒酢バーガー」¥530、マグロのパテに醤油風味のあんとわさびマヨネーズで味付けした「まぐろわさびマヨネーズバーガー」¥650、「チキン梅バーガー」¥620、「アップル・バーベキューバーガー」¥600など。
Rバーガーはポテトorライスペーパーで巻いたスティックサラダ+ドリンクのセットで¥780だったかな? 単品に「アイスウーロン茶」¥320を合わせると¥800。
不必要なまでに立派なパックの中にちんまりと座すRバーガー。中華まん風、真っ白なオリジナルバンズはてっぺん絞りなしの丸型に"R"の文字。裏味噌、ポークパティ、薄切りの甘酢漬け大根、大葉、また味噌、下バン。ずい分小ぶり。
八丁味噌をベースに甘めに仕立てた味噌ソースはくどからず、良い塩梅に効いており、何より大葉とよく合う。岩手産SPF(無菌)健康豚「岩中ポーク」を使ったパティは、脂分を豊富に含んで口どけが大変よろしく、ほわ〜んと美味。タマネギと竹の子が中に入り、時折コリッとした食感にヒットする。千枚漬のような形状の大根は食感にアクセントをもたらしてレタスの役割に近く、大葉の大葉以外何物でもない香りが全具材をまとめ上げて、最終的にはきっちりと収まりが着いている。
トータルのバランスがよく計算されており、その点流石。黒酢バーガーは黒酢の甘酢あんを使っているが、しかし味噌も黒酢もキャラとしてはほぼ一緒で、さほど劇的な変化はない。ただどちらも使い方に節度があって、所謂ソース一発でゴリ押す力技でない点、なかなか。これから寒い季節に向け、あるいは重宝される……かどうか。
そうね……こんな手の込んだ肉まんが高速のサービスエリア辺りでほっこり出て来ると、ちょっと嬉しいかな? ただ、大阪551蓬莱の豚まんが¥140、神楽坂五十番の肉まん¥315でしょ? で、この¥480は……。そんなワケで取材は思わぬ方向に向かい、今は神楽坂五十番の2Fで記事を打っている。ついでながら五十番の肉まん――本気で美味しいワ!
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拡大解釈というものは、そのものの呼び方が変わる"手前で"止めておくべきであろう。これを「バーガーのアレンジ」と理解することは、ヒジョーに難しい。そう考えると「LOCO-BURGER」などはバーガーの約束事の中で実にユニークな創意工夫を凝らしていて、あらためてそのセンスの良さを知らされる思い……ってヨソの記事の中で褒めるってのもナンですが。とにかくまぁコレはコレ、バーガーはバーガーって感じの住み分けで良いのではないでしょうか。
展開する株式会社太魯閣(タロコ)はかっこして(品川区)と書いてあるけど、所在地「西中延」と聞いて、妙に親しみが湧いてきた。経営者は台湾人――まるでラッピのようだが、しかしハンバーガーへのアプローチがこうも違おうとは。