前回の補足ですが、「シンプルでおいしいバーガー」を出すために、例えば、特別な良い肉を使わなくても、部位の組み合わせ次第でもっと安くておいしいパティが作れるとか。それも方法のひとつですね。
バンズについても必要十分なレベル"以上の"、つまり「オーバースペック」なバンズを使っているケースが意外と多いように思われます。
バンズが幅を利かせ過ぎると、中の具材・食材がバンズに「隠されてしまう」と言うか。「食われてしまう」と言うか。ブロック肉を一生懸命捌いて自家製パティを作った苦労が「すべてバンズに持って行かれてしまう」という。そのアンバランスを解消することもまた「シンプルでおいしいバーガー」を作るための方策のひとつです。
どうも「良過ぎるバンズ」をパン屋に作らせている例が多いように思います。力が入り過ぎちゃってると言うか。頑張り過ぎと言うか。結果、肝心のバーガーの中身が目立って来ないという。そういうケースは意外と多いです。
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去年の予想の答え合わせを続けましょう。「スマッシュバーガー」は2023年に入ってますます注目されるようになりました。6月には『エル・グルメ』で特集を組むことも出来ました。今や全国各地から「スマッシュ始めました」という発信が聞こえて来ます。
スマッシュは一時の流行りに終わらないと私は見ています。「理に適った調理法である」のが大きな理由です。シュプリームクロワッサンみたいな「形が面白い」とか「風変わりだ」とかいう理由で流行っているワケではないので。すごく合理的な理由がありますので、おそらく、ハンバーガーの「ジャンルのひとつ」として、ハンバーガー界の一角を形成してゆくものと思われます。
流行りに乗じてスマッシュを始め、やがてフェードアウトしてゆく店も中にはあると思いますが、スマッシュバーガー自体はひとつのスタイルとして消えることも廃れることもなく、むしろしっかり浸透・定着するでしょう。これが私の見方です。
あと、去年興味深かったのは「月見商戦」の盛り上がりですね――。
2022年に「読売新聞」から、去年は「集英社オンライン」から「月見をどう思うか?」と2年続けて訊かれて、さすがに興味を持って調べた結果、「この盛り上がりはすごくいいぞ!」と思うようになりました。
まとめ記事にも書きましたが、「月見バーガー」という名称は商標登録されていないので、誰もが自由に使うことが出来て、その結果、「オープンな競争の場」が生まれ、参戦する企業も年々増えているというのが実態です。その「自然発生的」な盛り上がりの感じがいいですね。すごく好感が持てます。
食べる客の側も、各自銘々、勝手に比較やランキングなど始めて、中には「どれだけ話題になっているか」でランキングを付けているサイトもあったりして、バーガーを「出す側」も「出される側」も、双方ゆる〜く楽しんでいる感じが平和で微笑ましいです。そう、すごく「平和的」ですよね。
各社示し合わせたワケでもなく、誰が号令したワケでも、場を用意したワケでも、大手メディアを引っ張って来たワケでもなく、裏もなければ表もなく、忖度も予定調和もなく、あるのはちょっとした茶目っ気とユーモアの精神。でも、「たまごを使うこと」という「お題」がはっきり決まっていて、まさに「理想的なコンテストだな」と、つくづく感心します。
これは養殖物でなく「天然物」のコンテストですね。非常にオープン、かつ、世間を「正しく巻き込んだ」競技会に思います。「こういうのこそもっと流行れ!」と真剣に思ってます。
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ということなので、毎年出している"今年のラッキーバーガー"はズバリ「月見」です。大手も個人店も超えて、誰もが楽しく参加し、料理の腕を披露出来て、競い合える。そしてそれを自由に食べて味わって批評して、勝手にランキングも作れちゃう――そんなフェアでオープンで全国規模なバーガーの"祭典"は、唯一「月見バーガー」をおいて他にないのでは、と。今年の大ブレイクを今から期待しております! (おわり)
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