8月最後の週に風邪を引きまして。夏場の風邪は難しいですね。「汗ばんでいるのは熱があるの?」「それとも気温のせい?」がまずハッキリしません。エアコンのかけっ放し・効き過ぎで症状をさらに悪化させたり、冷たい飲み物ばかり飲んで胃を壊したりなど、治ったようで治らず、いつまでもズルズル症状を引きずりそうな要因に溢れています。それで今しばらく取材を控えているところで……。
そんな中なので前回予告した「コラム」的なものをちょっと書いてみました。タイトルは「コゲ味という言葉について」。
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まず初めに「コゲ味」なる言葉は辞書にはありません。『エル・グルメ』のような料理雑誌の編集者からも「そんな言葉はない」と指摘が入ります。つまり「造語」です。という前置きのもと……。
「焦げ」という言い方を嫌うのは主に料理人です。料理をずっとやって来た人たち。彼らがそれを嫌うということは「焦げる」「焦がす」という行為が「よくない」とされている証拠です。「焦がしちゃダメよ」とキツく言われ続けていると。ですから記事などを書く際に「焦げ」という言葉を遣うと「焼き色」に換えてくれないか……なんて相談を"たまに"されることがあります。年に一度ぐらいでしょうか。
直火でパティを焼く場合。金網や鉄格子の上にパティを置き、その下から火で直接加熱します。すると、網や格子に触れている部分が黒く焦げます。結果として、網状あるいは縞模様の跡が付くと。この跡を「焼き目」と表現すると料理人から喜ばれます。「焼き色を付ける」なんて言い方を好む人もいますね。それはそれでよいと思います。
但し、料理を作る人(作り手)と食べる人……"食べ手"と呼びましょうか……との間に決定的な認識の差があります。作り手が言っているのは「見た目」について。焼き目も焼き色も「見た目」に関する表現です。一方、食べ手が強く言いたいのは「味」についてなんですね。
それも遠回しな、持って回った表現でなく、ストレートに「甘いか」「辛いか」「酸っぱいか」を言いたいワケなんです。今回の場合、私が声を大にして伝えたいのは「コゲのおいしさ」についてです。だとすれば、遣う言葉は「焼き目が」「焼き色が」ではありません。
「五味」の範囲に表現を収めるならば、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」――この5つのいずれかの言葉を遣うことになります。中では「苦味」が一番近いですが、でも、それだけではコゲの魅力は語り尽くせません。いわゆる「スモーキー」な要素をそこに含めないと完璧ではない。「モノの焼けたにおい」「その芳ばしさ」といった要素も「コゲ味」には含まれます。
つまり「味」だけでなく「風味」も込めた言葉が「コゲ味」であるということです。コゲ味は造語です。「コゲの風味」を略して「コゲ味」と。「コゲの風味」とその都度書いていると長いので、縮めて「コゲ味」とした感じでしょうか。
なお……味だけでなく見た目についても「焦げてる」とストレートに表現すべき時もあります。埼玉・所沢「B.B.Q KIMURA」のこの肉を見て「いい〜焼き色!」とは言わないですよね。「真っ黒に焦げてる」と表現するのが最も素直な、気持ちに適った言い方に思います。なにしろ12時間かけてじ〜っくり火を入れたショートリブですから。表面は真っ黒ですが、「でも、中を開いてみると……」という"ギャップ"にこの肉の醍醐味があるワケで。それを伝えるためにも「外は真っ黒」と言わくてはいけない。「焼き色が……」なんて言ってる場合ではありません。
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一旦まとめますと、●料理の作り手は「焼き色」「焼き目」などという見た目に関する言葉を言いたがる&言わせたがる、●一方で"食べ手"の側は「味」について語りたい……ということですね。そこの対立と言いますか、認識の差と言いますか。ここまでが"パート1"です。 (つづく)
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