いよいよ6月9日(金)から横浜赤レンガ倉庫で開催の「Japan Burger Championship 2023」……今回で出場チーム事前取材第8弾。大阪・西長堀のGAKUYA BURGER(ガクヤバーガー)。住所で言うと北堀江の二丁目。駅で言うと地下鉄千日前線・長堀鶴見緑地線の西長堀が最寄り。
今の場所での営業は2019年から。その前は堺市内に朝方まで営業する大きな店を構えており、2014〜2015年ごろにはまた別な場所で店を出していて、そのまた前は、米軍横須賀基地で使っていたというフォード・エコノラインの特装車を改装して移動販売。
「フードトラックを始めよう」と15、16歳の頃から考えていた店主の飛松さん。その目標のために整備士になり、板金塗装を覚え、さらに車のセールスもやって仕入れの勉強をし、21歳までに全て覚えて、40万円で購入したボロボロのエコノラインを全て自前で直し、水道なども取り付けて、「国内新規登録」をみごと達成。そこからの移動販売→最初の固定店→堺の大箱→現在の北堀江……というストーリー。
大阪市内に「来るつもりはなかった」と飛松さん。本当は緑豊かな奈良や三重の山奥へ移ろうと考えていたのが一転、阿弥陀池公園前の今の場所に決めたのは、その風景と環境に惹かれるものがあったから……かな? 「ギリギリまで夕日が見える」この場所は、春は桜も咲いて景色よし。子どもたちのみんなの遊び場なので「こども110番の家」にも登録している。店舗は9割までが廃材利用。前の店の床の木やら流木などを移築して7日間で造り上げた。
2012年の移動販売開始以来多くのイベントに出店。ビーフの魅力全開のバーガーで人気を博していたが、ある日、老人ホームを訪ねた時のこと、どうもご年配の方々の口にはハンバーガーが合わない。食が進まない様子……。何でだろう? と肉屋で勉強し、その理由を探ったところ、肉の「融点の違い」に一因があって、要は牛より豚の方が脂の融点が低いので、それが胃腸の負担にも影響して来るのだということが判明。「ならば、ポークでパティを作ろう」となったのが2014年のこと。以来、「ポークのハンバーガー」を続けている。
メニューはバインダーに記入用紙と赤ペン1本。「オリジナルバーガーを作る」「期間限定バーガー」「フリースタイルベジサンド」の3品がバーガーメニュー。まずは3択から入って、「オリジナル」か「竹炭」からバンズを選び、トッピングは14種類から、ソースは4種類から選択――そんなカスタムオーダーの店。私はこの日が初なので、オリジナルバーガーを作る¥1,045(税込)をオリジナルバンズで、そこへチェダーチーズ¥167とベーコン¥167のトッピング。ソースなし……締めて¥1,379(税込)。
パティは大阪・泉州のブランド豚「犬鳴ポーク」100%の110g。つなぎなし。部位はノド、ウデ、モモ、肩ロースなど。普通は"豚100"では挽肉同士がつながらない。焼いたらボロボロに崩れてしまうところを、飛松さんが手をかけ、細かな温度管理などをして、その不可能を可能にしている。おかげで「肩の腱鞘炎」まで発症した飛松さん。
バンズもベースは飛松さんが考えたもの。そのレシピを「モリパン」に預けて焼いてもらっている。ベーコンは「ロース肉」のベーコン……通常はバラ肉ですね。これを「カナディアンベーコン」と呼ぶ。使っている豚肉は国産豚。塩漬けは1週間から長い時は90日ほど。塩抜きに20時間。乾燥に4日。スモークは店内で3〜12時間。その季節により燻製の時間もシーズニングも塩の種類も変わるそうで、季節によってはカナディアン"じゃない"ベーコンの時もあり。この日は塩漬け10日のベーコンを切り立ての状態で。塩漬けの期間によっても味は変化。パティもバンズも同様に、季節によってレシピを変えているそう。
野菜は複数の八百屋から仕入れ。良い野菜に出合った時は農家に電話して、スタッフを手伝いに行かせる。そして生産者の話を聞き、思いを聞き、それをバーガーに「乗っける」と――。JBCでも親しい農家の野菜を使うそう。
短く感想……ポークの風味に甘いバンズの香りは天然酵母か。バンズは焼き色強め。表皮は「ガリッ」と。生地の甘味が後を引く。裏に卵不使用のミルクマヨ。そこへフレッシュな野菜のサクサク。この日のレタスはサニーレタスと玉レタス。すごく丁寧に処理されていて「内包する水分量が調整出来る」と飛松さん。バーガー全体の旨味の濃淡を野菜の量と厚みでコントロールしているとの話。
ポークパティはビーフと比べてクセなし。抵抗なく「スッ」と入って来る。味付けは岩塩、黒コショウ、ハーブに自家製の玉ねぎ麹。これらはすべてパティの中に。「豚の上に豚」なので、ベーコン味が"ブースト"されてよく利いている。これがすごく美味! 牛と違って豚肉は食べ口軽やか。そして素直。「僕のバーガーはフォーマル」と飛松さんが話す通り、襟元まできちっとボタンを閉めたような折り目正しいバーガーで、端々までムダなくソツなく、高い技術でサラリとまとめられている。見た目にも端正な一品。ポテトも自家製。
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他にもいろいろ聴いたんですが、とても一回では書き切れませんね。続きはまた次回! おまけでもうワンエピソード……飛松さんは染色作家としても知られており、コロナ前にはNYでの個展も決まっていたそう。「玉ねぎの皮」は染め物の材料になるんだと……だから、ガクヤバーガーはフードロスが「マジでゼロ」と。JBCではビーフのパティも登場するそうです。大活躍を期待します!
― shop data ―
所在地: 大阪府大阪市西区北堀江2-15-13
大阪メトロ千日前線 西長堀駅歩4分 地図
TEL:
アカウント: https://www.instagram.com/gakuya_burger/
オープン: 2012年(移転オープン2019年)
営業時間: 12:00〜日没(売り切れ次第閉店)
定休日: 水曜日(要確認)