もう一度話を戻しまして……。この15年来、「野菜をいっぱい挟んでいれば良いバーガー」みたいな、そんなイメージが何となく一貫してありました。トマト、レタス、オニオンの生野菜3点を挟めば「良いバーガー」「ちゃんとしたバーガー」みたいな。思い返せば私も、ハンバーガーへの入(い)りのきっかけは「ウェンディーズ」のバーガーの生野菜3点でしたので、「野菜いっぱいのバーガー=ちゃんとしてる」という発想自体は理解出来ます。
とにかく、いろんな食材を挟んだバーガーばかりが世間で持て囃されて来ました。タテにも横にもパンパンに張ったような「ごっつい」バーガーや、噛み応え満点の「肉肉しい」バーガーを「これどうやって食べるの?」「あごが外れそ〜う!」なんて言いながら、果敢にかぶりついて来たワケです。私はそういうバーガーも必要だと思ってます。バーガー自体が一種のエンタテインメントと言うか。アトラクション的な楽しみと言うか。食べづらかった経験も込みで、デートやお出かけの「良き思い出の1ページ」として、そんなバーガーも必要です。「たまに食べる」分には必要。でも、「日常しょっちゅう食べる」ものとしては、だいぶ機能性に欠けますよね。
ハンバーガーの最大の魅力は「食べやすさ」ですので。ナイフやフォークを使わずとも、手で持てて、「口」でダイレクトにかぶりつける。何なら歩きながらだって食べられる。それこそがハンバーガーの醍醐味であり、「原点」であるワケですが、今年2023年、そんな「持ちやすくて食べやすいバーガー」を求める流れに、ようやく世間が向かい始めた、かなぁ……という。
もしその予感が本当なら、「ムリして頑張って食べるもの」から、ようやくハンバーガーが「解放された」ような心境ですね。いや〜、ステージが進みました! 食べにくいバーガーが「良し」とされて来た時代から一歩前進です。喜ばしい限りですが、実は今年に入って私の中にも新たな発見がありまして。「食べやすいバーガー」をさらに進めて「食べ心地のいいバーガー」「食べていて気持ちいいバーガー」というものに出合ったワケです。具体例を挙げて説明しましょう。
最初は今年1月、東京・代官山のHENRY'S BURGER(ヘンリーズバーガー)と千葉・松戸のR-S(アールズ)がコラボレーションして百貨店の催事に出展した際のバーガー、「和牛Smash'n REAL」です。一度包装されたものを屋上まで持って上がって撮影したので、見た目は非常によろしくないですが、ところが……というのを当時の記事で私はこう表現してます……"まずはそのかぶりつきやすさ。クラウン(上バンズ)からパティからヒール(下バンズ)まで、ひと口で「サクーッ!」と噛み切れる、その気持ちのよさ!"。"「肉離れのよさ」と言うか、歯を立てた箇所でパティも「スッ」と噛み切れて、このバーガーはとにかく食べていて気持ちいい! 食べることそのものが気持ちよくなってくるような、そんなバーガー"……ハイ、この感じです。
パーツはほぼヘンリーズのものです。パティは黒毛和牛100g×2枚。バンズはヘンリーズがいつも使っているものをアレンジした全粒粉入りの専用バンズで、これが普段に増して「サクーッ!」と歯切れよし。ゴツゴツとした分厚いバーガーが「サックリ」噛み切れることの快感。即ちそれは、パティもバンズも「同じサイズに歯で切り分けられる」ことを意味しています。そのためには一定の設計や工夫が不可欠。それも含め、非常によく出来たバーガーに思います。生野菜は入ってません。
もうひとつは横浜・石川町、CENTRAL BURGER SHOP(セントラルバーガーショップ)の「クラシックチーズバーガー」。ご存知、"smash burger"の専門店ですが、こちらのスマッシュは「もんじゃ焼きか」と言うぐらい"ぺったんこ"にスマッシュしてます。パティはオージー65g×2枚。チーズも2枚。それらをライトなバンズで挟むと……"バンズからパティから、ひと口でスッと収まる「素直な食べ口」"。でも、"ほどよく詰まった「密度」があって、ふわふわ&スカスカではないという"……ハイ、この感じです。
ヘンリーズ&アールズのバーガーと比べると、こちらは薄手です。高さはそんなにないですが、それでも、上から下までひと口で「サクーッ!」と"収容"出来ることの気持ちよさですね。ハンバーガーのすべてを「コントロール」出来る気持ちよさ。この快感を一度知ると、「サクーッ!」がまた味わいたくて、何度も何度もハンバーガーにかぶりつきたくなります。歯を立てたくなります。
これが「食べやすいバーガー」からさらに「食べ心地のいいバーガー」「食べていて気持ちいいバーガー」への移行です。食べにくいバーガーに果敢に挑戦して来たこれまでとは対照的に、「食べやすいバーガー」の心地よさを楽しもうという。トライアルな感じから「リラクゼーション」な感じへと、ハンバーガーの楽しみも徐々に進化して行っているというお話です。
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なお、セントラルのバーガーも生野菜入ってません。それもまた「サックリ」とした食べやすさを生んでいる一因で、ですから、生野菜3点を必ず「入れなければいけない」という縛りから、皆さん一度「解放」された方がよいと思います。そこは決まりじゃありませんので。お約束じゃありませんので――。今年のバーガー予想は以上です。毎年恒例のラッキーバーガーは「スマッシュ」で。 (おわり)
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