2023年03月21日

# 2023年のハンバーガー大予想・つづき




 つづきです。これまでの10年・15年の日本のバーガーの流れとして、「野菜がいっぱい挟まっていれば豪華で良いバーガー」みたいなものが事実ありました。それはそれでよいと思いますが、その一方で「何も挟まないシンプルなバーガーの魅力」というのはあまり注目されて来なかったという。おかげで単純素朴なバーガーが持つ「ガツン!」とパンチのあるおいしさは、世間一般にあまり知られずに来ました。

 それがここ3年ぐらいですか、パティとバンズとチーズ程度のシンプルなバーガー「が」むしろおいしい――ということを言い出す人や店がようやくのこと現れ始めました。具体的に言うと「スマッシュバーガー」です。


 「Mikkeller Kanda」が登場した辺りから、日本でもスマッシュバーガーなるスタイルが注目されるようになって、今では「ウチでもやってみよう!」という店が多数出て来ています。そうなると、そこから"数テンポ遅れて"、世間の嗜好も徐々にシンプルな方へ向かってゆくことになるんじゃないかと。

 これまでの「たくさん挟めばおいしい」という発想から「必要最小限なものだけ挟んで食べるのがおいしい」という流れに世の嗜好が変われば、店にも客にも双方にメリットがあります。まず「出費が抑えられる」というのが客側のメリットです。ハンバーガーにかかる一回の食事代が安く済むということですね。


 「客単価が下がるのでは?」という声が店の側から聞かれますが、でもその分、来店頻度が上がれば、そっちの方がいいんじゃないかと。1個1,700〜1,800円のバーガーとクラフトビールで1回3,000円近いごちそうを「半年に一度」食べに行くような利用の仕方から、手頃でシンプルなバーガーを「日常頻繁に」補給するような使い方にシフトしてくれた方が、ハンバーガーの将来を考えると「正しい」と私は思います。滅多に行かない「いい店」よりも、普段よく行く「ふつうの店」の方が「本当にいい店」だということですね。


 野菜なしのバーガーの真のおいしさが認知されれば、「材料をたくさん抱えずに済む」というメリットも出て来ます。挟む材料が多いほどコストもかかり、在庫を抱えるリスクも生じますので。

 シンプルなバーガーを追求することは、客と店と双方にとって、これ以上この楽しみを「大袈裟にしない」と言うか、「エスカレートさせない」と言うか、一度広げた風呂敷をコンパクトに畳み込むような「ミニマル化」のメリットがあるように私は思っています。と同時に、パティとバンズ程度のごく限られた材料のみで「おいしくキメてやろう!」という固い決意のもと、全国各店がシンプルなハンバーガーの研究に懸命に取り組めば、世のバーガーはもっともっとおいしくなる筈なので、つまり、いいこと尽くめ!

 と言うことで、2023年の予想のひとつは、「シンプルなバーガーが主流になる」ということです。「今年いきなり」というのでなく、ここ何年かの傾向ですね。今年はそれが一層顕著になるのでは、と私は思っております。


 なお、進むべき方向としてもうひとつ挙げた「1,800円とか2,000円とか、高めの価格帯で内容充実のバーガー」の方ですが、こちらは、ハンバーガーに対してこの金額を「出す」お客さんは出しますので、そういう「おいしければ出すよ」というお客さんを満足させるためのメニューという位置付けです。

 逆に言うと、味と価格が見合っていなければ、次からその額を「出さなく」なりますので、この価格帯はこの価格帯できっちり満足させないといけません。中途半端はよくないです。ヘンに値段を抑えようとせずに、「もう100円分、何かを乗せるとさらにおいしくなる」ようであれば、価格が100円上がっても、そうした方がよいです。やり切った方がよいです。

§ §

 まとめると、「普段使いの1,200円ぐらい」と「ハレの日の1,700〜1,800円ぐらい」と、その二つの層を特に分厚く、力を注ぐのが客の使い勝手に適っているように私には思えます。 (つづく)



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2023.3.21 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 18:59| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする