ローソンで売っているLチキバンズ¥72にLチキ¥162を挟んだら、その食べ物の名称は何? ――というのが今日の話。Lチキバーガー? いや、私はLチキサンドだと思う。Lチキサンドイッチ。
何かを「挟む」ことを「サンドする」という。これはサンドイッチという言葉をもとに、それを動詞化した表現だが、そんな造語があるぐらい、「パンの間に何かを挟んで出来たもの」はすなわち「サンドイッチ」である。パンの間に何かを挟むことは「バーガー」ではない。これがまずひとつ。
次に、実は「ハンバーガーもサンドイッチ」である。サンドイッチの一種である。細かく砕いた牛肉を固めた「パティ」をグリルして、「バンズ」と呼ばれるパンの間に挟んだサンドイッチ――それが「ハンバーガー」である。
世界に数あるサンドイッチのうち、バンズにビーフパティを挟んだもの「だけ」がハンバーガーと呼ばれる。あらゆるサンドイッチの中でも別格なサンドイッチ、それが「ハンバーガー」なのだ。
例えば、アメリカの"BURGER KING"のサイトを見るとよい。看板メニューのご存知「ワッパー」は"WHOPPER Sandwich"と書いてある。ビーフパティをバンズに挟んだ「ハンバーガー」である筈のワッパーの正式名には"Sandwich"と付く。つまり「ハンバーガーもサンドイッチ」なのだ。
そして"BURGERS"と"CHICKEN & MORE"は明確に分かれている。"BURGERS"の各品を見ると中身はすべて「ビーフ」。つまりビーフだけが"BURGERS"。「チキン」と「それ以外」とは別扱いだ。
"McDonald's"のメニューも同じく"Burgers"と"Chicken & Sandwiches"は別。おなじみの「フィレオフィッシュ」も"Chicken & Sandwiches"に入っている。
日本でもその原則を守っている店はきちんと守っている――。
最も身近なところでは、KFCのアレは「チキンフィレサンド」だし、ファーストキッチンも「チキン竜田サンド」はじめ、鶏・海老の類は全部「サンド」。だから"原則"は「バンズの間にビーフパティを挟んだもの」――これが「ハンバーガー」。チキンやフィッシュは「サンドイッチ」。ではポークは?
ビーフ以外のものを挟んで「バーガー」と呼ぶ場合は、ポークでも、チキンでも、フィッシュでも、ターキーでも、ラムでも、バッファローでも、挽くなり切るなりして一度「細かく」し、それを丸く固めて「パティ」を作り、それを挟む。「バーガー」と呼ぶからには少なくとも「パティ」を挟む必要がある――と、私は思っている。
だから、魚でもパティを挟めばまぁギリギリ「フィッシュバーガー」。白身魚の切り身=フィレを挟むと「フィッシュサンド」。「フィレオフィッシュ」とは"filet of fish"のこと、だからフィッシュバーガーではない。同じくビーフも切り身の一枚肉を焼いて挟めば、それは「ステーキサンド」と呼ぶのが本来だろう。
だからローソンで売っているLチキバンズにLチキを挟んだら、その食べ物の名称は――Lチキサンドが正しい。フライドチキンサンドイッチ。パンに何かを挟んだものはすべて「サンドイッチ」。とりわけビーフパティを挟んだものだけが「ハンバーガー」。
§ §
別に法律も罰金もない決まりだが、ハンバーガーが誕生した母国では、そんな使い分けがなされているワケなのだから、それに従うのがオリジナルに対する「敬意」だろうと私は思う。
立場を逆転すれば、我々だってちょっと面倒くさいような呼び分けの習慣でも、それでもそれをゴッチャにされたら、やっぱりイヤでしょうよ。一見同じようでも「ザンギ」を「唐揚げ」と呼ばれたらイヤだったり、「お好み焼き」を「広島焼き」と呼ばれるのがイヤだったり、地方地方に呼び方やルールがこまごま・いろいろあるワケで。それを大事にしている人たちもいるワケで。
その食べ物・その料理に携わるからには、せめてオリジナルのルールや決め事は知識として身につけておこう――という話。"何とか巻き"の食品廃棄の問題も言われているが、食べ物を扱うに当たって一番大事なのは「敬意」、食べ物に対して敬意を払うことだと、私は思っている。
→ # 少し前からこんなの売ってるんですよ――第一パン のゴマ付きハンバーガーバンズ
2018.2.6 Y.M