昨年2015年の11月13日、福井着。前にも紹介・ご登場いただいた京都のS氏のクルマに揺られて大阪・高槻から片道3時間のクルマ旅。他に同乗者が二人いたが、個人情報云々うるさい昨今なので触れずにおく。ともあれ着いたのは夜だった。
人生二度目の福井である。最初はもうだいぶ前、青春18きっぷを使い日帰りで一乗谷を訪ねた時。まだフィルムカメラの頃だった。まさかその折、福井へ、しかもハンバーガーのために再訪するとは思ってもみなかったし、その頃はAmerican Grill E.Y.'s(アメリカングリル・イーワイズ)も、その前身「ハンバーガーランド」もまだ存在すらしていなかったのである。そう考えると不思議なものだ。
イーワイズはまだ無かったが、岩井さん一家が経営する飲食店は既にその頃から福井県内で営業していた。創業1988年。その歴史は三国(みくに)のテーマパークに遡る……。
●岩井商店
園内でレストランとスタンドを経営していた岩井商店。場所柄、調理の簡単なメニューが中心だったが、オムライスはチキンライスからきちんと炒め、溶いた卵をフライパンでひとつひとつ焼いて作る手を掛けたもので、やはりそれだけのおいしさが認められ評判の品に。バスガイドさんなど何度も食べに来てくれた。もちろん観光バスの乗客を引き連れて――。
テーマパークでの営業は22年。園外へ出て独立した店を構えるようになったのには、長男でゼネラルマネージャーの健さんの思いが強く働いている。
健さんは中学生のとき、ハンバーガーと運命的な出会いを果たした。それまでマクドナルドのハンバーガーしか知らなかった健さん。旅先のサイパンでまるでハンバーグみたいに分厚いパティを挟んだハンバーガーを食べて「こんなのありなんだ!」と驚いた。
以来「死ぬまでに必ずやってやろう」とハンバーガーショップ開店に強く憧れていたところにグルメバーガーブームが到来。マクドナルドの「テキサスバーガー」が日本中でヒットするのを見て「これは行けるな」と確信。するとあれよという間にモロモロ話が進んで、ついに実現したのがHAMBURGER LAND(ハンバーガーランド)である。2010年7月8日オープン。
●ハンバーガーランド
以前は駐車場だった広い敷地に建坪100坪はあろうという巨大なハコを建設。席数120。普段はそのうち70席を使い、残り50席が収まる一翼は土日だけ開放。日曜日はスタッフ8〜9人態勢。普段は岩井家のご家族=両親・兄・妹2人にアルバイトスタッフでこなす、「ファミリービジネス」な店である。
無闇に幅の広い6人がけのソファは特注品。床、外壁の色などは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の影響から。住建会社が施工したため住宅的な資材やアイデアが込められていると社長・秀利さん談。
オープン当初は無茶苦茶忙しかった。「ハンバーガー専門店」というめずらしさから、あらゆるメディアの取材ラッシュ。「もういい」というくらい殺到した。そんな絡みからテレビCMを半年放映。おかげで福井県でその名を知らない人はいないというほどに店の名は知れ渡り、店名が変わった今でも「ハンバーガーランド」だと思っている人がいるという。
だが騒ぎが収まるにつれ「ハンバーガー」という食べ物の難しさが浮き彫りになった。客を選ぶ特殊な食べ物である。「ハンバーガー」というだけで利用する層が限られる。理想は家族で来て楽しい「ファミレス」のような店だったので、なおさら……。
「ハンバーガーをメインにしているのがよくないんじゃないか」という意見が出た。バーガー客は残しつつ、「ハンバーグ」「ステーキ」をメインに据えた方がもっと幅広いお客さんに来てもらえるのでは……。それがイーワイズに改名した理由である。
●イーワイズ
ハンバーガーランドからアメリカングリル・イーワイズへ――。
提供している内容・やっていることは実は改名前も後も同じである。ただハンバーガーのページの前に「ステーキ」や「ハンバーグ」を持ってきた、元からあるメニューの構成を変えただけ。それだけの工夫がみごと功を奏した。
ランド時代は滅多に出なかったハンバーグやステーキがハンバーガーとほぼ同数注文されるようになった。米を炊く量はランドの時の5倍に。3升炊き1台と5升炊き1台の炊飯ジャー2台態勢。広告は一切打っていない。だが売れ続けている。「さまぁ〜ず」「くりぃむしちゅー」並みの改名大成功!
大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」が好きで、中でもレストラン「Bubba Gump Shrimp Co.」が家族皆して大好きで、「こんなお店がしたいな」というところから考えたのがメニューのそもそも。たまねぎの丸ごとフライ「ブルーミン オニオンブロッサム」¥690+税などはその好例だろう。
フライもの8品、サラダ7品、ビーフステーキ8品、ハンバーグ11品、その他グリル5品、ライスプレート6品……と来て、ここでようやく登場、ハンバーガー13品。チキンのサンド4品。「キッズバーガー」¥580+税、月替わりのバーガーもある。品数豊富! 大抵の客はここでまずグッとハートを掴まれる。
●バンズ・パティ自家製
チーズバーガー¥1,080+税。バンズは100%北海道産小麦と天然酵母使用の100g。酵母を減らし長時間発酵、生地の"粘り"と旨味を引き出した。
「思ったようなバンズが手に入らなかった」という「安易な思い」からバンズ作りを始めたと健さん。本職のパン職人である兵庫・西宮「Esquerre」三澤さんの指導、および大阪・心斎橋「CRITTERS BURGER」のバンズを食べて受けた衝撃から急成長。だが「今のはいいとこまで行ってるが、まだ85点」と健さん。
パティはブロック肉から挽いたこれも自家製。USチャックアイロール使用120g。グレードはチョイス。脂が足りない時のみ和牛脂などを追加。ガスの直火でグリル。この肉がおいしい。
堪らぬ牛の味。におい。やわらかな「くすっ」と融けるような口当たり。バターロールのような丸まる生地のバンズはややリッチ=甘め。チェダーチーズの上にヒッコリー香るBBQソース、ヒール(下バンズ)にタルタルソース。この辺りもう少し量を抑えたいところ。と言うのは、これらの力を借りずとも十分おいしい「肉」なのだ。
チェダーの上にはさらに生削りのパルメザンとスイートピクルス。オニオンは生のスライス。
まさかこのレベルのハンバーガーが福井で出てくるとは――という驚きの一品。直火焼きのビーフパティを中心に確かな旨味が感じられる。味付けはややオーバーだが「食べた」という満足感はひとしお。
§ §
目下絶好調のイーワイズ。今回お連れいただいたS氏のように、はるばる京都府の山中深くから「月参」する熱狂的ファンも少なくないという。彼らを惹きつけてやまないコノ店の魅力は何か……。
一に広々とくつろげるその店内。二に見ているだけでワクワクする豊富で多彩なメニューの数々。そして何より三に、もてなす岩井ファミリーの温かさだろう。遠路の疲れを癒し、吹き飛ばすサービスと味。一店まるごとテーマパークのようなレストラン。北陸最強!
― shop data ―
所在地: 福井県福井市大和田2-518
京福バス「アピタ・エルパ前」下車歩1分 地図
TEL: 0776-63-6227
URL: http://american-grill-eys.com/
オープン: 2010年7月8日(ハンバーガーランド 2010年7月8日)
* 営業時間 *
月〜土・祝: 11:30〜15:00、17:30〜22:00(21:00LO)
日曜日: 11:30〜22:00
※第一月曜はランチのみ
定休日: 火曜日(要確認)