最初に断っておく……十三(じゅうそう)にあるから13Diner(サーティーンダイナー)……ではない。
場所は大阪・京橋駅のそば、片町。土佐堀通に面した路面店。京橋駅前のにぎわいからは離れたところで、以前から「この辺」に住んでいた店主・寺前(てらまえ)さんも店をやるまでよく「知らなかった」場所。最寄りで言うとJR東西線の大阪城北詰駅が近いのだが、新しくできた線ゆえか(それでも開業からもう20年近く経つ)、あまり利用しない線ゆえか、出口2分の距離なのにその名が言われることはあまりない。
してなぜ"13"か? ……例によって店主・寺前みかさんの話からしてゆこう。
●子供服の企画・デザイン
『アメリカン・グラフィティ』『グリース』が好き。中学・高校の頃から50's、60'sバンドをやっていた寺前さん。好きなアーティスト、"アイドル"は、エディ・コクラン、バディー・ホリー、リッチー・バレンス、下って70年代後半のストレイキャッツ、ブルーキャッツ、レストレス等々……。高校時代にはいろいろなバンドのライヴで知り合った他校の子たちとガールズバンド「zero」を結成、ヴォーカルとギターを担当していた。
さらに下って2014年、日本のロックロールバンド「THE MACKSHOW」が主催する「キャノンボール・フェスティバル」に13Dinerも参加・出店、トルタサンドを出して好評だった。今年も3月広島で開催される「Vol.2」に参加予定。
寺前さんのアメリカ好き、遡れば洋服はもっと前から好きで、両親が服飾の仕事をしていた関係で、小学生の頃から服を縫ったりスケッチを描いては作ったり。そのまま服飾の専門学校へ進学。「カフェ併設の洋服屋をいつかやろう」と思いつつ、アパレル業界へ就職。メーカーで子供服の企画・デザイン・物流・事務の仕事をしていた。なお、「カフェ+子供服の店」の構想は、13Dinerとは別の新たな店として今もなお温め続けている。
そして仕事をしながら半年間、週一度、製パン学校へ通う。その頃から物件探しを開始。つまり一時期、仕事と学校と物件探しと三つを掛け持ちしていた次第……もちろん店を始めるため。
そして探すうちに「たまたまココが見つかったので」「見つかったからやった」「こういうのって出会いじゃないですか?」――というのは不動産屋の案内で店の中へ入った時、「ここに何を置いてあそこに何を置き……」という大体のレイアウトが瞬時に浮かんだのだという。「やるなら今じゃない? やらなやらな!」と開業に踏み切った。
●Studebaker's
現在の話へ進む前に、13Dinerを語る上で"絶対に避けては通れない"、寺前さんが専門学校時代にアルバイトしていた飲食店の話をしたい。
1987〜1991年ごろ梅田にあった「Studebaker's(スチュードベーカーズ)」という店。ミスドでお馴染みあの「ダスキン」が経営していたダイナー、レストランである。
「スチュードベーカー」とはアメリカの自動車メーカー(その前は馬車メーカー)のこと。情報によると「店内にスチュードベーカーがででんとあって」「店員が皆で踊る時間があったりして」「オールディーズがかかりまくりで」「食べ物は全部でっかくてアメリカンで」という、そんな陽気でにぎやかな店だった。寺前さんはその「ガンガン踊るウェイトレス」(笑)。閉店までの2年間働いた。
ローラースケートを履いてサーブする(カーホップという)外国人スタッフもいた。ハンバーガーは無かったが、オールディーズとショータイムと、アメリカンサイズのフードメニューと、とにかくド派手な店だったその"伝説の"スチュードベーカーズこそ13Dinerの「原点」と寺前さん。そんな「エピソード1」があっての今の13Diner。「好きなもの相変わらずこんな感じで」2013年8月1日オープン。店が現実化するまで実に20年以上かかった。
白黒チェックのフロアに真っ赤なシェルチェア。ぶっといリムのダイナーテーブル。店内24席、コッテリ濃い目なアメリカン。スタッフは全員女性。BGMは終日オールディーズ。場所柄、客は昼に集中。日替わりのランチプレートを食べる近隣OLと"お父さん"たちの姿でにぎわう。
●ベーグルの店
13Dinerは本来はベーグルの店である。ベーグルが好きな寺前さんが習った製パン技術をもとに自家製ベーグルの店を始めた、それが13Diner。ベーグル「だけを売る」ベーカリーが他に大阪に無かったのも理由のひとつ。
ハンバーガーはもともとメニューに無かった。が、「何でバーガーないの?」というリクエストがすごく多くて、それが始めた理由と――そりゃそうだ。
ベーグルサンド7品。バーガーメニュー6品(+甘いの1品)。これらは挟むパンをベーグルかバンズか選ぶことができる。他にピザ4品、パスタ4品、フライ・サイドディッシュ多数。サンデーやバナナスプリットなどデザートもハデ目。
本日チーズバーガー¥700。バンズも同じく自家製。95g。油脂はバター使わずショートニング。粉の分量・製法などはもちろんベーグルとは別も、しかしソレを思わせる「もちーっ」とうちに丸まる食感と味わい。
その間にキャッチーなBBQソース。かなりな厚切りのトマトがソレに甘酸っぱく反応。タマネギはレッドオニオンの生。レタスは派手にグリーンカール。チェダーチーズの黄色も効果的。
パティはオージービーフと国産豚が7対3の合挽き。その点大いに残念。ハンバーガーと言うからにはぜひ「ビーフ100%」で作っていただきたく。折角こんな濃い店だし。
さておき、サイズは120〜125g。フライパンでグリル。豚が入っているために脂豊かで「むちっ」と「ぷりぷり」した弾力。中に塩コショウ、ガーリック、ナツメグなどのシーズニング。強いBBQソースの味でまとめた、わかりやすくポップな一品。見た目の派手さを裏切らない充足感。
§ §
「なんで13なんや?」と特に外国人からよく訊かれる。13は好くない数字と言われるが、自身の誕生日でもある縁起のよい好きな数字と寺前さん。「ラッキー13」とも言うし……ってそんなこと言うか?? ココを借りるかどうか迷った際、番地が「13番」だったので決めたという、そんな偶然も重なりつつ。
大吉と大凶とは紙一重、好く取るか悪く取るかはその人次第……そんな哲学めいた想いも込めた"ロケンロー"とベーグルサンドの店。
― shop data ―
所在地: 大阪府大阪市都島区片町1-3-13
JR東西線 大阪城北詰駅歩2分 地図
TEL: 06-7164-5892
URL: http://www.occn.zaq.ne.jp/cvare300/info.html
オープン: 2013年8月1日
営業時間: 9:00〜19:00
定休日: 月曜日(祝日営業。要確認)