2015年11月24日

# 342 ジャンク [神戸・三宮]




 神戸・三宮まで来た。何年ぶりだろう。ハンバーガー好きの以前に私はパン・スイーツ好きなので、神戸には過去何度も足を運んだことがある。

 だが今度訪ねた三宮駅と生田神社の間の辺りは歩いた記憶がほとんどない一帯だ。その馴染みの薄い歓楽街の一角で、神戸ではまだ数えるほどしか無いハンバーガー専門店のひとつが奮闘しているという。その店の名はジャンク

 「店名はカタカナですか?」と訊くと「"JUNK"ではしっくり来なかった。フォントもイメージに合うものを探して今の有料の字体に行き着いた」と、自ら「僕ポンコツなんで」と語る店主・村上さん。



●プレイバック

 なかなか波乱に富んだ人生の人である。神戸は灘の出身。20歳で東京へ出て、4年ほどして戻ってきたところで阪神・淡路大震災を経験――。


 震災後の神戸は飲み屋が流行った。物資は無くてもお金は貸してくれたり。モノは無かったけど職には就けたり。そうした日々を凌ぐうち、「やりたいことやってみよう」と思い立ち、東京以来ずっと続けてきた飲食業から離れて、とある企業へ就職。

 専門技術を活かす仕事で、会社のため職務のため粉骨砕身、体を張って働いたが、勤務7年、所属する部署自体が無くなってしまうという悲劇に見舞われ、失業。

 人生ひと休み。知人を訪ねてハワイへ。するとノースショアサンセットビーチそばの知り合いの家の近くに一軒のハンバーガー屋があった……。

●ハワイアン・アイ

 ハンバーガーの味しか覚えていない。店の名は忘れた。ビーチが目の前で、あこがれのハワイで、いい天気で、という周りのその環境でおいしく感じたのかも知れない。が、確かなのは「ハンバーガー屋しようかな」と村上さんが思ったことだ。


 飲食はホール専門、それまで一度も包丁を握ったことがなかった村上さん。ハワイから戻ると神戸の老舗洋食屋で2年働き基本を学び、焼き鳥屋に半年、カフェにもう2年。ジャンクのハンバーガーの原形は「メニューにバーガー載っけたいねんけど」と請われてメニュー作りから全てを任された、この神戸のカフェでの2年のうちに考えられたものである。

 そして独立。移動販売を半年やった後、「それだったら店構えよう」と東門街(ひがしもんがい)の路地裏に固定店をオープン。2010月6月24日のことである。

●招かれざる客たちのビュッフェ

 「好きで路地裏選んだんですけど、場所が悪いのか……」(それ以外ないと思う)売り上げはもうひとつ。「趣味でやってる店ちゃうか?」「なんでこんなんあんの? 駅前のマクド行ったら"100円で"食べれるやん」などと通りすがりの人から聞えよがしの悪態をつかれて散々な思いをした。


 2年して向かいの路地裏に移転。1年頑張ったがここも芳しくない。そこへ経営者仲間「にっしゃん」から「今度屋台村やんねんけど、どう?」と誘われて、参加を決断。今の「くつろぎ」の一角に移転した。

 「Bar&kitchen くつろぎ」はその名も「トレビアンビル」3階をまるごとフードコート風に仕立てた店で、ホールを中心にバー、メイン厨房、そして村上さんのジャンクが三方を囲む構造。ひとつ空間を共用する恰好だがジャンクは独立採算、村上さんは今も個人経営者である。路地裏で独りやっていた頃とは勝手が違うが、代わりに多くの人にジャンクのバーガーを知ってもらえる機会が持てて「結果よかった」。

 メニューはハンバーガー全20品。他に自家製ベーコンを筆頭に「燻製」にも力を入れている。今はハムを試作中。ハンバーガー以外のものが食べたければ「にっしゃん」が作る刺身に天ぷら、お好み焼き。何でも御座い。

●料理長(シェフ)殿、ご用心

 本日は店名を冠したジャンクバーガー¥900。フレンチフライ+サラダ付き。

 すなわちチーズバーガー。パティは黒毛和牛の肩ロース130g。粗挽きと超粗挽きのミックス。鉄板でグリル。バンズは元町の「ミックスプラスベーカリー」。兵庫県産および北海道産の小麦で作った安心安全のジャンクオリジナル。以前は裏にマスタードバターを塗っていたが今は何も塗らず。デミ系のソースは洋食屋で学んだレシピが基本。ピクルスと出合って軽快な酸味。

 かぶり付けばすぐに肉に到達できる「ふかっ」と軽いバンズ。表面細かなゴマいっぱい。生地は弱い甘味。パティは火加減強めの外側硬めで、端のコゲがカリカリ音を立てる。淡路島産のタマネギはグリルしてクタッととろける口当たりのよさ。これが「にゅるっ」とクッションの役を果たす。そして新鮮で歯切れのよいレタス。


 スパイスが少しチリチリ来るほかは余計な味がほとんどない、至ってシンプルな一品。「ジャンク」の名から想像されるギトギト「どぎつい」味とはまるで逆な、実に節度のある味付けである。さっぱり軽めで、むしろ女性に支持されそうな、真面目一本、ピュアなバーガー。全然「ジャンク」ちゃうし(笑)。

 酒場で出すなら塩胡椒の振りをもっと強く派手にしてもよいだろう。が、このさっぱりキャラは日中、オープンテラスがあるようなオシャレなカフェで人気が出そうな味で、むしろそっちの方が火が点きやすいんじゃなかろうか。

●傷だらけの天使

 10月17日に東門街の第一グランドホテル向かいにフランチャイズによるジャンク「2号店」がオープンした。かつて味わった路地裏の店の苦労は一変、こちらは開店早々絶好調との噂。ハンバーガーという食べ物が徐々に「みなさんに受け入れられてきたのかなぁ」と村上さんしみじみ。

 継続は力なり。そして食べに来てくれるお客さんの存在が何よりの励みである。「やめたらおしまいや、ゲームオーバー」と踏ん張ったジャンク村上さん。なにくそ、ハンバーガーもっと掘り下げたんねん!




― shop data ―
所在地: 兵庫県神戸市中央区中山手通1-6-20 トレビアンビル3F
     JR三ノ宮駅、阪急・阪神・市営地下鉄三宮駅歩3〜5分 地図
TEL: 090-8143-3339
URL: http://ameblo.jp/junk-burger/
オープン: 2010月6月24日
* 営業時間 *
火〜土:18:00〜翌5:00
日曜日:18:00〜24:00
定休日: 月曜日(要確認)

2015.11.24 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 20:53| 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする