2010年に出した自著『ザ・バーガーマップ首都圏版』に、東京・竹芝のホテル「インターコンチネンタル 東京ベイ」にあったダイニングバー「C4U(シーフォーユー)」のことが載っている。
いま思い返してもなかなかユニークな良い店で、淡路牛100%パティはグラムが8段階から、バンズは5種類から、サイドディッシュは4種類から、その他トッピングを好きにカスタマイズできるという実に斬新で、先取的な店だったのが、昨年『首都圏版』改訂の話が持ち上がった頃には、既に惜しくも閉店してしまっていた。
●ホテルのバーガー
そこで『ザ・バーガーマップ東京』の制作に当たり、「C4U」に代わる新たな「ホテルのハンバーガー」を探したのだが、これがなかなか難しい……。
名だたるホテルでハンバーガーを頼めば、サ税込み3,000〜4,000円はかかる。おいしい。が、その額相応においしいかと言うと、いや、それより安くてもっとおいしいバーガーが食べられる店を、私はいくらも知っているのだ。
『バーガーマップ』という本自体、そんな選りすぐりの名店ばかりを集めたガイド本である。読者からすれば、1個3,000円のバーガーが載っていたなら、当然その金額にふさわしい、他の店以上の「逸品」を期待することだろう。が、そこまでのバーガーを見つけ出すことはついに出来なかった。だからホテルの掲載は諦めた――。
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この店の噂が伝わってきたのは2014年5月末に『ザ・バーガーマップ東京』を出した後のことである。噂の出所・内容からして「これは期待できる」と思った。食べてみたところ……おいしい。ココはおいしい! 2014年我が最大の収穫のひとつがこの店――BeBu(ビブ)である。
2014年6月に開業した「虎ノ門ヒルズ」上層階のライフスタイルホテル「アンダーズ 東京」直営のカフェ&バーで、階は1階、都道301号"愛宕下通り"に面した路面店。外壁の「門」の字のちょうど真下の辺り。
●アンダーズ 東京
「アンダーズ」とはハイアットホテルズの1ブランドで現在世界12ヶ所。その最も新しい12番目にできたアンダーズが"東京"である。
ヒンディー語で「パーソナルスタイル」という意味の言葉、アンダーズ。「その国の都市や文化と個性を尊重」し、「シンプルかつパーソナルなサービス」を提供するというその理念が、このビブにも端々によく表れている。
「ステイゲスト以外のお客様にも、ビブを通してアンダーズを知っていただきたい」というホテル広報担当の言葉通り、ビブはアンダーズの理念のまさに縮図のような店である。
してそのバーガー。冒頭挙げた「ホテルのハンバーガー」とはまるで性質を異にするものである。どう違うか――。
まず豪州牛100%・140gパティを使ったバーガーの価格が1,000〜1,200円の中に収まっている。税別。サービス料なし(※2015年3月現在)。サイドディッシュ+ドリンクのセットが700円だから、消費税も入れて2,000円で食べられる勘定だ。街のバーガー屋とほぼ変わりない。それでいて店内ご覧の内装。そしてご想像通りのホテル一流のもてなし、ホスピタリティ――これは安い!
●正しく「肉」中心の
そしておいしい。どうおいしいか。ホテル"らしからぬ"おいしさなのだ。ホテルのバーガーにありがちな高級食材をムダに使い倒した類のものでなく、かつ気取りがない。宮廷音楽でなく、あくまで大衆のためのダンスミュージック。そのリズムと感覚を失わぬセンスの良さがビブにはある。
バーガーメニュー全8品中のまずファーストステップはクラシック¥1,080から。その正体はベーコンチーズバーガー。
パティは豪州牛モモ肉のブロックを、ホテル内のブッチャールームで出来る限りの粗挽きに挽いた自家製。つなぎ無し。味付けはグリルの際の塩胡椒のみ。ひと口目で「肉」を感じる、正しく「肉」を中心に据えた「肉料理」なバーガー。かぶり付けば堪らぬ「肉」のにおい。味。食感。
バンズは自家製ではないが、その肉らしい肉に合わせ吟味した特注品。プンと芳ばしく粉の香る、食パンのようにあっさりとリーンな生地には、肉のコゲ味まで吸収するような包容力があり、暴れぶりの豪快な肉と好い相性。上下にマスタードマヨネーズ。
レタスは"ロロビオンダ"(またはグリーンドームレタス)というリーフレタス。スライストマトにも塩胡椒。オニオンは入らず。
そしてピクルスが入っているのがよい。わざと大きく切ったというゴツゴツしたその食べ口が「ハンバーガー=気取らぬ大衆の食べ物」という「らしさ」をよく表わしている。
ひと口目は「肉」。残る味も「肉」。それもおしとやかでない、ちょっと「ワル」な肉のおいしさ。そしてチーズと濃いベーコンの旨味。少し塩気は強いが、ハンバーガーの命たる「肉」のおいしさと「らしさ」を極めて的確に、みごとに突いてみせた、思わず"唸る"一品。
●クラフトビール
ビーフパティを挟んだ「グリルビーフバーガー」8品のほかに、ビーフパティ"以外のもの"を挟んだ「スペシャルバーガー」(これは実質はサンドイッチ)が3品ある。「ニッポン」「バイエルン」「タイ」など、世界各国の料理がひとつバーガーの中に再現されているという趣向で、こんなところにも先に挙げたアンダーズの"コンセプト"が見られる。
ビブのもうひとつの特色はクラフトビール。国内外の樽生が6種。これがまた高くなく、市井の値段で飲めてしまう良心価格。
17時から提供のスナックメニューの目玉「ミニバーガー」3ピース¥810もお値打ち。サイドディッシュのお薦め「トリュフフライ」¥594は、隣の席からにおいが漂ってくるだけでもう堪らない必殺メニューだ。
すなわち「BEBU」とは"Beer & Burger"の略。「クラフトビールとハンバーガーの店」を出発点に、サーロインやリブアイなどのグリルや、カレー、パスタなど、バラエティに富むフードメニューを取り揃えた、カジュアルなカフェ&バーである。総料理長はオーストリア出身、ゲルハルト・パスルガー氏。パークハイアット上海の総料理長を務めた後、アンダーズ 東京開業のため来日した。
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高級ホテル直営の店でありながら敷居低く、カジュアル。だが提供内容はホテル一流の高さを誇る。そんな都内待望の一店。いや、誰よりも「私が」待ち望んだ一店。ご紹介できて光栄に思う。
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― shop data ―
所在地: 東京都港区虎ノ門1-23-4 虎ノ門ヒルズ1F
東京メトロ銀座線 虎ノ門駅歩5分 地図
TEL: 03-6830-7739
URL: http://tokyo.andaz.hyatt.com/ja/hotel/dining/BEBU.html
オープン: 2014年6月11日
営業時間: 11:00〜22:30
定休日: なし(要確認)