2015年01月06日

# HEDGE8 [根津] のチーズバーガー



 昨年8月にオープンした新店、東京・根津のHEDGE8(ヘッヂエイト)にて。『ON THE STREET BURGER』ではベーコンチーズバーガーを取り上げたが、初めて食べたバーガーはこれだった。チーズバーガー¥1,149。


 場所は根津神社の入口。藤澤清造が書いたのは『根津権現裏』。こちらはオモテ。千駄木の「RAINBOW KITCHEN」は歩ける距離。つまりまたミョウな場所にこんなバーガー店が出来たワケで。

 『ON THE STREET BURGER』に、店長森さんは7年間上野の「Hard Rock CAFE」で働いていたと書いたが、それはホールの仕事で、キッチンではない。調理は掛け持ちで働いていた高円寺の「CLUB XIPHIAS(クラブキピオス)」をはじめ、他の店々で経験。ガンガン腕を磨いたそう。


 但し、彼のスタイルの八割、九割方の原型になっているのは(世に言う「インスパイア」)、留学先のカナダ・バンクーバー郊外で食べたという「すんごいウマイ」店のハンバーガーである。

 留学の前後も米国へ行くたびいろいろなバーガーを食べたそうだが、いずれにせよ森さんの頭の中には北米大陸の、あくまでアチラのハンバーガーのことしかイメージに無いのは確かで、その点実にわかりやすくアチラ流のハンバーガーを出している。そこに一切ブレが無いのが素晴らしい。

 例えばバンズ。これは中野でパン屋を営む森さんの従兄弟が作った特注品だが、開発の際の森さんのオーダーは「平べったくしてくれ」。ふんわりとした高さよりも横の広がり、直径を求めるというアチラらしさ。実は私がこのチーズバーガーを食べた際には、要らぬ甘味がバンズにまだ強くあった。その点を言うと、早速甘味を五割落とす改良を断行。いまのバンズに落ち着いている。


 パティはUSビーフ100%・150g。赤身のなるべく多い部位のブロック肉からスジを取った後、ひたすらハンマーで叩いて作るチョップ肉のパティ。グリルは電気の小さなグリドルだが、そこの道具の良し悪し関係なく、ビーフのビーフらしさ、赤身の赤身らしさが的確によく出ていて、つまりハンバーガーのハンバーガーらしさに満ち満ちている。

 チョップ肉だがゴリゴリ硬過ぎず、ハンバーガーらしさの中に収まる食感。噛み応え。それをバンズがしっとりソフトに挟んで、その硬軟の対比も好い。食べ口の第一印象に親しめる「やさしさ」を与えている恰好。

 あとは至ってシンプル。バンズの裏に塗ったバター以外、調味料・ソースは入らず。オニオンは生。その辛味が効果的に肉に利いている。

 「ハンバーガー」という名の的を実に正確に射抜いた一品。最終目標がはっきり見えている、だから上手く表現できている――そんなバーガー。森さんの中のハンバーガー像が鮮明かつ迷いなく既に出来上っていること。そしてその"像"を余計なアレンジや演出・脚色なく、シンプルに、具体的な形に落とし込んでいること。その両輪があって初めて成立する一品。いや、いきなりこれが食べられるとは。


 ここまで書いたらあとは余談以外の何ものでもないが、クラフトビール43種をはじめ全部で51種類のビールを置く店なので、"ツマミ"についても触れておく。

 自家製チリビーンズ¥599はビーンズとは名ばかり、正体はほぼ「肉」。パティと同じUSビーフのブロックから取った肉を長時間煮込んだもので、チリと言うより「煮込み肉」と言った方が近いかも知れない。「日本で一、二」と森さんが崇める絶品チリの、その両方をベースに、かつ、より米国的に近付けた。強い塩気はもちろんアルコール必須。樽生は1.一番搾り、2.バドワイザー、そしてSTONELeft Handなど米国のクラフトビールがゲストで3本目。パイントグラスは店名入り。

§ §

 重要なのは、変な野心や創意工夫、独自性など盛らず、ごく自然体で、力みや気負いの無い中、ハンバーガーを作っているところだ。インプットされたものをただアウトプットしているだけ――という中で生まれた、流れに逆らわない、流れを変に曲げない・歪めない、そういう素直さのなせる業であると私は思う。

 もしザ・バーガーマップ東京の制作が今年なら、確実に載っていたであろう一店。強くお薦め。




# 330 HEDGE8 [根津]

― shop data ―
所在地: 東京都文京区根津1-22-12
     東京メトロ千代田線 根津駅歩2分 地図
TEL: 03-5834-2871
URL: http://hedgeeight.com/
オープン: 2014年8月21日
営業時間: 11:00〜24:00
定休日: 水曜日(要確認)

2015.1.6 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 15:58| 【二ッ目!】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする