2014年12月09日

# 329 ROYAL FLUSH DINER [千葉・西千葉]




 ROYAL FLUSH DINER(ロイヤルフラッシュダイナー、RFD)とは、何ともキレのある、押しの利いた名前だなと思っていた。ネットで調べるとハーレー乗りたちの間でも知られた店という。ということはオーナーもきっとバイク乗りに違いない。私は乗らないが周りにはバイク好き・ハーレー好きがごまんといる。紹介すればきっと喜ぶだろう――。

●千葉大学

 そんなことを思いながら、千葉大学の目の前にある店を訪ねた。京成千葉線みどり台の駅前を走る道路は「学園通り」。改札を出てそれを左に真直ぐ進むと、JR総武本線のガードを潜ってすぐ千葉大学正門前。この交差点に面した一画に店はある。

 千葉出身の店主澤田さん。店をやるに当たり、真っ先に出てきたのがこの「西千葉」だった。千葉大学とその附属中・附属小をはじめ、千葉経済大とその短大・附属高、敬愛大および敬愛学園高、公立の小・中・高も合わせて学校と名の付く施設が10を超えるほど集まる、いわゆる「文教地区」で、街の佇まいは至って静か。学生相手の安居酒屋や外食チェーンなどが軒を並べる雰囲気はなく、むしろ手頃な飲食店は少ないぐらい。人は多いが、ターミナル駅のそれと違い「一定の人しか行き来しない」場所だと澤田さん。




 客層は学生8割、職員1割、そして地域住民が1割。若者とご年配が主で家族連れは少ない。オープンからもうすぐ2年。最近ようやく軌道に乗り出したが、最初の1年は苦労のし通しだった――。

●UKカフェ

 RFDを始める前、澤田さんは東大阪の「UKCAFE(ユーケーカフェ)」で働いていた。1980年創業、来年35周年を迎える西の老舗で、兵庫・武庫川(むこがわ)の支店のことは金剛産業を通じて、訪ねたことのない私でもよく知っている。


 澤田さんは東大阪・高井田の本店に2年勤めた。その前、澤田さんは常連客の一人だった。勤め先が近くにあって、好きで通ううちそれが高じて……という流れ。

 澤田さんの前職はオートバイの整備士である。無類のバイク好きで、キャリア12年にしてこれまで所有したバイクの数は「30台後半」。将来自分でバイク店を開こうと、某大手オートバイ販売チェーンに就職する。その最初の配属先が東大阪だった。


 来たる独立の日を夢見て研鑽を積む日々。されどバイクの世界も日進月歩。刻々増え続ける新たな技術・情報のあまりのおびただしさに「いま勤めるような大企業なら対応も出来るが、個人の店でやるには着いて行くだけでやっと」とその難しさを思い知り、UKカフェのようなカッコイイ飲食店に我が店の夢を切り換える一大転換を決意した。

 これはかなりな決断である。出身地の千葉ならまだしも、ここは転勤先の近畿・大阪。会社を辞めれば支給されていた住宅手当も当然もらえなくなる。だから退職後、澤田さんは一文無しを経験。UKカフェで働いた2年間は東大阪にほぼ籠り切りだったという。

●カッコいいカフェテリア

 そうまで苦労して働いたUKカフェでの2年間。その得た経験の全てを千葉大学正門前のこの場所に澤田さんは満を持してぶち撒けた。


 飲食店の多くない一帯。いま在る場所も前はauショップだった。だから居抜きでなく、しかも家賃も安くはなかったが「ここしかない」と決心。澤田さんと奥さんと二人で不要な設備の解体からペンキ塗り、大工と電機屋がやる以外の工事など、自分たちで頑張った。急遽設計の勉強もした。

 その成果がご覧の通りのド派手な店構え。28坪に39席。ボックス風の一角からバーカウンターまで席も多彩。工事の際「抜いてもらった」という高天井が気持ちのよい店内は、「コカ・コーラミュージアム」かと言うくらいに赤また赤。外の自販機までもコカ・コーラに変えてもらった。

 万事UKカフェ流で臨んだRFDだったが、いざ開けてみるとまるで受けない。目まぐるしくメニューを変えたり最初の1年はあれこれ苦労した。その結果、「UKカフェのスタイルは30年かけて大阪のあの土地に馴染み親しまれた末、支持されたもの。同じことをただ持って来ただけで受け入れてもらえるワケがない」と悟り、もっと「街や地域の特色に合わせよう」と意識を切り換えたところ、これが奏功して徐々に軌道に乗り始めた。


 何しろ大学の目の前なので学生が多い。しかもよく食べる。そして金は無い。だからランチは「自家製ミートのタコライス」¥500、「ビーフシチューのチーズオムライス」¥550、「1/3ポンドビーフハンバーグプレート」¥650など、出血を超えて"出涙"モノの大サービス。男子学生はことごとく「ラージサイズ」で注文するものだから、炊飯機は「22合」という社食・学食クラスのものが「2つ」、さらに保温ジャーが「1つ」。それでも「足りない」という。なお、米は千葉県産。

 よくアメリカンダイナーのことを「カッコいいファミレス」と称するが、RFDはさながらカッコいい学食、「カフェテリア」だろう。夜は飲み放題が1時間¥1,000〜。今やすっかり学生たちに愛される存在だ。

●ファストフードからグルメへ

 「本当にハンバーガーを、本当に押したくて」本来始めた店なのだが、これだけごはんものが出るとなると、ハンバーガーは出ない。「理想は5:5」、半々と言うが、まだ遠く届かない数字のようで。

 「ハンバーガーも街に合わせて」ファストフードといわゆる"グルメ"の中間、その繋ぎの役を担ってゆきたいというのが澤田さんの方針。全部で5品。鶏・魚の"バーガー"なし――いいね!


 チーズバーガー¥900。地元のパン屋が作るふかっと甘味のある昔懐かしのバンズに、オージービーフ100%・113gパティは鉄板でグリル。ケチャップ。ピクルス。スライスしたオニオンはアーリーレッド。チーズはゴーダ。厚切りの立派なトマト。レタスはグリーンカール。仕上げのパプリカパウダーが香ばしさを醸している。

 パティはガチッと結着が硬く、やや練り過ぎの感。訊くと卵を入れているとのこと。挽き方も徐々に細挽きになっていった。もう少し「肉」らしさ・荒々しさが備われば「5:5」の夢も遠くは無いだろう。

 ゴーダチーズは派手ではないが控え目なコク味。オニオンの辛味と混ざると肉を助ける旨味が生まれる。この辺りの機能は好い。食事中は今一つパティに物足りなさを感じたが、食べ進むにつれバーガー全体の旨味が増して、最後の最後、袋に残る汁に最も旨味を感じることが出来た。つまり確かな旨味を持ったバーガーではあるので、その表現の仕方をもう少し変えれば、今よりもっと注文が増えるようになると思う。

●初めて食べるソレ

 学生相手だと夏・冬・春、休みの時期に影響が出るのでは? と訊いたところ、何だかんだで年間通して客数はそう変わらないと澤田さん。本当は車・バイクで来られる店にしたかったが、駐車場は無し。それでもハーレー乗りのツーリングなどによく利用されている。


 実はさる10月、西千葉駅のマクドナルドが閉店した。「こんなに学生が多いのにまさか無くなるとは」と澤田さんもかなり驚いたそうだが、今やそんな時代……。だからこそ、目指すところは「初めて食べる人向けにシンプル」なハンバーガーであるにせよ、その食べた感想は「シンプルに衝撃的」なものであって欲しいと思うのだ。

 「手作りのハンバーガーってこんなにおいしいんだねぇ」ということを知らしめるハンバーガー、初めて食べた日の記憶が一生鮮烈に残るほどの、忘れ難いハンバーガーを是非目指して。ひよこに同じく、生まれて初めて見る「動くもの」が何であるかは、その一生を左右するほどに重要なことであるのだから――。

 そんな学生にもバイク乗りにも愛される、千葉大正門前のコッテコテにアメリカンな店。夫婦二人でされている。




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― shop data ―
所在地: 千葉県千葉市稲毛区弥生町4-3
     JR総武本線 西千葉駅歩8分
     京成電鉄千葉線 みどり台駅歩7分 地図
TEL: 043-254-3399
URL: http://royalflushdiner.com/
オープン: 2013年1月20日
営業時間: 11:00〜15:00, 17:00〜23:30LO
定休日: 不定休(要確認)

2014.12.9 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 20:00| 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする