私の著書『THE BURGER MAP 首都圏版』の中表紙のハンバーガーを焼いたのが、今の東京・高田馬場homeys(ホーミーズ)のオーナーである。当時彼は日本橋人形町「BROZERZS'」にいて、優秀なスタッフが多いブラザーズの中でも特にエース級の腕前だった。ただ綺麗なばかりでなく堂々とした、惚れ惚れするような立派なバーガーを作り、本のとびらを飾ってくれた。「タケヤ、タケヤ」と呼ばれていたので、てっきり名前かと思っていたら、実は名字で「竹谷さん」という。
●メッセンジャー〜ブラザーズ
竹谷さんはブラザーズに4年在籍。今の両国「shake tree」の店主・木村さん、渋谷「Reg-On Diner」の横溝さんなどと同時期に働き、木村店長の下、キッチン長を務めた――。
ブラザーズで働く以前は大学の学費稼ぎに自転車便のメッセンジャーをしていた。そのメッセンジャー仲間の一人がブラザーズでもアルバイトしており、ブラザーズがデリバリー店を始めるに当たり、「お前もやらないか」と誘われた。配達をして欲しいという。たださえ平日は自転車を漕ぎ通しのところに、土日も配達では面白くない。だったらとレストランに入ったのが運命の分かれ道だった。
働いてみて「びっくりした」と竹谷さん。曜日に関係無く、昼時になると店の前に瞬く間に行列が出来る。週末ともなれば一日中だ。決して好い立地とは言えぬこんな場所に、どうしてこんなにも人が集まって来るのか――と、そのごった返す様を見て心底驚いた。
専攻は経営学部だった竹谷さん。いずれはメッセンジャーなどの配送業でも起こそうと考えていたが、すっかり飲食に魅せられて、就職活動せずに大学卒業後そのままブラザーズの社員に。キッチン長として人形町で活躍した後、東雲(しののめ)のデリバリー店で働きながら独立の機を窺うも、しかし不景気の折柄、融資が下りず困っていたところ、中目黒の「MICORAZON(ミコラソ)」という店の店長に迎えられた。
●ミコラソ
ハンバーガーとメキシコ料理の店である。私も噂はよく聞いたが、しかし1年ほどで閉店してしまった。これは経営する親会社の事情によるものだそうで、竹谷店長の下、むしろ大変評判の好い店だった。
ここで実に幸運だったのは、そのミコラソの会社が物心ともに竹谷さんの独立を後押ししてくれたことである。まず同社が経営していた韓国料理のFC店が入っていた物件を薦めてくれた。それが高田馬場である。
「高田馬場」と聞いて最初は抵抗があった。学生街である。学生相手の安い食べ物屋のイメージが強い。実際、店を開けてしばらくは一個千円もするハンバーガーは凄く叩かれた。周りは一食500円で食べられる店ばかりである。それでも馬場のフレッシュネスバーガーはすごく流行っている。それを見て行けるかなと思ったという。
内装の多くを自分でやって格安の開店資金でオープンした。店名は前の会社の人たちが付けてくれた。「わが家のような、居ごこちのよい」といった意味である。ロゴの色は自分で決めた。
●高田馬場
認知されるまで時間は掛かったが、半年ほど経てお客さんが付いてきた。それが面白いことに、外国人がよく来てくれる。
中韓、中東サウジアラビアなど、アジア諸国の留学生や大学教授・先生、また大学を卒業後、都内で働く人などが結構な頻度で来てくれる。時には外国人の客の方が多いこともある。メニューの表記も英語の方が文字が大きい。
なるほどハンバーガーにはローカルを超えた、広く世界的な食べ物という一面がある。そういう点で実は国際色豊かな高田馬場の街に、店は巧くマッチした。正直なところ、ふんだんに費用を掛けて世間受けするようオシャレに造り込んだという店でも無い。だがそれがかえって早稲田通りの、馬場の駅前に並ぶ雑多な飲食店の雰囲気に、浮かずによくハマっているように見える。
ワカモレ、ナチョスなどのバーガー以外のメニューもよく出る。スペアリブも出る。アルコールは思い切って値段を下げた。ボトルビールが680円。ボトルワインは1,980円で飲める。ボトルキープを始めたらさらによく出るようになった。安さよりむしろ「満足度が上がったと思う」と竹谷さん。ミラコソの経験を活かし、夜は宴会やパーティーも多数こなす。
●丸みとバランス
ハンバーガーは全16品。チーズバーガー¥1,100。馬場ではイイ値段だ。
パティはオージー100%。3種類の部位を合わせた120g。バンズはミコラソ以来の付き合いの目黒のパン店より。濃い茶色の表面一面にゴマだらけ。ブラザーズのようなシャリシャリした感じは無い。「ハンバーガーとして食べてみたところのバランス」で決めたと竹谷さん。
運ばれるとまずはクンと焼いた肉のニオイ。挽きは粗め。チーズが頃合い非常によく「まろっと」溶けており、グリルドオニオンのサクサクした歯応えがそのまろさを締める役割。分厚い切り方で存在感大。ヒール(下バンズ)に塗られたマヨネーズが上のチーズとよく混ざり合う。その「ねっとり」した混ざり方が堪らない。そこにBBQソース。
最初は強く振っていたが今は強くないという胡椒の振り加減。だから味に余計な尖りが無く、チーズの粘る感じが全てを巧く・丸くまとめている。ピクルスがその好い口直しに。刺激的に過ぎない、しかし迫力がありパワーもある――その丁度好い頃合でおいしく決まった一品。安心感・安定感はさすがと感じた。
§ §
実は専用のグリドル、グリラーを入れていない。ガスコンロ2台の上に鉄板を乗せて焼いているのだ。これも意外だった。
学生街と見せて実は国際色豊かな街・高田馬場の街中で、ふらっと入れるバーガー専門店。街の食堂といった感じの気取らぬ佇まいが好い。しかしそう見せて、実は店主の腕は一流という二重三重に「実は」が潜む店である。実は。
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― shop data ―
所在地: 東京都新宿区高田馬場2-9-1
東京メトロ東西線 高田馬場駅7番出口より徒歩2分 地図
URL: https://www.facebook.com/homeys.americandining
TEL: 03-3202-8882
オープン: 2012年11月18日
営業時間: 11:00〜23:00
定休日: なし(要確認)