11月13日、東京・赤坂に突如現れた「シーフードバーガー」専門店、Red Tail(レッドテイル)のムール貝のプロヴァンス風¥580。商品名に「バーガー」とも「サンド」とも付いていないが、丸いバンズの間にチリ産のムール貝を約70g、10〜12粒ほど挟んだもの。ちょっと見たことのない絵だ。珍品である。
「シーフード」という括りの面白さは、魚類から甲殻類、貝類まで、それこそ幅広い素材が使える点にある。魚卵はもちろん、海藻だって「シーフード」だ。厳密に「ハンバーガー」と断った場合、すなわちそれは「牛」で勝負でせねばならないというのとは好対照である。
もっと言えば、ハンバーガーならビーフパティを「グリル」するよりほか手は無いが、シーフードの場合、グリル、ソテー、フライ、ボイル……料理法にも幅が出て来る。そういうところからしても私は、「ハンバーガー」とそれ以外の「サンドイッチ」とはその成り立ちも、そして楽しみ方も、少なからず違うものだと思うワケなのである。だから「ごっちゃ」にしない方が、むしろそれぞれをより深く楽しめる。
それで今度のサンドは「ムール貝」を使っている。ムラサキイガイのこと。なお冒頭、産地は「チリ」と言ったが、その前に使っていたものは北欧産だった。産地はその時々で変わるということで――。
まずオリーブオイル、バターとともにタマネギを炒め、香りの出たところで剥き身の状態の貝を10粒余り加えてソテー。仕上げに白ワインとハーブを加える。そのハーブを使うところが「プロヴァンス風」たる所以である。
見るとブラックオリーブにケッパーまで入っているが、味・香りとも実際そこまで機能はしていない。味付け・香り付けとも、もっと大胆に、積極果敢に利かせてもよい気がする――もちろん580円で出来る範囲でのことではあるが。
ムール貝は貝類に特有のアノ味に変わりはない。だから、嫌いな人は最初から頼まないワケだから、つまり手加減無用で好きな人に向けた味付けで決めて掛かって構わないワケである。バンズは店内で発酵・焼成させている、苦心の自家製。表皮(クラスト)の歯応えとか、粉の香りとかが利いてくるとまた違った感想になってくるのだが、それはまた今後の課題ということで。
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殻を外すのも面倒くさいムール貝が、煩わしくなく食べられる「フィンガーフード」になったと思えば、酒のつまみの「スナック」として、なかなか便利な一品であるように思う。あとは思い切り「酒飲みの味」に振り向ければ、さらに魅力が増すことだろう。
― shop data ―
所在地: 東京都港区赤坂5-4-12 地図
TEL: 03-3797-2817
URL: http://red-tail.jp/
オープン: 2013年11月13日
営業時間: 11:00〜23:00
定休日: なし(要確認)