2013年12月26日

# 308 Red Tail [赤坂]



 昨月11月、「ついに世の中ここまで来たか」とちょっと驚くような店が東京・赤坂にオープンした。Red Tail(レッドテイル)というその店は「シーフードバーガー」の専門店。牛肉も豚肉も鶏肉も扱わず、あるのは魚介類のみという"バーガー"店である。「世界初」と謳っているが、こればかりは私にも判らない。が、少なくも日本国内でそんな店の噂を聞いたことは一度も無いし、都内でシーフード系のサンドイッチを探すと、ごくごく限られた店にしか無いのが現状である。


●ジーノ

 「シーフードバーガー」という呼び方・考え方については前回序編を設けて詳しく書いたので、今は省く。

 また何で、かつて誰もやったことが無いようなニッチな、あまりにニッチなファストフード店を、しかも赤坂などという一等地に繰り出したのか――私でなくとも不思議に思うだろう。「いよいよそんな時代になったか」と誰もが驚くに違いない。さらに言うと、これがただの「流行りに乗った商売」であるとは思えないものを私は感じたのである――訊けば全くその通りだった。

 事の起こりはおよそこうである――。






 経営はPPGフード&ドリンクという会社で、親会社は名古屋に本社を置くパパ・ジーノ株式会社。


 遡ること27年前、当時30歳だった青年社長・夏秋氏は脱サラして宅配ピザ店「ジーノ」を創業。全くの飲食未経験ながら名古屋に6店まで店舗を拡げた。その後、業種自体の転換を図り、ジーノは閉店。転向した分野においても輝かしい業績を収め、事業が軌道に乗ったところで、「また飲食店をやりたい」「ワクワクすることがしたい」と、20年ぶりに挑んだ飲食店がこのレッドテイルである。

 それがどうして「シーフード」なのかについては、これまたワケ(理由)がある。

 レッドテイルのマネージャー・米山さんは今年5月、社長とともにNYへ渡った。いや、「連れて行かれた」というのが正しい。何でもNYで「ロブスターロール(Lobster roll)」なるものが流行っていると夏秋社長が言うので、二人してその視察に向かったのである。


●ロブスターロール

 一大産地である北米東海岸・大西洋沿岸において、ロブスターは頻繁に食されているという。つまり一定の確立した、ポピュラーな食べ方・楽しみ方が現地に「ある」というワケだ。しかも現地は相当「アツい」らしい。


 資源の枯渇を防ぎ、持続可能な漁業とすべく、ロブスターには「禁漁」の期間が設けられており、例えばこちらの情報では、プリンスエドワード島の北岸と東岸地域では5月1日〜6月30日が漁期。西岸は8月9日〜10月10日が漁期。レッドロブスターによれば、ハリファックスでは年2回、4月〜6月と12月が漁期で、その4ヶ月間で1年分のロブスターを獲るという。

 だからロブスター漁「解禁」ともなると、もうお祭り騒ぎで、カナダ東岸および米国ニューイングランド州の"McDonald's"では、"McLobster"なるメニューを漁期に合わせ、夏季限定で販売するという。

 それぐらい現地では、ロブスター漁とともにロブスター「料理」が盛んだというのである。


 NYへ行ってみると、確かに流行っている。ピンからキリまで、マンハッタン市内にロブスターロールの専門店が何店も出来ていて、その店先にはニューヨーカーが列を成して何時間と待ち続けている。1つ18ドル。今なら日本円で1,900円近くもするが、狭い店内は絶えず人だらけだ。

 そうした「活気」や「熱気」までも含め、夏秋社長と米山さんはこのNewYorkスタイルのロブスターロールを大変面白く感じ、日本で専門店をやってみようという思いをいよいよ新たにした。


●オーダーが入ってから調理

 やると決めてからが早い。米山さんは今年の夏まで、シンガポールで目下飛ぶ鳥を落とす勢いの日系レストランでGMを務めていたが、8月に帰国。その後の3ヶ月足らずの期間で一気呵成に店を造り上げた。商品開発まで米山さん一人でやったというから驚きだ。


 しかし1個18ドルのロブスターロールだけで商いをするのは難しい。もう少し幅を持たせて「シーフード」のサンドイッチを提供する店と位置付け、様々なアイデアがある中からまずは10アイテムを用意した。

 ロブスターは、カナダ・ハリファックスで殻を剥いた爪肉と腕肉を生の状態で真空パックし、冷凍輸入したものを店内でボイル。ホワイトバーガーに使っているホキは生。イカも生。カジキも生。ムール貝は剥き身をオーダーが入ってからソテーしている。「全てオーダーが入ってから調理」というのがレッドテイルのルールである。

 業者に頼んでその時々のおいしい魚・活きのよい魚を持って来てもらっているので、産地は一定では無いが、「旬」であることに違いはない。さらに「なるべく手で作ったもの」をと、バンズとロールパンは店内で焼く「自家製」である。ベッカーズのようだ。


●ホワイトフィッシュチーズバーガー

 シーフードバーガー専門店と言いながら、商品名に明らかに「バーガー」と付くメニューは、現状、ホワイトフィッシュチーズバーガーの一品のみ。あとは「ロール」と付くか、何も付かないかのどちらかである。


 ホワイトフィッシュチーズバーガー\680。白身魚は「ホキ」を使用。正確な産地は不明だが、生息域は豪州南部からニュージーランド近海なので、いずれその辺りということになる。サイズは60〜70gの間。欲しい食味が「タラでは違う」との理由からホキを選んだと米山さん。

 そのホキが想像以上――。わかりやすく言うと、天ぷら屋で食べる「キスの天ぷら」のような"半生"に近い、潤いがあってジューシーな、しっとりやわらかな身に揚がっている。従来の"フィッシュバーガー"に必須の「素っ気なさ」がまるで無い。衣はごく単純なフリッター。注文が入ってから粉を付けて揚げており、冷凍品の二度揚げではない。

 チーズはプロセスとパルメジャーノのダブル。特にパルメジャーノが利いている。野菜はトマト、薄くスライスしたオニオンに、グリーンカールが1枚。タルタルソースには「ふるっ」としたやわらかさとフルーティな甘味あり。表面ゴマだらけの自家製バンズは気泡多めなスポンジ質で、ふわふわしている。ここについては率直に、もう少し追求の仕様があるだろう。

 魚にこれだけ特徴的な食感があれば、その食味をメインに据えて楽しむことができる。ちょっと良いもの・高級なものを食べている感じになる一品だ。

§ §

 サンド以外にも、クラムチャウダーやフリット、フィッシュ&チップス、ムール貝のワイン蒸しなど、定番のシーフードメニューが並ぶ「ファストカジュアル」スタイルのシーフードレストラン。魚介類を使ったメニューだけで果たして店が成立するのか否か――都内でさえ数が少ないシーフードのサンドイッチ/バーガーが食べられる店として今後が大いに期待される。



― shop data ―
所在地: 東京都港区赤坂5-4-12 地図
TEL: 03-3797-2817
URL: http://red-tail.jp/
オープン: 2013年11月13日
営業時間: 11:00〜23:00
定休日: なし(要確認)

2013.12.26 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 帝都編◆都東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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