ハンバーガーはそもそもがアメリカの食べ物です。ですからハンバーガーを知れば知るほど、必然、ハンバーガー"以外の"アメリカ料理・アメリカの食べ物についてを知るようになり、そして想像以上に私たちがそれらについて「知らない」ということを思い知るようになります。
決して特殊なもので無い、日常ごく当たり前の料理・材料・食べ方の中にも、日本に伝わって来ていないものはかなりな数があるようです。その伝わらない理由を「日本人の口に合わないから」と決めつけるのは早計で、現にこの日食べた「ハニーベイクド・ハム」は、つまりは「ハム」ですので、サンドイッチなり、サラダなり、朝食なりで私たちが日常頻繁に口にしている、極めて馴染みの深い食べ物です。
こうした海外の食や料理が伝わって来ない理由は、単に私たちの探求心や情報収集が不足しているというだけに限りません。今度の場合、そもそも米国のハニーベイクド・ハム・カンパニー自体が、海外進出ということを全く考えていなかったといいます。今回の仕掛人、Paul J. Kraft(ポール・クラフト)氏が彼らのもとを訪ねるまでは――。
と言った次第でこの日、東京・虎ノ門でハニーベイクド・ハム日本初上陸を祝う試食会が開かれ、イタリア料理研究家のご存知KEITAさんと一緒に行って来ました。
ハニーベイクド・ハムとは、豚モモ肉の骨付きハムなのですが、ほぼ24時間スモークした後、その外側をハチミツなどで作った甘いソースで「グレージング」するところに最大の特徴があります。
米国HoneyBaked Ham Co.の創業は1957年。創業地はミシガン州デトロイト。全米に現在400を超える販売店を持ち、「ニューヨーカーの8割は知っている」とポール・クラフトさんはいいます。それくらい米国では馴染みのある食べ物ということです。
こちらが今回の言わば仕掛人、ポールさんです。初来日は1991年。6年前には日本のスターバックスコーヒーでコンシューマーパッケージ商品の開発・販売を担当していました。
冒頭に述べた通り、原地においてどんなにポピュラーでも、どんなにそのものが優秀であっても、「伝えよう」という意志の無い限りは、その食べ物が他の国や地域、文化に伝わり・広まることはまず無いと言ってよいでしょう。
今回、ポールさんとその仲間たちが熱意をもってハニーベイクド・ハムを「紹介しよう」と取り組み、働きかけたればこそ、こうして私たちもハニーベイクド・ハムを知り、そして楽しむことが出来るようになったワケですから、物事を動かすのは常に「熱意」、強い「意志」と言ってまず間違いではないと思います――食べ物の陰に必ずや「熱意あり」です。
スターバックスを離れたポールさんは2012年1月に「虎ノ門ハム株式会社」を設立。ハニーベイクド・ハム米本社との契約が本年6月に結ばれて、この10月、ついにネット販売がスタートしました。
写真のハーフハムは3〜5kg、約15人分で\13,000(詳細こちらで)。生ハム(プロシュート)のことを思えば、それより「安い」とKEITAさん。
ポールさん自らナイフとフォークで切り分けて振舞われましたが、実はそもそも最初からハムに切れ込みが入っています。
中はかなりな塩分のキツさです。ところが外側の耳の部分が"お菓子"のような甘さ。これがスイートコーティング、「グレーズ」しているというハニーベイクド・ハム最大の特徴です。
まさにクレームブリュレのような、カラメルを焦がしたような甘さで、外側甘く、内側が塩辛くて、無性に、そして抜群に「お酒の進む味」です。パーティーの席などの「つまみ」に持って来いな逸品。この日はカリフォルニアワインで乾杯しました。
さらにハニーベイクド・ハムを使ったさまざまな料理も紹介されました。米国大使館選任の小枝絵麻シェフ考案とのことで、日本のものとは"どこかがちょっと違う"味の料理多数。パテやスープもありましたが、中でも私はこのポテトサラダが気に入りました。香草の使い方が日本的では無いのです。
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グレージングの作業は日本国内で、一つ一つ手作業でおこなわれています。大変繊細な作業とポールさん。
その味だけでなく肉質、肉のその食感(texture)も、日本で味わえるものとはまた違います。ホームパーティー、あるいはオフィスでのパーティーなど、大勢集まった時に供されると一際光り、そして一層おいしさの増す、恰好のパーティーメニューでしょう。独り占めにして食べるものじゃありません(笑)。
またひとつ米国の「食」について知ることが出来ました。
2013.10.28 Y.M