2013年07月13日

【シーフードバーガープロジェクト】 KEITAシェフ試作@峰屋 [東新宿] その2




 イタリア料理研究家KEITAさんによる東京・東新宿「峰屋(みねや)」での試作――続いて「白」のバーガー。その名もアラスカシーフードホワイトバーガー。何だか解かるような解からないような名前ですが(笑)。

 西麻布「HOUSE」総料理長・谷祐二さんが作った「白」は真鱈とタラバガニを使っていましたが、KEITAさんの「白」は「真鱈(Pacific cod)」のみ。詳しいレシピが『料理通信』2013年8月号に載っています。ぜひご覧下さい。



 さてこのバーガーの「パティ」に当たる部分は、イタリア料理風に言えば「バッタラマンテカート」――バッタラとは「干し鱈」のこと、マンテカートは「練る」という意味。つまり「干し鱈のペースト」と言ったところでしょうか。何でもヴェネチア辺りの料理だそうですが、この料理法を基にKEITAシェフは「真鱈のパティ」を考えました。

 皮を取り、適当な大きさに切った真鱈と「ジャガイモ」を合わせます。ローズマリー、ニンニクなどを加えた「牛乳」で真鱈とジャガイモを30分ほど煮込み、水分の飛んだ頃合いで塩コショウ、オリーブオイルを加え、よく混ぜて、粗めのペースト状に。これをセルクルへ。サイズ150g、かなりな大きさです。

 次に衣を着けます。細挽きのコーンフラワー(カリッと仕上げるため)、全卵、そしてパン粉の順。この日のパン粉は残念ながら峰屋製"ではありません"。

 パティが「タラとジャガイモを牛乳で煮込む」という凝った作りなら、上に乗る野菜もひと工夫。簡単に言うと「キャベツとニンジンのマリネ」なのですが、ローストしたクルミ、白ワインビネガー、そしてこれが大きな決め手となる「クミン」をスパイスに入れています。


 白身魚の「ニオイを消す」という役割がまず考えられるクミンですが、その役目を超えて、かなり強烈で独特な印象をこのバーガーに与えています。

 「海外で食べるサンドイッチのようだ」と言えばそうかも知れません。以前私と峰屋さんが一緒に米国へ行った際、ロサンゼルスで食べたパストラミサンドがやはりキャラウェイシードを「これでもか!」とばかりふんだんに使ったものでした。それまで私はキャラウェイが好きでは無かったのですが、そのサンドを食べて以来評価が一変したのは、それがこの上なく的を射た使い方であったためでしょう。

 今回のKEITAさんの2作・谷さんの2作とも、やはり「香りづけ」と「食感」という部分でイタリアンとフレンチのシェフというそれぞれのキャリアを活かした「和」ならざる、食文化の違いを感じさせるアレンジが施されています。


 油はサラダ油を使用。180℃で約3分――。

 やはりタラの身は衣で包まない限り、身崩れがしてしまうそうで、この「白」のバーガーについては従来の所謂「フィッシュバーガー」の方法に従い、パティ(バッタラマンテカート)はフライにしました。谷さんの「白」もフライです。

 揚がったパティの上に野菜を乗せ、タルタルソース代わりに「ジャガイモとタラコのピュレ」をヒール(下バンズ)の上に。そうです、アラスカ産のシーフードを語る上で「たらこ」の存在を忘れるワケにはゆきません。おせち料理に欠かせない「数の子」もその多くがアラスカ産。

 この日使ったバンズはオーソドックスな天然酵母バンズ。↑冒頭の4回目の試作時の写真はライ麦バンズで挟んだものです。そして7月10日のリリースパーティーに使うバンズは協議の末、ソフトフランス地を「大きく発酵させたもの」にしました。


 当初、私は峰屋さんと米国で食べた「サワードウー(sourdough)」という、サンフランシスコ名物の酸味の強いパンでバンズを作ることを考えていました。フィッシャーマンズワーフなどではこのパンをクラムチャウダーに漬けて食べますので魚介類との相性は実証済み。大手ハンバーガーチェーン"Jack In The Box"には実際にサワードウーブレッドを使ったレギュラーメニューが複数あります。こちらなど

 ところでこの日の峰屋での試食時、「牛肉はオモテへ味を『出してくる』食材だが、魚は味を『引き込んでくる』方だ」という面白い見解を峰屋さんが述べておられました。「味を引き込む」というのはおそらく、魚そのもの・魚単体ではサンドイッチとしての味が作り辛いという意味でしょう。いろいろ足さないと「カタチ」にならないという次第。ですからKEITAさんは様々な方法によって「引き込む」魚に様々な味を付加したワケです。


 その結果、この上バンズによってさらにそこへ新たな味を加える必要が無い状態になりました。そこへさらに強い酸味を持った「サワードウー」や「ライ麦」のようなバンズを使うと、味が集まり過ぎて取り留めが無くなる――ある種の「飽和状態」です。

 だからバンズに味を持たせることはやめて、極力味のしないソフトフランスバンズでゆくことにまとまった次第。パーティーサイズはバンズ30g。その小ささでカッチリ硬いフランスパンバンズを作ると硬過ぎておいしく食べられないので、「大きく発酵させて」生地の弾力を弱めることに。これは先日峰屋さんが視察旅行をしたベトナムのサンドイッチ「バインミー」に使うフランスパンからヒントを得ています。

 挟むとおいしいが、フランスパンだけかじると「お麩」のようにやわらかくて「とても食べられるものでは無かった」と峰屋さん。でも挟むと途端においしい――つまりはパンも中身も、全てがフルボリューム、100%フル出力であってはいけないということです。

 パンとしての、そしてサンドイッチとしての「妙味」がまさに"そこにある"というお話。それをベトナムの「パンが語ってくれた」と、峰屋さんが話して下さいました。 (つづく)



【シーフードバーガープロジェクト】 KEITAシェフ試作@峰屋 [東新宿] その1
# 7月10日、アラスカシーフードバーガー リリースパーティー開催
# フィッシュバーガープロジェクト・第4回目会合@HOUSE [西麻布]
# 2013年春 第3回アラスカシーフードとワインのマリアージュセミナー@Restaurant S [西新橋]
# フィッシュバーガープロジェクト・第3回目会合@HOUSE [西麻布]
# 進行中の新たなプロジェクト、その正体……
# 続・新たなプロジェクトがスタート
# 新たなプロジェクトがスタート

2013.7.13 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 16:34 | TrackBack(0) | シーフードバーガープロジェクト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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