私が初めてハンバーガーをプロデュースした店――東京・世田谷豪徳寺(ごうとくじ)地下のバー&カフェ、tokyo omo style(トウキョウオモスタイル)。「この店で食べるべきバーガーは?」と聞かれたなら、まずは迷わず「ハンバーガー」であり、そして必殺の「レモンバーガー」であるが、その次にご紹介したいのがてりやきバーガー¥900である――こんな作り方をしている店は日本国内おそらく他に無いだろう。
世間一般の「テリヤキ」のイメージとはちょっと違うテリヤキバーガーである。どう違うのか――以下詳しく書くとあるいは真似だす人も居るかも知れないが構わない。
実は当初は無いメニューだった。私の構想にも無かった。やりたいと言い出したのは店主清水さんの方である。
そこで清水さんが考えた初期の試作品というのが世間一般がイメージするモスやマクドナルドの所謂"ソレ"だった。強烈に濃い甘々のテリヤキソース。よく出来てはいた。しかしそれでは面白くない。他の店と同じものを出すのなら、わざわざオモスタでやる意味が無い。だったら駅前のマックへ行けばよい。
その世間一般が抱くテリヤキのイメージを「超えない」理由は何かと言うと、甘辛いテリヤキソースをパティの上からとろ〜りかける、その"行為"そのものがつまりは原因なのである。
ソレをやれば世間一般が求める「所謂ソレ」にはなる。期待に応えることは出来る。その一方で、甘辛いだけが能の無粋なソースの味にオモスタ自慢の肉くさいパティの旨味が殺されてしまって、ビーフパティを今以上においしくするという「プラスアルファ」の要素がその行為には感じられない。つまりどうにも無意味な行為なのである。
考えてみれば「照り焼き」とは文字通り、タレを塗って「照り」を出しながら焼く調理法をいう。パティを焼いた"仕上げ"にソースを絡めるのでは、そもそも本来の意味の「照り焼き」では無い。
それが専門店ともなると、もっとしっかり丁寧にソースと絡めながらパティを焼くようになるのだが、それでも根底にはモスやマックの「テリヤキ」のイメージが強くあって、飽くまでその発想の域から抜け出ないモノであるように思われる。そうはしたく無かった。私と清水さんはもっと新しいものが作りたかったのである。
そこで照り焼きの正しい調理法通り、ソースを丹念に塗りながらパティをグリルしてみたところ、肉の味は消えない代わりに今度はテリヤキソースの味がちっともして来ない。焼く前にソースの中に潜らせてみたが、それでもなお弱かった。「ならば」と、清水さんがこんなことを言い出した――「パティをひと晩テリヤキソースに漬けてみてはどうか」。
実はこれは米国式の"Teriyaki"の調理法に他ならない。ご存知ウィキペディアの照り焼きの項にはそのように記述がある。英語版wikipediaの"Teriyaki"はこちら。気になってアチラのレシピをいろいろ調べてみたが、ことごとく肉は事前に"marinade"(マリネ)することになっている。つまりオモスタのてりやきバーガーは米国の"Teriyaki"の調理法で作ったということになるのである。
但しアチラでは"Teriyaki"という調理法はポピュラーであるが、"teriyaki burger"なるメニューは決して一般的なもので無いことを書き添えておく。
ビーフパティをテリヤキソースに漬け込んでいる、マリネしている――これがtokyo omo styleのてりやきバーガーである。しかも幾日もかけて漬け込んでいる。だからソースの味がパティによく滲みている。きっと見た目にも普段のパティとの違いが判るだろう。
US産125gパティの赤身の濃い味わいに「深いところ」で絡むテリヤキソース。マックやモスのようにハデハデでは無いが、じわじわと言い知れぬ旨味が効いて来る。マヨネーズと出合った時の堪らぬ旨さ――飲み物を飲んで口の中の味が変わってしまうのが惜しいくらいだ。粗く挽いたパティの少しドライでザラつく感じも好い。
バンズは湘南藤沢「Kalaheo(カラヘオ)ベーカリー」。オニオンはグリルド。上から鷹の爪。トマトは入らず。
§ §
作り方をイチから考え直した一品。おかげで上からソースをかけたのでは表現し得ないビーフの旨味に行き着くことが出来た。飽くまで本業は"バー"ながら、なかなか考えつかないようなことをやっている。
但し、恐ろしくフライパンが焦げ付くのが難。一度焼くとコゲを洗い落とすのが大変である。そこが悩みどころだ。
→ # tokyo omo style [豪徳寺] のチーズバーガー(再食)
# tokyo omo style [豪徳寺] のチーズバーガー
# tokyo omo style [豪徳寺] のレモンバーガー
# 297 tokyo omo style [豪徳寺]
― shop data ―
所在地: 東京都世田谷区豪徳寺1-23-12 ささビルB1F
小田急 豪徳寺駅歩1分・東急 山下駅歩2分 地図
TEL: 03-5799-6895
URL: http://tokyoomostyle.com/
オープン: 2010年7月7日
* 営業時間 *
ランチ: 12:00〜16:00
バー: 18:00〜24:00フードLO(〜29:00閉店)
定休日: 月曜日(売切れ等あるので、要ホームページ確認)