「丼はいいのか?」という声が聞こえて来そうだが、取り上げた理由の一つにCOCO'S(ココス)は元々はアメリカ発祥のレストランであるということを挙げておきたい。
オリジナルの"COCO'S"はベーカリーレストラン。LA近郊オレンジ郡のCorona del Mar(コロナ・デル・マー)に1948年創業。ディックとマックのマクドナルド兄弟が同じくLA近郊San Bernardino(サンバーナーディーノ)に"McDonald's"を始めたのと同じ年である。
現在本部はサンディエゴ近くのCarlsbad という所に在る。カールスバッドは全米でも屈指の裕福な街だそうだから、アチラのCOCO'Sは日本でいう「神戸屋レストラン」のようなステイタスを持った店ということになるのだろうか。
そう言われてみると、日本のココスにもカリフォルニア辺りに多いスペイン風な建築様式があしらわれている。入り口の窓が無い大きな木の扉など、あるいはステイタスあるレストランであることを表すものであるかも知れない。
メニューについてはやはり本家の方がはるかにストライクな内容で、日本のものより何十倍と惹かれるのだが、日本のココスも朝食バイキングについては「毎日お店で丁寧に焼きあげ」た自家製パンを用意しているとのことなので、本家米国の千分の一くらいの雰囲気は味わえるかも知れない。
頼んだのはサーモン丼¥819。これを取り上げることにしたもう一つの理由は「アトランティックサーモン」を使用していることを大きく謳っていたからである。そこまではっきりサケの種類を言って売っている例というのは実際のところ少ない。
アトランティックサーモンには「タイセイヨウサケ」という日本名がある。読んでの通り、タイセイヨウサケは北大西洋に分布生息する種である。ココスでサーモン丼に使っているアトランティックサーモンの産地はチリ産とのこと。チリは太平洋に沿った国である。だからこのサケは近年チリで盛んな養殖によるもの。
「ほんわり」と淡い食味のサーモンは、良く言えばやさしく軽く、悪く言えば何だか締りの無い、「ぼやっ」とはっきりしない味だ。新食感と言われれば、そうかも知れない。ごはんはユルい酢めしになっていて、これらの上からワサビを溶いた醤油をかける。しそ(紫蘇)もさることながらスライスしたオニオンが役割絶大。やはり薬味が無いことにはどうにも締まらない。みそ汁は豚汁。具が多くやや豪華な印象。漬物は刻んだしば漬けでキュッと強い酸味。
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カリフォルニア辺りから来た米国人が何も知らずに日本のココスに入ったら、さぞやビックリするだろう。それは「デニーズ」も同じか。「どうしてコレが同じ名前の店なのか?」と驚くかも知れない。少なくとも「この店に行けば」という味の保証にならないことは確かだろう。同じなのは名前だけ。変わり過ぎるのも考えものだ。
2013.4.13 Y.M