2月来お伝えしています、例の新たなプロジェクト。一体何に関わっているのか、詳しいことはもうしばらく伏せておくつもりでいたのですが、取り巻く状況に多少の変化が生じたことから一転、進行半ばにして敢えて発表することにします。新たなプロジェクト、その名は――フィッシュバーガープロジェクト。
お話を頂いたのは昨年11月の末です。全く新しい"フィッシュバーガー"を作るので、ぜひ参加して欲しい……と言われたのですが、まずもってフィッシュバーガーはハンバーガーではありません。サンドイッチ、ないしは「フィッシュバーガー」という名のハンバーガーとは"別の食べ物"であって、その名称自体そもそも混乱を招く、実に紛らわしい呼び方であると日ごろ私は思っていたワケです。ソレに関わるよう言われたワケですから、当初は考えました。
まずそうした私のスタンスをきっちりお伝えした上で、相容れるところが無ければお断りしてしまおうとも思ったのですが、ところがお話ししてみると期待以上のご理解をいただきまして、それで関わることにした、という次第です。
依頼主はアラスカシーフードマーケンティング協会といいます。そして今回のプロジェクトのコーディネーターは、アメリカ大使館主催のキャンペーン"TASTE OF AMERICA"などを手掛けるOffice K2Mという会社。この面々ならば面白そうだと思いました。
アラスカ産の海産物をもっと広く知ってもらおうというPRの一環として、アラスカ産のシーフードを使った「ハンバーガー」を開発し、食べてもらおう――というのが今回の主旨です。
アラスカ産、ベーリング海で獲れる天然物のシーフードというと、大まかに「タラ」「カレイ」「カニ」「ホタテ」などあるワケですが、今回の新メニューの"花形"は何と言ってもサケ、「サーモン」でしょう。
何種類か作るメニューの中にもちろんサーモンは入っていて、西麻布「HOUSE」総料理長・谷祐二さん、イタリア料理研究家KEITAさんのお二人によって、そのレシピが検討されていたワケなのですが、奇しくも時を同じくして、しかも二足も三足も先んじて、このほど世に出たのがデニーズの「サーモンバーグ」です。3月12日フェア開始。
まるで同じものを考えていたというワケでは無いのですが、「サーモンの食べ方の提案」という点で、そのあまりのタイミングの好さにちょっとビックリさせられました。写真はサーモンバーグサンド。
こちらはサーモンバーグのロコモコ風です。このデニーズの「サーモンバーグフェア」の発表・発売を受けて、それまで「ある程度形になるまでは伏せておこう」と決めていた今回のプロジェクトの概要を一点「明かしてしまおう」と考えた次第……>みなさま、いま私はアラスカ産のサーモンその他シーフードを使った新しい"フィッシュバーガー"を考えております!
しかし今や「サーモン」と言えば寿司ネタのダントツ一番人気ですよ。この日食べに行った回転寿司には「サーモン」「サーモンハラス」「焼きサーモン」と、サーモンだけで3品もありました。しかも「鮭(さけ)」とは呼ばないのですよね。ナゼだか「サーモン」……。
子連れ・家族連れ皆無、サラリーマンがもっぱらの平日夜の店内でしたが、注意して聞いていると飛び交う注文の「サーモン」率が実にまぁ高いこと!私、誕生石ならルビー、寿司ネタなら赤身(マグロ)と決めているので、サーモン"なんて"まず頼まない口なのですが、なるほど世間一般の人気の高さを思い知りました。
写真は焼きサーモン。今回初めて食べましたが、これがまぁ日本人好みな「ふぁっ」としたやわらかさで美味!何事も物は試し、食べてみるものです。
サーモンのおいしさというのは実にわかりやすいのですよ。本邦でサーモンでなく「鮭」と言うと、おにぎりの具であり、お茶漬けの具であり、そしてそれらの素(もと)となる「焼き鮭」ですよね。煮るでもなく蒸すでもなく、とりあえず「焼いて」さえおけば、我々日本人がこよなく愛するあの「おいしい鮭」が楽しめるワケです。簡単に。
つまり今回の試みというのは、敢えてその黄金・不動な調理法に挑んで「でも、たまにはこんな食べ方も悪くないね」と言わせなければならないという、要するに「並大抵な挑戦では無い」ということです。相手が単純にして王道であるだけに。
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繰り返しますが、フィッシュバーガーはハンバーガーではありません。ですので私は今、己の節を曲げて、ハンバーガーでは"無いバーガー"の開発に協力しようとしていることになるのですが、だからこそ、やるからには「なるほど、ハンバーガーストリートが関わっただけのものではあるね」と言わしめるものを作りたいと強く思うワケです。文字通りの「全く新しい"フィッシュバーガー"を」ですね。
完成は数ヵ月後。とは言え開発と試食の機会というのは数度もありません。つまり思いのほか時間はありません。ですがその限られた時間の中で目一杯面白いものを考えたいと思っています。詳しい話・細かい話は随時――サーモンネタ、しばらく回します。 (つづく)
2013.3.28 Y.M