先月、海外資本が買収という報道があったコメダ珈琲店。記事によると中部地方を中心に現在「484店」を展開しているというから、数の上ではロッテリア(2012年3月現在、454店)を上回り、フレッシュネスバーガーやファーストキッチンの3倍以上の規模を誇るコーヒーショップチェーンということになる。
「バーガー」と名の付くメニューは2品。ハンバーガーに似た形をしたメニューが2品。それら全て「特製サンド」というカテゴリーに属している、その分類の正しさについて評価したい。"バーガー"と付くのは「ハンバーガー」¥380とこの日食べたフィッシュフライバーガー¥400。「似た形」をしている2品は「エッグバンズ」¥380と「コロッケバンズ」¥380。「コロッケ」を「バーガー」と呼ばなかった点も大いに好感が持てる。
「フィッシュバーガー」という食べ物は正しくは「ハンバーガー」ではない。「フィッシュバーガー」という名の「別分野」の食べ物、「ハンバーガーとは別物」と考えるべきだろう。
それは「うどん」と「きしめん」が同じもので無いことと一緒である。
「うどん」も「きしめん」も同じく「麺」である。蕎麦もパスタも中華麺をも含む世界規模の「麺類」という大きなカテゴリーの中に属する、それぞれに別個の(しかしよく似た)、一つの分野ないしは部族と考えることが出来るだろう。
同様にハンバーガーも、世界中にある「サンドイッチ」という食べ物のカテゴリーの中で、とりわけ「バンズの間に"牛肉"のパティ」を挟むことに特化した一つの部族であり、特定の枝分かれであると見ることが出来る。この場合何が大事かと言えば"牛肉"という一点である。牛挽肉のパティをバンズ(bun)と呼ばれる丸いパンに挟んだサンドイッチを、とりわけ「ハンバーガー」と呼ぶワケである。
だからチキンを挟んで「チキンバーガー」、フィッシュを挟めば「フィッシュバーガー」と呼ぶのは本来はおかしい。それは「サンドする」という動詞が「バーガー」に置き換わっただけの呼び方に過ぎない。なのでフィッシュフライバーガー¥400も「フィッシュフライサンド」と呼ぶのが本当だろう。それでも敢えて食べてみた――。
まずバンズがよろしくない。
「ふわっとしていれば好し」とするような時代遅れな感覚がある。日本的な「駄パン」の発想である。食べたとき「ぺっしゃり」潰れて口の中に「ベタッ」と貼り付く感じが好くない。そこを前向きに直せば、サンドイッチとしてのもっと様々な可能性が見えてくるだろう。但しまぁそうした伝統を守る立場の人も中には必要だろうけれど。
魚はもちろん白身。もちろん冷凍のフライだろうが、昨今の冷凍食品技術の飛躍的な向上の故か、衣がベタッと寝ていず、サクリと鋭利で軽快な歯応え。なかなかに見どころがある。
身も想定される魚臭さはあるものの、ミディアムレアな火加減でなかなか。そこに「ドヨン」とはっきりしないタルタルソースが、しかし重過ぎず利いていて、「ベッタリ」としたチーズと相俟って白身の旨味を巧みに補強し、強調する役割に。タマネギの辛味もいい具合に利いている。細切りキャベツの「細さ」と冷たさが残念。
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大手バーガーチェーンのいかにも作り物くさく、スケール感小さくまとめられたフライよりも出来は数段上。昨今コンビニでもファストフードでも何処でも、食べ物全般何でも目を瞠(みは)るくらいにおいしくなっているが、そうした技術の進歩を感じさせる一品である。
そうなって来ると揚げ物より難しいのは、やっぱり"焼き物"ということになるワケである。難しいのはフライよりグリル。フライのサンドよりもパティをグリルした「ハンバーガー」の方がおいしさを伝えるのはより難しいのではないか……と私は思う。
→ # コメダ珈琲店 のハンバーガー(再食)
# 043 コメダ珈琲店 [名古屋]