昨秋、私が初めてハンバーガーをプロデュースした店として時折ご紹介している、東京・世田谷豪徳寺(ごうとくじ)のカフェバーtokyo omo style(トウキョウオモスタイル)。
その後なかなか順調に推移しているらしく、売切れの日も相次いでいるという。だがそれでも本業は飽くまで「バー(酒場)」なので、設備的にも環境的にも、そして物理的にも、出せる個数にどうしても限界が出て来る。
それは仕方が無いと言えば仕方の無いことだ。売り切れを肯定するつもりも無いし、店の肩を持つつもりも無いが、でも実際、ハンバーガーが目当てで無く、純粋に酒を飲みに来る客や、店員との会話を楽しみに来る客も現に居るワケである。店としては「ハンバーガー客」では無く、そうした「バー客」のことも当然考えなくてはならない。始める前から分かっていたこととは言え、だがそう簡単な問題でも無い。当面は、日々新たな課題・問題に直面しては何かしらの決定を下してゆく・判断をしてゆく――そうしたことの連続だろう。大事なのは決め事だ。まだしばらくは落ち着かない時期が続くに違いない。
ハンバーガー全7品中、最もプレーンなハンバーガー¥800の次に安定しているメニューは、おそらくチーズバーガー¥900だろう。
パティはUS産125g。特にこの日は「いま肉屋が届けに来たばかり」の肉だったので、普段よりも「ふわり」とやわらかく、噛み応え一辺倒では無い、牛肉が持つ食感の豊かさのようなものを楽しむことが出来た。
ガスコンロの上でフライパンで焼いている。コゲのにおいがガツンと香ばしい。振りかけたコショウはじめシーズニングが、例えるなら"スナック菓子"のようにやや大袈裟に利いており、そして決まっている。「牛肉」を口にしていることを終始実感出来るハンバーガーである。
そこにチーズが被さる――。
チーズは「レッドチェダー」と「ペッパージャック」の2種類を交互に並べ、とろけさせて、ミックスチーズのようになるようにしている。ペッパージャックがよく利いていて、カブり付くとまるで先制攻撃かのようにチリチリとしたハラペーニョの辛さが舌先をしびれさせる。ダメな人はダメだろうが、堪らぬ人には堪らぬこの辛さ――(ダメな人はチェダーだけにしたり別なチーズに代えたり、変更可能)。
ただでさえ力強いビーフの味わいが、チーズによってさらにチリチリ・パチパチするワケである――これにはちょっとした遊び心を感じる。ペッパージャックを選んだのは私でなく店主の清水さん。
普通チーズは加熱すると、目にもおいしそうにとろける代わりに、味は段々しなくなるものだが、このバーガーは熱してなお味が利いており、その辺もシブトイ。何でだろう? と考えたが、量が多いのかも知れない。「採算合うのか?」という気にもなるのだが……(笑)。天辺のコゲ目も効果的。
バンズは湘南藤沢「Kalaheo(カラヘオ)ベーカリー」製。噛み切る際、生地の"弾き"と言うか"抵抗"と言うか「引っ掛かり」がちょっとあって、それが何よりのポイント。前歯を当てるだけでストーンと噛み千切れるスポンジのようなソフトさでもなく、また咀嚼にあごが疲れるようなグルテンの強さでもなく、なかなか好い食感に落ち着いている。
その辺までは好いのだが、野菜の量・使い方、マヨネーズ及びマスタードの量などがまだまだ決まり切っておらず、課題を残す。この日食べたものはマヨ&マス共に量が多過ぎて油濃く、後味はあまり好くなかった。
§ §
その辺りの「出力」をどの辺まで出すか・抑えるか――というのは絶対的な答えの無い、実に難しい問題である。味の好みは人により千差万別なので、もし仮に誰か一人の好みに合わせたなら、必ずや別な誰かから好みでない旨を聞かされることになる。一人一人の好みに合わせていたのでは何が基準か、そのうちワケが判らなくなる。
だがそれでも店としては一つ一つ決めてゆかねばならない。目の前の問題を一つずつコツコツと片付けてゆかねばならない。それしか方法が無いのだから仕方無い。決めないことには延々ブレ続けることになる。だから大事なのはやはり決め事なのである。焦らず地道にやってゆくほかないだろう。
→ # tokyo omo style [豪徳寺] のレモンバーガー
# 297 tokyo omo style [豪徳寺]
― shop data ―
所在地: 東京都世田谷区豪徳寺1-23-12 ささビルB1F
小田急 豪徳寺駅歩1分・東急 山下駅歩2分 地図
TEL: 03-5799-6895
URL: http://tokyoomostyle.com/
オープン: 2010年7月7日
* 営業時間 *
ランチ: 12:00〜16:00
バー: 18:00〜24:00フードLO(〜29:00閉店)
定休日: 月曜日(売切れ等あるので、要ホームページ確認)