2012年06月16日

# 289 BESNUG [神奈川・大磯]




 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

§ §

 梅雨の晴れ間に――と言うより、来る夏本番を前にこの記事を書こうと思う。

 場所は神奈川県中郡大磯町(おおいそまち)。店の名はBESNUG(ビー・スナッグ)。海に臨む湘南の避暑地に今年'12年の4月でオープン5周年を迎えた、ロコな店である。

●大磯

 東京駅から東海道線で1時間と数分。オレンジ色の瓦で葺いた大磯駅の駅舎は、あるいはスペイン風を意識したものか。大磯ロングビーチなどのイメージもあって欧米風な町並みを想像するかも知れないが、江戸の昔より東海道八番目の宿大磯宿のあった場所である。

 街道に沿って松並木が植えられ、寺社や和菓子店なども見られて、断然、和の趣き。駅から下って東海道、今の国道1号線まで出ると"日本三大俳諧道場"の一つ鴫立庵(しぎたつあん)。残りの二つは京都嵯峨野の落柿舎と、滋賀大津の無名庵。「湘南発祥の地」ともされる。




 海へ出てみた。波乗りの姿は無かったが、釣り人が幾人か。


 ここは照ヶ崎海岸、またの名を小淘綾ノ浜(こゆるぎのはま)とも言う。日本の渚100選にも数えられる景勝地だ。

 あぁ、ココに載っている写真を見て、初めて気が付いた――富士山は海の先でなく、もっと内陸の方角だったのか。→この写真でゆくと、松並木越しに据わっている感じである。

 釣り人の向うはおそらく真鶴(まなづる)、その奥に薄っすらと重なるのが伊豆半島だろう。沖合い彼方には大島が微かに霞んで見える。





●新聞代金

 実はこの照ヶ崎海岸は海水浴場発祥の地の"ひとつ"としても知られる。発祥の地は全国他にもいくつかあるらしいので、あくまで諸説あるうちの"ひとつ"ではあるが、しかし明治18年に開かれた事実に誤りはない。古式ゆかしきビーチである。


 その案内が建つ国道からの入り口すぐ脇にコノ店。ちょうど店の前に「日本橋から68km」という標示が建っている。狭いながらも駐車場あり。

 店が出来たいきさつが面白い。

 店主柏原さんは某全国紙の販売店を経営している。そっちがまず先であり、主である。それでその新聞料金の払いに関してこの地域には少し変わった"ルール"があって、そのローカルルールがためにコノ店はオープンした――というのである。その"ルール"とは……?


 新聞料金は集金しに来ることが多いと思うが、集金ではなく、自ら足を運んで販売店まで支払いに行くと大磯町商工会が発行するカードにポイントがつくという――それが"ルール"である。

 ところが店のあるこの辺りは販売店のエリアの端に当たり、遠くて支払いに行けない。なので「近所にも料金を払える場所を作って欲しい」との要望が上がった。

 その声を受けて柏原さん、最初は雑貨店を開き、新聞代の支払い窓口を兼ねて営業していたのだが、でもどうせやるなら趣味と実益を兼ねた"飲食店"だろうと。新聞代金の支払いも出来て、ポイントもついて、お客さんも喜ぶ。そして自分の長年の"夢"も叶って八方善いこと尽くめ……というその"夢"というのがハンバーガーショップだった次第。


●サーフィンとハンバーガー

 柏原さんご一家は「一人を除いてみんなサーファー」という波乗り一家。柏原さんご自身日本サーフィン連盟の支部長を務め、選手の育成や大会運営などに力を注いでいる。


 そして奥さんと息子さんは全日本選手権にも出場する選手――こんな面々がハワイへ行けば、自然ハンバーガーショップへと足が向くのは、これは"道理"というものである。サーフィンとハンバーガーは実に結びつく。サマになる。

 ハワイへ行くたび、まずはハンバーガー屋へ向かった。ハンバーガーを食べることそれ自体がひとつの楽しみだった。柏原さんが思い描くハンバーガーは「パンとパティとケチャップ」。「田舎の小さなお店が出している何でもないハンバーガー」を理想に挙げる。


 店の造り自体もハワイの田舎町に在るような、決して派手で無い、シンプルな店をコンセプトにしている。

 店内13席。テラスも入れると15席。四角い印象のこじんまりとした店である。壁にはサーフボードとジャック・ジョンソンのサイン入りTシャツが掛かり、サーフサウンドがゆったりと流れる。

 ハンバーガー界でサーファーと言えば、東北沢のTOM'S CAFE HAMBURGER ON THE BEACHの稲葉さん、"波乗りシゲさん"こと横須賀TSUNAMIの飯田さん、船橋のALOHA DINER DUKE'S伊藤さん、あとは横浜・藤が丘COCOCHI BURGERSの後藤さん辺りか。やはりサーフボードとハンバーガーは"サマ"になる。

●USビーフ100%

 '07年の春4月にオープン。お年寄りが多い町なので「受け入れらるか」と心配したが、意外にも「年配の方が来て下さいます!」。平日はご年配が中心、それが場所柄週末になると、客層が一気に若返る(笑)。


 本当は夜もやりたい――サーフィンに関係する店である以上、ネオンサインとボトルビールは置かずには済まない部分がある――のだが、夜は人通り自体すっかり絶えてしまう場所なので、どうも思うようにゆかないようだ。なので今は18時で閉めている。

 とは言え夜の集客は他店でも同様の悩みの種なので、この場所に限った問題というワケでもない。全国共通と言ってもよいだろう。

 バーガー13種。チキン、フィッシュ、海老が8種。ドッグ3種。スパムロール\600。そしてハワイアンには欠くことの出来ないロコモコ\1,000。

 チーズバーガー\800。カゴに入り、さらに袋に入って供されるので、良い画を撮るのに苦労した。↑冒頭の画像も正直不本意である。

 ずんぐりと胴回りのあるバーガーである。位置は肉が上。野菜が下。特に決まったルールは無いようだが、米国では肉は下が多いと思う。逆に日本では肉を上に持って来ることが多い。

 飲食業のキャリアも10年以上の柏原さんが、最も意を注いだのはパティである。つまり「肉」。もちろんビーフ100%、つなぎ無し。それこそが本来あるべき姿だ。産地はUS。130g。軽くナツメグと胡椒の香り。


 この肉の存在感は確かだ。そこに尽きる。やわらかく食べやすいが、されど脂を多く含むことによるやわらかさではない。柏原さんの思いの通り、ドライな挽肉がなかなかに肉肉しい。

 日本人的な解釈のパティとは異なる。赤身が強い米国的な趣きがある。こういうパティのバーガーがこうした浜辺で出て来ることは素直に嬉しい。

 ただそこに「ケチャップとマスタードをたっぷりつけてかぶり付いて欲しい」という柏原さんの要望については、私は何とももったいないと思う。折角イイ肉の味がするところに多量のケチャップをかけては、折角の肉の味を隠してしまうだけである。

 別にケチャツプとマスタードに恨みがあるワケではない。これがそもそもの肉の質自体が悪いと言うなら調味料で誤魔化す手もあろうが、でも事実これだけ多量のケチャップ&マスタードに埋もれてもなお味を利かせてくる、しっかりとしたイイ肉であるだけに、だからこそもったいないと言うのである。

 透き通る火加減でグリルしたオニオンの熱が効いていて、バーガー全体がいつまでもホカホカとおいしい。その下で温まったトマト。パティの上にチェダーのスライスが3枚。ふかっと膨れた白っぽいバンズは軽めな生地。口の中で少しモサる。てっぺん白ゴマ。その上からピックが刺さる。バーガー全体で結構な量がある。海の近くの店らしい豪快さを感じる。

 ケチャップとマスタードの味で食べるバーガー。肉にしっかりと確かな味わいがあるだけに、マヨネーズ含め調味料の量を加減しても好いと思う。もっと「肉」の味を感じたい。


●自家製ハウピア

 ポテトは皮付き(ウェッジポテト)。縦に割ったピクルスが4片も付く辺り豪快。ランチセットにはハウピアというココナッツミルクで作った自家製デザート付き。胡麻豆腐のような食感だ。

 このデザートで締める頃にはお腹いっぱい!さすが海辺の店らしい豪快さと気風(きっぷ)の好さが伝わってくる。

 柏原さんのオススメはイチにプレーンバーガー\700。今風の派手なバーガーの中ではアボガドサルサチーズバーガー\1,050がオススメ。「アボガドをサルサソースで食べると波乗りの合間の腹ごしらえに最高」とのこと(笑)。なるほど――波乗りの気持ちになって考えてみるのも面白い。

§ §

 店名はお嬢さんの命名。小さな店だけれども「心地好く過ごして欲しい」という思いが込められている。

 「年配のご夫婦がハンバーガーを食べている光景」が素敵と店主柏原さん――そういう貴方のお考えこそ素敵(笑)!そう、ハンバーガーは若者のためだけにある食べ物でもなければ、まして子供のおやつでもない。むしろ大の大人たちこそゆっくり優雅に、ときに豪快に楽しみ味わうべき立派な「食事」である。

 梅雨の晴れ間の昼下がり、駅前も1号線沿いも、照ヶ崎海岸へと下ってゆく途中の町並みも、どこものんびり・ゆったりと落ち着いていて、実にのどかな午後である。時の流れも止まっているかのようにゆっくり、静かだ。そんなスローな町に溶け込んだ、ロコなハンバーガーショップ。



【二ッ目!】 BESNUG [神奈川・大磯] のチーズバーガー
【エフヨコ SPチケット】 BESNUG [神奈川・大磯] のプレーンバーガー+2トッピングランチセット

― shop data ―
所在地: 神奈川県中郡大磯町大磯1093
      JR東海道線 大磯駅歩10分 地図
TEL: 0463-63-0333
オープン: 2007年4月10日
営業時間: 11:00〜18:00
定休日: 月曜日(※要確認)


2012.6.15 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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