2012年04月28日

【二ッ目!】 FATZ'S [高円寺] のThe 50/50




 2011年3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

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 お世辞抜き、贔屓目無しに正直に言って、まぎれも無く本年ここまで一番のおいしさ。いや、コレはヤられた。ヤられてしまった。実に久しぶりに心の動くバーガー、思わず唸るバーガーに出合えた。また食べたい。もう一度食べてみたい。毎日食べたらきっと頭がバカになるだろう――そんなハンバーガーである。

 高円寺(こうえんじ)FATZ'S(ファッツ)祝! 開店1周年記念メニューということで、店主ジョンさんがひと月以上前からこのアイデアについて、実に楽しそうに語って聞かせてくれていた。曰く「自分もまだ食べたことがない」「どんな味になるかわからない」「おいしかったら1周年のバーガーにする」――。

 彼が着目したのは、いま米国本土で流行っている「50/50(fifty-fifty)」というバーガー。何が「半々」なのかと言うと、それはパティの「肉」なのである……えーっ!? 合挽き??? そう、まさかの「合挽き」だ。数量限定のファッツ1周年記念バーガーThe 50/50(ザ・フィフティ・フィフティ)¥1,300は日本初、ビーフとベーコンの合挽きパティによるハンバーガーである。



 左が牛肉、そして右がベーコンをミンチにしたもの。名前の通りこれを50:50、つまり1対1の割合でミックスする。成形したパティが以下。ビーフ100%とは明らかに違う色合いだ。


 先日「O.M.G BURGERS」へ行って、「ドライなパティが苦手」な米国人店主デニスさんが合挽きパティを使っていることに驚かされたばかりだが、今回も牛豚の合挽き……但し豚は「ベーコン」である。すなわち豚肉を「塩漬けにして燻製にしたもの」だ。そこが今回の"ポイント"である。

 ただの合挽きパティでは無いのである。ベーコンチーズバーガーに乗っているベーコンを、扱いが面倒くさいので挽いて一緒にパティに混ぜちゃったみたいな「不精」を思ってくれたらよい。ジョンさん自身のアイデアでは無い。冒頭書いたようにカリフォルニアに「Slater's 50/50」という専門店があって、どの程度の騒ぎになっているかは知らぬが、「お、面白いこと始めたな」という感じでこれに触発された人々が独自のレシピを考え出したり、といった動きがあるらしいのだ。ジョンさんも興味を持ち、早速自分で再現してみた……という次第。

 レギュラーのビーフパティは120g。50/50のパティはサイズを100gにし、これを2枚使う。つまり200g。最近取り上げた「I-Kousya」のダブルとちょうど同じ設定だ。グリルはガス火の直火。チーズはハバーティ(白)とチェダー(黄)。さらに西洋わさびとローストガーリックを和えたマヨソース。あとは基本のトマト、玉レタス、レッドオニオン。


 一に食感、二に香りである。彼ら米国人や欧州人が作るバーガーはじめ料理は、意外にも(我々日本人が勝手に想像している以上に)香りを大切にしていたりする。ベタッと強烈なニオイではない。フッと鼻に抜けるような香りだ。このパティもミンチにしたベーコンが放つスモークチップの芳香が、ソーセージに加えたハーブを想像させる。

 何より食感が面白い。牛でもない、豚でもない、この食感。ベーコンと言うより厚切りの"ハム"のような、脂は少なく身ばかりがミシッと詰まった2cm厚ほどの分厚いハムを焼いて食べたときのような、ボサッとして気が利かない……豚特有のそんな食感である。のど越しが明らかに牛とは違う。今まで食べたことがない。まさに「新食感」だ。

 印象で言うとやや豚の方が勝っている。横より縦にサクサクと裂ける歯応えで、これがクセになる。しかしあくまでやわらかく、ソフトで食べやすい。その点はビーフの良さだろう。顎が疲れるようなことは無い。パティを2枚にしたのは表面のカリッとした食感を出したかったから、とジョンさん。

 脂が多い――ベーコンが入っているのだから当然である。その上さらに「油」を強調するかのようなマヨソースがかかっている。これはクローブとガーリックをオリーブオイルで焼いて擂り潰したものに、ホースラディッシュ、マスタードなどを加えたもの。「パティの脂の少なさ」をジョンさんは気にしていたが、実際心配するほど少なくはないので、ここまでソースをかける必要は無いだろう。


 油でベッタリしそうなところをホースラディッシュのパチッとした刺激が程よく利いて、巧く味を引き締めている。「うなぎで言えば山椒の役割」とジョンさんに言ったら、そのまま通じた(笑)。

 チーズは味の添え役。ソースがどんなに強烈かと心配したが、そうでもなく、「肉」とレッドオニオンがあくまで中心に座している。センターは不動だ。

 文字通り"後口"にオリーブオイルが纏わりつくものの、ベーコンが放つ香りが何とも好い。やはりベーコンから来るものか、後味はなぜか甘い。バンズも甘く感じられた。力説した「縦に裂ける食感」と合わせ、もう一個食べさせたくさせるバーガー。袋の底に残るオリーブオイルにベーコンから出た脂が滲みて、コレがまた美味! クセになる。

§ §

 但しジョンさん、想像していたよりはおいしいものが「出来なかった」と言うのである。

 日本はいいベーコンが無いという。使いたいベーコンのイメージが湧いていて、店先に並んでいるところまで見えるのだが、しかし日本では手に入らないのだというのだ。やはりベーコンはアメリカ。思うようなベーコンさえ使えれば、もっとおいしくなる可能性がある――とジョンさん。

 そういうことが言える人は、私は大好きだ。冷静な自己分析と、そして一人のバーガーファンとしての「期待」が込められた、頼もしいコメントである。

 春限定"ANCHOR BREWING"の「ボックビール」がまた合う! キャラメルモルト、チョコレートモルトの苦味が利いているようでいて……でもこの引きの良さね!肉料理の供に申し分無し。

 1周年記念バーガーThe 50/50は4月28日より販売開始。いつまでやるかはジョンさんの気まぐれ? たぶん私はもう一度食べに行くことになると思う。本年暫定最高位。1位。




【スタンプラリー#11】 FATZ'S [高円寺] のカラミティ・ジェーン・バーガー
# 279 FATZ'S [高円寺]

― shop data ―
所在地: 東京都杉並区高円寺北3-21-19 ライオンズプラザ高円寺E号
     JR高円寺駅歩3分 地図
TEL: 03-6762-3939
URL: http://fatzs.lolipop.jp/top.html
オープン: 2011年4月29日
  * 営業時間 *
火〜土: 12:00〜15:00, 18:00〜22:00
日曜日: 12:00〜18:00
定休日: 月曜日・第3火曜日(要確認)

2012.4.28 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:52 | TrackBack(0) | 【二ッ目!】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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