2011年3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
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何ですか、NHK朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』は蒲田が舞台なんですね? というのを久々に蒲田に行って知った次第。その蒲田の近くに今回ご紹介するお店――。
スタンプラリーの際にも触れたが、JRと東急の蒲田駅から京急線の京急蒲田までは約850m。街中を歩くのでそこまで距離は感じない。京急蒲田から上り品川方面の隣駅が梅屋敷(今回のドラマにふさわしい駅名)、その隣が大森町駅。読みは「おおもりまち」。駅歩0分の好立地に既にお馴染みのLocofee(ロコフィー)が在り。音楽劇『カラミティ・ジェーン』ハンバーガースタンプラリーにおいては終始上位争いに絡んで、健闘した。
なお、京急沿線のハンバーガーショップというと、グッと下って横浜市、金沢文庫に「JAFFE JOFFER」、その一駅手前、能見台に横浜高校ゆかりの「サンテオレ」、そして横須賀市に入って汐入および横須賀中央にヨコスカ ネイビーバーガーの各店。京急線に乗るとネイビーバーガーの宣伝が盛んにされているので、京急利用客のバーガー認知度は案外と高いかも知れない。
●501
店主宮川さん、中学の頃からアメリカ好きである。きっかけは父親。親父。
遡ること20年ほど前の話である。Gパンにうるさい親父は、よくリーバイスの501を穿いていた。一緒に古着屋を回ったり、アメリカンロックを聴かされたりするうち、宮川さんにもアメリカ好きが伝染(うつ)った(笑)。店では猫かぶって抑えてはいるが、家に帰ればネオンサインがギラギラだという。
特にバイクに興味を持った。初めて乗ったのはヤマハのTW200。次いでハーレーダビッドソン、96年式FXSTSBスプリンガー・ソフテイル。通称"バッドボーイ"。これを親父に譲って(聞く限り相当に仲の好い親子である)、同じくハーレーの'99XL1200"スポーツスター"に乗り換え、加えてハーレーのリジットショベル('70ストローカー仕様)、そして赤いカブ――正しくは02年式T90Tヤマハ・メイト――の3台に乗っている。
バイク大好きな宮川さん。26歳のとき突如会社を辞めて、北は北海道から南は沖縄まで、ずっとやってみたかったオートバイで日本一周を敢行。その途中、沖縄でタコスなる食べ物と初めて出会う。当時まだ本土ではさほど見かけない食べ物だった。コレは店をやってみたいと思った。
●日本→アメリカ→宮古島
日本一周を成し遂げた後、それでもまだ物足りず、渡米してLAでバイクを購入、カナダ経由でNYへ。そのまま南下してフロリダ、キーウェスト。ニューオリンズでジャンバラヤを食べ、ロスへ戻りメキシコにも足を延ばして72日間全米一周。ハンバーガー食べまくりの旅。後輩を道連れに、野宿したりバーベキューしたりの珍道中だった。
アメリカの旅から戻ると、今度は日本一周の途中知り合った友人から「人手が足りないから来てくれ」と救援要請。向かった先は沖縄・宮古島である。友人は島のマンゴー農家で働いていた。
当初「3ヶ月だけ」という約束で行ったつもりが、自分で作って売るという畑仕事の楽しさにすっかりハマって、宮古島に結局1年。スイカやキュウリなども栽培した。海を見ながら通勤し、上る朝日と沈む夕日を毎日眺めて「これが生きるってことか!」と海を、島を、太陽を、そして地球を堪能し、慈しんだ。ちなみに埼玉は大宮「Burger's Cafe Beach Story」の羽田さんは久米島に1年滞在している。
●Taco Time
タコスの話に戻る――。
やりたいがノウハウ無し。いっそ沖縄に引っ越そうか。でもすぐには引っ越せないし……と思案していたところ、灯台下暗し、都内の家の近所に偶然にもタコス屋があることに気付き、これ幸いとその夜のうちに履歴書を書いて翌日持って行った。そのタコス屋こそがアメリカの有名なタコスチェーン"Taco Time"である。
バイトからスタートして現場一筋、店長として活躍。そろそろ自分の店をやりたいと、都合6年働いて退社した。その間に今日のロコフィに繋がる作戦や戦略の多くを得ている。そして次に働いたのが渋谷の「Reg-On Diner」――宮川さんは人形町の「BROZERS'」で働いていた時期があり、その折に知り合ったのが後にレッグオンダイナーを始める横溝さんだった。
●Reg-On Diner
ブラザーズは雑誌で知った。沖縄でタコスに出会った当時、都内にハンバーガーの専門店はまだ少ない頃だったので、雑誌を読んで「こんなことやってる人いるんだ!」と歓喜した。
横溝さんの下、レッグオンの主要メンバーの一人として腕を揮うが、気長に探すつもりでいた自分の店の物件が一転、早期に決まってしまい、3ヶ月余りで辞めることに。
そして2010年12月26日、ロコフィー念願のプレオープン。スタッフ募集も追い着かず、「働くのはこれが人生初」という甥っ子たち4人を集めての多難な船出だった。「ほんと大変でした」。
物件探しは中央区から。豊洲、日本橋……高いし広いし狭いしで該当無し。居抜き希望で探すうち、いつまでも残っているある物件にふと目が留まった。駅近で格安でどうなんだろう?と現地まで見に行って初めて降り立ったのが、この大森町という駅である。物件の目の前が管理している不動産屋だった。一ヶ月悩んだ末とうとう決心が着いて「やってみるか」。
住んでいる人には悪いが、「用があれば行くけれど、用が無い限りは行かない」場所というのは、でも正直なところ誰しもにあるものである。かく言う私もロコフィが無い限り、大森町の駅で降りる機会はおそらく一生無かっただろう。それくらい「何でまたこんな場所でハンバーガー??」と真顔で訊ねたくなるような条件の場所である。
7坪ちょっと、店内のみ15席の小さな店である。以前はイタリアンが入っていた。残されたカウンターは高さを直してそのまま使い、低い天井も高くした。あまり飾り立てずに、宮川さんの趣味は敢えて抑え目。でも段々と色が出て来た。
●タコス考
当初はタコス屋を考えていたが、タコタイム勤務のラスト2年辺りからじわじわと「ハンバーガーとタコスの店」に計画はシフトする。これこそが宮川さんがタコタイムから学んだ様々な経験の中でも、おそらく最も肝心な部分、いわゆる「肝」である。
アメリカでは人気のタコスがなぜ日本で流行らないのか? という疑問を宮川さんは持つに至る。事実タコタイムは今はもう日本から撤退してしまっている。
自分は確かにタコスが好きである。だが全く知らない人からすればすごく異国な存在、「取っ付き難い」食べ物に分類されるだろう。決して日常的に、頻繁に口にする食べ物ではない。だからどんなに力んでタコスを売ろうとしても、メキシコの「メ」の字を口にした瞬間に退かれてしまう。タコスの「タ」の字も使っちゃいけない。「売る側のこだわりなんて客には関係ない」ということを、タコタイムの6年を通じて宮川さんは知った。
こだわりの無い客を如何に取り込んでゆくか――課題はこれだ。商品の持つ魅力だけをもってして万事がうまく運ぶワケではない。人と人との接点がまずあって、その上に商品がある。「だから売り方ですよね?」。
タコス一本の店では厳しい。だが「ハンバーガー屋にあるタコス」なら、取っ付きがだいぶ違ってくる。問題は如何に心開かせるか……。その点、ハンバーガーは日本中、いや世界中の多くの人が知る、絶大な知名度を誇る食べ物である。タコスで通らなくてもハンバーガーなら通る世界と言うのは確かに在るのだ。そう考えるとハンバーガーは世界の共通語である。
宮川さんがタコタイムで学んだことというのは、タコスの作り方や売り方でなく"考え方"である。すべてお師匠のやり方の通り……と忠実懸命なコピーをするタイプでなく、あくまで宮川さんは「自分を表現したい」人なのである。自己の表現における"自分"の出し方と抑え方とを知った――と言うのがより正確なところだろう。だから面白味がある。
●トマト3枚
バーガー18品。別にチキンバーガー4品。タコス2個¥680はビーフ/チリビーンズ/ソーセージ/アボカドベジー/フィッシュの5種類の具の中から選択。フラワー(小麦粉)のソフトトルティーヤに包んで。ほかにビーフタコライス¥680。そしてもちろんブリトー、ナチョス、ケサディーヤも。カラミティ・ジェーン・バーガーの際反響があった中東の豆料理「フムス」のプレート¥780も好評販売中。詳しくはこちら。
チーズバーガー¥900。ポテト付。パティは120g、豪州産100%。
食べやすい肉で、口の中でポロポロとほぐれるような、やわらかさを持っている。直径が大きい。バンズの大きさに合わせているという。バンズは90gだがボカッと大ぶり。生地の甘味とゴマの芳ばしさが特徴的。
驚くのは野菜の多さである。レタス40g、トマトなんと3枚! オニオンは生のスライス。上から下までズドーンと同じ直径のまま落ちて横に大きい、胴回りの太いバーガーに仕上がっている。その迫力・食べ応えたるや相当。
チーズはチェダーにピザ用のナチュラルチーズとモッツァレラを合わせたトリプルチーズ。パティの上にBBQソース(チリソースとの2択)を乗せて甘味を持たせ、ヒール(下バンズ)に塗ったタルタルとケチャップとの合わせ技により、ソースの味を微妙に変化させている。
様々な味がてんこ盛りに盛られているように見えるが、バンズの甘味とチーズのミルク感がバーガー全体を巧くリードしてまとめ、意外にも食べやすい。強過ぎない塩コショウの加減も食べやすさの理由か。積み重ねの派手さはレッグオンダイナーにも通じるものがあるだろうか。ハンバーガーと言う以上にサンドイッチ的な趣を感じる。量を考えればこの値段はお得!
●「第三の冒険」の幕開け
オープンからの1年が人生の中で一番凝縮した1年だった。
店を開いたことで、やっと自分を表現出来る場が持てた。外に向かって解き放たれるその表現の力と、そして外からかかるプレッシャーと。開放されたと同時に「凝縮された感じ」と宮川さんは心境を語る。
そのプレッシャーに耐えた甲斐あって、最近は一気に調子づいているそうで、特に土日は回り切らぬほどの盛況ぶり。ご近所はもちろん、少し離れた場所からも店を目がけてやって来る人が軒並み増えている。
中ほどに書いたように、大森町は用事や買い物で人が訪れるような場所ではない。ハンバーガーを食べること以外ほかに用事の考えられぬこの場所に、ソレだけを目的にわざわざ人が集まる・足を向ける――これは只ならぬことなのである。
ハンバーガーショップに限らず、都内人気エリアに店が集中する傾向にある昨今、敢えて他に店の無い場所を選んで、イチから勝負する。いや、ゼロから勝負する――それはある種、未開の地を切り拓くかのような冒険に等しい。宮川さんとロコフィの挑戦は日本一周・米国一周に続く、そして難しさと達成感の上でそれらを軽く凌駕する「第三の冒険」に他ならない。宮川さんは常にチャレンジャーだ。
ハンバーガーショップに必要なのは場所では無いことを是非とも証明して欲しい。大森町を「ハンバーガーを食べに行く町」へ――。わかりやすくて覚えやすい店名が秀逸だ。
→ # Locofee [大森町] の大森バーガー
# Locofee [大森町] のハンバーガー
# Locofee [大森町] のロコ パイナップルチーズバーガー
【スタンプラリー#06】 Locofee [大森町] のカラミティ・ジェーン・バーガー
― shop data ―
所在地: 東京都大田区大森西3-25-5 大森西ダイヤモンドマンション1F
京急電鉄 大森町駅歩0分 地図
TEL: 03-6423-0085
URL: http://ameblo.jp/locofee/
オープン: 2010年12月26日
営業時間: 11:30〜22:00(※月曜日〜15:00)
定休日: 火曜日(要確認)