2012年04月16日

# 282 T's★Diner [大阪・高槻市]




 2011年3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

§ §

 今度は日本勢。しかも久々の"西"の店。音楽劇『カラミティ・ジェーン』ハンバーガースタンプラリーではガスバーナーを使ってチーズを炙るパフォーマンスを披露して沸かせた、大阪は高槻のご存知T's★Diner(ティーズ・スター・ダイナー)である。



●高槻

 梅田から阪急電鉄京都本線特急で21分。大阪市内から20km圏。首都圏で言えば同じく都心から20km圏、千葉の船橋辺りに相当するか。高槻市は人口35万5千人のベッドタウンである。


 店主寺川さんはこの高槻に生まれ高槻に育った。小学生の頃からよく料理をやっていた。「これ、人喜んでくれるんとちゃうか?」と、将来店をやりたく思い始めたのはこの頃からである。

 サッカー選手や『刑事貴族』の影響から警察官、ミュージシャンなどにも憧れたが、本命はしっかり外さず、高槻のバーで4年ほど働く。20代のうちから店がやりたくて、開店資金を貯えるべく1年ほど愛知県に出稼ぎに。この遠征の地・愛知に、寺川さんの一生を左右する大きな出会いが待っていたのである。

●K'S PIT

 愛知に3年。はじめ東海市に住み、最初の仕事の契約満了とともに、半田(はんだ)に移った。


 半田と言えばご存知「K'S PIT」である。初めて訪れた際、寺川さんが食べたのはベーコンチーズバーガーにオレオシェイク。スゲエな! 何やコレ? これはヤバイ!! 衝撃的な出会いだった。

 その後もちょこちょこ食べに行った。はじめベンチシートだったのが、やがてカウンターの客になり、店主大村さんと話すようになった。

 ある日「求人載せたいんだけど」と大村さんから相談を受ける。これこそが当時の寺川さんの本業である。「人と接する仕事がしたい」と求人広告の代理店営業をしていた寺川さん、チャンス到来「しめた!」と思い、後日嬉しくて泣きそうな顔をしながら履歴書を持参。まだ募集前の求人に、誰よりも早く応募した。


 以後、平日は広告営業のサラリーマン、土日はK'S PITという二足のわらじ生活に。バイト期間は2年。最後の3ヶ月は毎日みっちり入って主力メンバーとして活躍した。ほとんど休みの無い2年間だったが「好きなことやってるから楽しかった」。

 面倒見のよいことで知られる大村さん。もちろんこの2年の間にさまざまなことを教わり、そして店をはじめるときにはわざわざ高槻まで来て一緒に物件を見てくれた。持つべきものは良き師である。昨夏、名古屋は西区比良にオープンした「BIG BEN DINER」の松本"ベン"さんもK'S PITの出身。

●50'sダイナー

 初めはバーをやろうと思っていた。しかしただでさえ高槻の街にはバーが多い。


 高槻自体、飲食店(と美容室)の数がズバ抜けて多く、人口に対する店の数で言うと全国2位、新宿の次(寺川さん調べ)というくらい、飲食業の激戦区である。そんな飽和状態の高槻で普通にバーをやっても面白くない。将来性が無い。

 そこへこのK'S PITとの出会いがあった。「これやろ!」と決意した。好きなこととマッチしている。だから「長く出来るぞ」と思った。当時ハンバーガーの専門店は近畿・大阪にほとんど無く、行く店に困ってもいたので、自分でやろうかと。

 大阪市内も考えたが、まずは地元高槻でやることにした。友達も多い。友人たちが集まれる店を目指した。2〜3ヶ月探してやっと物件が見つかった。阪急高槻市駅前の飲食店が多い繁華街の一角である。本当はロードサイドの「デカバコ」(大きな店舗)でやりたかった。それを思うと少し窮屈な店ではある。


 説明不要の50年代風アメリカンダイナー。ホームページから受ける印象としてもっと大きな店を想像していたのだが、実物はまさに「所狭し」。ビビッドな色遣いのVバックチェアがそれこそ窮屈そうに、肩身を狭く並べられている。逆に席が埋まれば異様な活気に包まれることだろう。

 入り口すぐ右手のパステルピンクのソファ席は特等席だ。壁に多数のサインボード、プレート。狭さゆえに立体的な造形物が置きにくいのだ。それでもジュークボックスがあるのは立派。

 オープン最初の1年はキツかった。店が明るい、ハンバーガーが大きい……散々に文句を言われたが、それでも自分のスタイルを変えることはなかった。通した。まだ現在のように専門店のバーガーが認知される前の話である。多くの人はアメリカンサイズのハンバーガーを食べたことが無い。本当においしいバーガーあるんだよということが伝えたかった。

●大人のファミレス

 師匠大村さん同様、目指すは「大人のファミレス」。本場米国のハンバーガーを追求し、提供する――それがテーマである。米国のレストランにあるような、本場の料理も取り入れていかなアカンな――100%の店はまだ出来てない。

 その苦心の成果がバーガー類11品(+限定メニュー)、ドッグ2品、サンド7品。サラダ9品。パスタ6品。ライス6品。スペアリブ、サーロインステーキも擁する。オープン当時よりも「めちゃくちゃ増えた」。

 チーズバーガー¥850。ポテト付+100円。スチール製のプレートの上に野菜を外に添えて提供するのはK'S PITの影響。


 パティは豪州産160g。やわらかな食べ口。塩コショウにガーリックパウダーが利かせてあり、食べるうちにちょっとのどが乾く。二転三転の末にやっと落ち着いたというバンズは直径15cm。横に平たい形状。やや硬いカチッとした表皮の上にみごとな焼印。中身の邪魔をしない、すっきりとした食べ口でおいしい。

 濃厚なチーズが好感。「チーズバーガー」と銘打っていながらちっともチーズの味がしないチーズバーガーについて時折議論になるが、このチーズバーガーは面目躍如のチーズっぷりが堪能出来る。

 トマト、リーフレタス、オニオンは生のスライス。ピクルスは甘いスイートピクルスだが、私にはどうも個性(と味の印象)が強過ぎて合わないように思う。全体に塩味の印象が強い。求めるところは「バランス」と寺川さん。

●地域活性"高槻バーガー"

 さて、これらハンバーガーに挟まれしトマト、タマネギ、サニーレタスなどは極力地場の野菜を、地元高槻産の野菜を使っている。


 「ずっと住んでいるのに地元の名物・名産品のことを何も知らなかった」といういきさつから、高槻の食材を"世界"に紹介する取り組みを始めた。

 「このバーガーを食べたら高槻の特産品がわかる」というコンセプトで作られたのが名物高槻バーガーS(175g)¥1,250。総重量525gのLサイズ¥1,850。高槻寒天、高槻トマト、高槻たまご、そして北部・服部地区で獲れる"しろうり"――これら高槻産の食材をハンバーガーを使っている。内容はベーコンエッグチーズ。"しろうり"はピクルスに。1個につき3.9円が福祉事業などに寄付されるという善いこと尽くめだ。

●人に役立つ店たれ

 地域活性バーガーを提案するくらい、寺川さんは視点を「地域」に向けている。地域に密着した愛される店づくりがしたい――「60年通える店づくり」が目標である。


 ダイナーという場はいろんな使い方が出来る。客層もさまざま。その日々無数のお客さんの出入りの中に「人生の流れ」を感じると寺川さんはいう。「例えばあるお客さんが"孫"を連れて来てくれて、やがて孫が結婚すると今度は逆にその孫が、"お祖父さん"に当たるそのお客さんを連れて来てくれるなんて、ステキじゃないの?」

 何が大事か――それは地域と、そして商品愛である。どこまで愛せるか。その結果として愛されるか。次の世代、そしてその次の世代にまでも受け継がれる店、受け継がせたい店を――と寺川さんの思いは壮大にして力強く、迷いが無い。

 食で人を喜ばせる、これぞ天職。己の存在意義を感じると寺川さん。店名の「★」はそのまま「スター」と読む。"寺川星"という名の「星つくるぞ」ぐらいの勢いで命名した。

 星はまだ出来ないが、この春いよいよ次のステップとして大阪市内・キタは福島に、2店目に当たる「HAMBURGER&WINE T's★Diner 福島店」をオープンさせた。祝! 長らく本格的バーガー店不在の地だったキタに待望の1店!! "西"のハンバーガーシーンにとっても重要な出来事である。その活躍に期待したい。



# T's★Diner [大阪・高槻市] の高槻バーガー
# T's★Diner [大阪・高槻市] の高槻寒天BBQソース
# T's★Diner [大阪・高槻市] のミルクシェイク オレオ
# T's★Diner [大阪・高槻市] の高槻バーガーSP
【スタンプラリー#24】 T's★Diner [大阪・高槻市] のカラミティ・ジェーン・バーガー

― shop data ―
所在地: 大阪府高槻市城北町2-11-5 南園ビル1F
     阪急京都本線 高槻市駅歩2分 地図
TEL: 072-672-0721
URL: http://www.ts-star-diner.com
オープン: 2006年10月10日
* 営業時間 *
ランチ:
 平日 11:30〜14:30(LO14:00)
 土日祝 11:30〜15:00(LO14:30)
ディナー:
 平日・休日 17:00〜翌3:00(LO翌2:00)
 金土祝前 17:00〜翌5:00(LO翌3:00)
定休日: 月曜日・第3火曜日(祝日・祝前日は営業。要確認)

2012.4.16 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:56 | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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