2011年3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
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「FATZ'S」はコノ記事の"次"だから、ちょい待ってネ――。
さて先日、友人の付き添いで急遽伊豆に出掛けたのである。途中、昼食をとるため道の駅 伊東マリンタウンに立ち寄ったところ、このバーガーと遭遇。海鮮丼を平らげた直後だったが、「食べてみろ」と友人に強く薦められて、続けて伊豆牛プレミアムハンバーガークォーターポンド¥750を食した。
本来の旅の目的が別にあったこともあり、今回はいつものように時間をかけて店の人に詳しく話を聴くようなことはしていない。以下情報はネットで調べたものばかりである。↑写真の光量不足は陳謝。
結論から言うと、私はこのバーガーを今の日本のプレミアムバーガーシーンを象徴するバーガーであると感じた。「世間にはきっとこんな風にプレミアムバーガーは映っているのだろうな」という、その典型的な例であるように思う。世間一般が思い描く「ちょっといいバーガー」のイメージをカタチにすると、きっとこうなるのだろうと――。
まして都心から100km以上離れた観光地である。ハンバーガーと言えばマックかモスしかないような環境だ。「都内を中心にいまハンバーガーがブーム」という言葉の断片だけは伝わってきても、それ以上詳しい情報も手がかりも無い。ネットや雑誌で画像だけ見て、見よう見まねで「こんな感じかな?」と作り上げたバーガーは、伊東に限らず、他の観光地にもきっとたくさんあることだろう。
今回偶然立ち寄ったコノ店だけをもって「ダメだ」「なってない」と責めるつもりは毛頭ない。コノ店に限った意見・苦言でなくて、広く世のプレミアムバーガー全般に言えることとして、以下読んでいただけたらと思う。コノ店一個でなく全体の話である。それくらいこの偶然出合ったバーガーは、現在のシーンを象徴するような作りだったのである。
マリンタウンはいわゆる道の駅。レストラン・みやげもの売り場のほか、天然温泉、遊覧船にマリーナまである。そのマリーナに面したバザール棟2階に伊豆牛&海鮮レストラン 海辺の食卓がオープンしたのは今年の1月17日。これからがいよいよシーズン本番だ。
さて伊豆牛プレミアムハンバーガー、ハーフポンド225g¥1,300があくまでメインである。クォーター(パティ110g)の様子から見るに、バンズのサイズはおそらく一緒だろう。バーガーメニューはハーフとクォーターの以上2品。
では以下、このバーガーから透けて見えた、昨今のプレミアムバーガーの「勘違い」について書いてゆく。
まずは「肉」の問題だ。店名の最初に「伊豆牛」を、「海鮮」よりも先にまず「伊豆牛」を謳っているワケである。伊豆牛はこのバーガーの押しであり、売りであるワケだ。伊豆牛についての説明はこちらなどを見ていただければと思う。
ブランド牛かも知れない。希少価値が高いのかも知れない。そこまでは解かった。もし味に自信があって、ぜひその味を堪能して欲しいと思うのなら、こんなにも大量のテリヤキソース(推定)をかける必要は一切無い。強烈なテリヤキソースのおかげで肉の味なんてまるで判らなかった。
ショウガ味の利いたソースの味に強く支配されて、食感でしか肉の存在感が確かめられない――そんな状態だった。「伊豆牛」で売っておきながら、自らそこにソースをしこたまかけて、自慢の肉の味を殺してしまっているのである。
これは日本人の牛肉に対する勘違いの典型だと思う。「肉の味を」というなら、少なくとも素材自体の味が判断できる状態、さらに言えば、素材の味を最大限に引き出し・引き立てる状態で提供すべきである。昨今のバーガーは大量のソースや調味料で味を作り、ソノ味で食べさせる傾向にあると思う。
これはハンバーガーに限った話ではない。焼肉も然り。タレにたっぷりと浸し、肉の味よりタレの味で肉を食べる。ラーメンも一緒で、激辛だとか背脂たっぷりとか、ドギツイ味であるほどその場の「食べた」感は得やすいし与えやすい。だからその一瞬の、刹那のインパクトを求めて濃い味・強い味に向かってゆくのだろうけれど、しかし食の本質的なおいしさというのはそこではない筈だ。
まして「素材が」「銘柄が」「地産地消が」と謳っているのだから、全国どこでも味わえるソースのもとにそれらすべてを殺し去ってしまう意味がどこにあるだろう。これは料理全般に共通して言える話である。
なのでソースをかければプレミアムバーガー、これは間違い。
強烈なソースのおかげで味についてはさっぱり判らなかったものの、ふわっとやわらかく、やさしく、食べやすいパティだった。それについては悪くない。パン粉や玉子など「つなぎ」が入っていたかも知れないが、ソースで判らなかった。
またケシの実付きのバンズも、ふかっとソフトな生地で、パティのやわらかさ、アボカドのクリーミーさと食べ口がよく合っていた。こんなバンズが各地で手に入るようになったのも、ここ5〜6年の間の大きな進歩である。
トマトとレタスは新鮮さは伝わるが冷た過ぎるのが難。上からフレンチドレッシング系の酸味の強いソース。これもかかり過ぎ。基本的に日本人は調味料過多である。そんなに味を付けないと食べられないものだろうか。
食後は口の中がすっかり甘辛。追い討ちをかけるように添えられたピクルスも甘いので、味覚が変になる。クリーミーなアボカドはこの甘辛味には合っているが、見た目の上でイマドキっぽく見えるという理由から入れているような気がしなくもない。「アボカド=今風」という暗黙のルールは存在するように思う。
ポテトはシューストリング。フォークとナイフが付いてくる辺り、昨今の「食事」バーガーを意識してのことだろう。肉の質は粗挽きの噛み応えという感じではなく、良く言えば上品。決して悪いものでは無さそうなので、やはり肉そのものの味が知りたかった。
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「プレミアムバーガーのこれから」で挙げたように、「彩りのあざやかさ」や「華麗なソース使い」、そしてこのバーガーの場合は高さよりも225gというパティの「迫力」が、すなわち「プレミアムバーガー」だととらえられている節がある。コノ店に限った話でなく、一般的にそういう理解なのだろうと思う。
しかしそれは誤りである、と私は言いたい。
打ち上げ花火のような一瞬のインパクト・刹那の満足を求めるためだけのそうした方向性には、その言葉のとおり持続性が無い。長続きがしない。その刺激に飽きたらおしまいである。飽きたらまたそのとき流行りの別な食べ物に目を向け、乗り換えてゆくのだろうか。
それでも構わない。が、特にコチラの店の場合、地元自慢の「伊豆牛」を手軽においしく食べる食べ方のひとつとして、まさに打ってつけな「ハンバーガー」という食べ物にめぐり合い、あえて挑戦し、取り組んでいるワケである。
単に流行り廃れの判断だけで、手軽に牛肉を楽しめるハンバーガーという馴染み深い料理の芽を無くしてしまうよりは、長く愛される良いモノをしっかりと考え出して、伊豆牛の良さ・おいしさを端的にアピールできる真の意味での「名物」を作り上げる方が、銘柄牛を売ってゆく上ではるかに意味のあることだろうと私は思う。それは刹那々々の「売れ筋」を考え出すのとはまるで質の違う、次元の違う作業である。
見た目やカタチだけで合わせにかからないで欲しい。ハンバーガーはソースや調味料の味で食べる食べ物ではない。「肉」の味を味わうための食べ物、楽しむための食べ物である。
― shop data ―
所在地: 静岡県伊東市湯川571-19
「道の駅 伊東マリンタウン」バザール棟2階
JR伊東駅から東海バス「マリンタウン行き」約5分 地図
TEL: 0557-29-6111
URL: http://www.ito-marinetown.co.jp/
オープン: 2012年1月17日
* 営業時間 *
平日: 11:00〜21:00(LO20:30)
土日祝: 9:00〜21:00(LO20:30)
※季節により変更する場合あり
定休日: なし(要確認)
地元で、伊豆牛の食したことのある自分からすると、和牛と洋牛のいいとこどり(なんだそうです)のお肉で作ったバーガーの味はどんなだろうとワクワクしてしまうのですが、どうやら食せる場所はまだないみたいですね。残念。
> gamme 様
いつもありがとうございます。
ま、「ものの伝わる過程」での勘違いや錯誤はつきものだとは思うのですが、その結果大きく変容したものが定着してしまってもね、違うかなと思いますので。単に「おいしい・おいしくない」「口に合う・合わない」という好みを超えた部分での判断も必要かなと思っております。
繰り返しますが、日本全国どこにでもある話と思って下さい。もちろん都内にも。