2011年11月03日

# 275 BIG BEN DINER [名古屋・比良]




 3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震、ならびにその後も起き続ける余震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

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 去りゆく店あれば、新たに"くる"店あり――9年間の営業に幕を降ろした岐阜「Sekky's Diner」に東海・近畿の5店が集結したその後、滋賀の「AUNTY-MEE burger」さんとは岐阜でお別れ。「K'S PIT」大村さん先導のもと、「KEN DINER」さんと大阪・高槻「T's★Diner」さんの残る3店で向かいたるは、名古屋市は西区比良(ひら)に今年2011年8月にオープンしたばかりの"new comer"、BIG BEN DINER(ビッグベンダイナー)。


●比良の街角

 「T's★Diner」の寺川さん、「KEN DINER」の佐藤健(たけし)さん、そしてコノ店のオーナー松本さんは、いずれも「K'S PIT」大村さんの下ではたらき、薫陶を受けた、言わば「卒業生」同士。ま、「ファミリー」ですよ。K'Sファミリー。↓はそのファミリーでベンチシートを占拠の図。


 大村社長、松本さんに対してはオープン前からさまざまな助言・協力をしてきたそうですが、この日はファミリー引き連れてツーリングがてらの陣中見舞いといったところ。8月19日のオープンからちょうど2ヶ月目のことでありました。

 店のある比良の一帯は名古屋でもやや郊外。7、8年前までは地元の商店街もそれなりの活気を呈していたが、上小田井(かみおたい)駅歩5分の距離にショッピングモール「モゾ」が出来て以来(正しくはリニューアル)、流れをすっかり持って行かれてしまった。

 主要な幹線道は宿敵モゾの面する県道302号や41号。本当はそうしたメインストリート沿いに出したかったが、結果的にはやや引っ込んだこの場所を選んだ。落ち着きがあってよいと思う。距離で言うと比良駅の方が近いが、ただし1時間に1本の運行状況。

●アズサ

 それでもずっと探していた角地を獲得。なかなか物件が見つからず、松本さん自身懸命に探し回るうちにシャッターの閉まったコノ場所を発見。とりあえず上階のマンションの管理人づてに聞いてもらうと、空いてる……という流れは以前こちらで聞いた話とよく似ている。

 内装はK'S PITの常連さんが作業。カウンター、テーブルなどの寸法はK'S PITと同じである。「通りに面して並べたかった」ソファは深紅。フロアは白と金色のチェッカーズ。ポップで刺激的な50'sダイナーである。


 オーナー松本さんは店のある比良よりさらに北に上がった岩倉市のご出身。「もっと自由人になりたい」と4年続けた仕事を辞めて、バイクで全国を放浪した。

 アメリカはロサンゼルス近郊、アズサ(Azusa)という街へ短期の語学留学をした際にハンバーガーと出会う。このときホームステイ先のベッドの上で「将来何やろう?」と思いをめぐらし、「ハンバーガーなんて面白そうじゃないか?」という考えがふと浮かんだ。。

 帰国後、中学の後輩で、のちにビッグベンダイナーを一緒にやることになる相棒に「好きそうな店がある」と連れて行かれたのが、ご存知半田の「K'S PIT(ケーズピット)」。これが運命的な出会いとなった。

 K'S PITで「はじめてダイナーを知った」という松本さん。この世界のカッコ良さに一気に開眼した。ちなみにこのとき頼んだのはベーコンチーズバーガーとバナナシェイク。

●二人のケンタロウ

 後日電話してみると「ちょうどキミみたいな人を探していた」と面接に呼ばれ、即採用。店の近所に部屋を借りるべく、松本さんは即不動産屋へと向かった。


 K'S PITには2年8ヶ月。オーナー大村さん(通称「ケン」さん)には塩の振り方に始まりカルチャーから音楽まで、あらゆることを教わり、影響を受けた。

 そして「ウチを超えようと思ったら、もう1軒、いちばん下積みからやれ」と言い放たれて、その「2店目」の修業先を探していた頃に、私は松本さんと会っている。内海の海水浴場にて

 大のバイク好きである松本さんは、京都の「HOT CHOP(ホットチョップ)」を選んだ。


 面接に向かうも中野オーナーから「本当にやりたかったらもう一回来い」と後日の再面接を言い渡され、さらに紆余曲折を経て、住み込みで働くことに。

 昼はお好み焼き屋でアルバイト。この昼のバイトで奇しくも鉄板上の「さばき」を身に付けることになる。

 HOT CHOPには10ヶ月。オーナー中野健太郎さんはいま最も注目されるバイクのビルダーのひとりである。K'S PITの大村さんも名前は憲太郎――。中野さんが「おやじ」なら大村さんは「社長」であるという……お二人もまだお若いですが(笑)。

 二人の「ケンタロウ」の背中を見て育った松本さん。いよいよ自分の店を持つときがやって来た。21歳のとき決意して、予定通り28歳での夢の実現である。

●自家製バンズ

 バーガー類12品、ドッグ3品、トルティーヤで巻いたロール4品。パスタ5品。ごはんもの6品。K'S PITの血を引くだけあり、ステーキやスペアリブも擁する品揃え。

 HOT CHOP中野さんから「名古屋に持って帰れ」と言われたメニューマニアBURGER\1,000。HOT CHOPで覚えたパン作りの経験を活かした、自家製パン(「バンズ」と呼んで欲しいところ)による1日20食限定。

 当初全バンズを自家製でまかなう予定だったが、生産が追い着かず、このメニューのみに絞った。HOT CHOPではパティはブロック肉から自家挽きしていたが、さすがにそこまでは断念。


 バンズ140g。セサミを乗せた丸くドームを描くバンズで、焼き色濃く、それをさらに「よく焼き」にしてカリカリにして出す。酵母の甘味がプンとにおい、ガチッと硬め。どうしても生地の弾きが弱いのが自家製ゆえの難しさである。他のバーガーに使っているバンズはK'S PITと同じもの。クラウン(上バンズ)裏にマヨネーズ。

 パティはオージービーフ、130g。一度挽き。食感を良くするため中に少量のタマネギ、そしてナツメグ。チーズは2枚。ネトッとしたおいしさ。レタスも2種類。上にサニーレタス、下に折り畳んだ玉レタスを使い、シャキッとした食感を出している。オニオンはグリルド。

 オリジナルペッパーソースが肉の味を引き立てるシーズニングの役割。このはたらきにより「肉」の存在感が増しており、味わいに「芯」が生まれている。見た目ばかりでなく味の上でも立体感のある造り。

 師匠二人の良さを取り入れ、かつうまく整理がなされている上に、何より、松本さんが楽しげに作っている感じがよく伝わってくる。キラキラとした魅力の光るバーガー。ただ、この味の構成ならピクルスはスイートでなくディルだろう。

●ビッグなベンに

 K'S PITとHOT CHOP、二人のケンタロウを師に持つ期待の星。お向かいの「台湾ラーメン 光陽」がまた名の知れた人気店で、キャリアの上でもちょうど良いお手本・鑑となる存在をご近所に持つこととなった。つくづく松本さんは周りに恵まれている。

 店名は松本さんの愛称「ベン(勉)」から。本家ロンドンのビッグベンは傾きが顕著だというが、名古屋のビッグベンは直立不動。真っ直ぐ立って迷い無し!

 BGMはおなじみの50'sヒッツ。自分の名前に掛けて「ベンのテーマ」とかありますよ。




# 208 Junk Food Parlor HOT CHOP [京都・長岡京]
# 184 K'S PIT [愛知・半田]

― shop data ―
所在地: 愛知県名古屋市西区比良3-146
     名鉄犬山線・地下鉄鶴舞線 上小田井駅歩10分、
     東海交通事業 比良駅歩9分 地図
TEL: 052-982-9654
URL: http://big-ben28.blogspot.com/
オープン: 2011年8月19日
営業時間: 11:00〜15:00, 17:30〜24:00
定休日: 月曜日(祝日営業、翌日休。要確認)

2011.11.3 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 19:19 | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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