2011年09月29日

# 272 FEEL BURGER [埼玉・川口]




 3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震、ならびにその後も起き続ける余震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

§ §

 埼玉編、これで最後です。川口のもう一軒の店、FEEL BURGER(フィールバーガー)――実にシンプルなネーミング。


●キューポラ

 そう、川口と言えば『キューポラのある街』である。吉永小百合主演、1962年公開の日活映画。キューポラとは鉄の溶解炉のこと。江戸時代より川口は鋳物産業が盛んだった。

 そういう意味ではTity Dinerの星丘シェフが使うグリルパンも、実は地元川口産だったりすると、いいストーリーになるんだけど(笑)。

 というワケで↓の写真にある「川口陸橋」とは、映画のラストシーンに登場する、京浜東北線を跨ぐ橋のことである。渡っときゃ良かったな……後悔。


川口陸橋下




 検索すると、『キューポラのある街』のロケ地「新旧比較」といったサイトが出て来るが、まぁ〜風景の変わったこと!変わったこと!昔は空が広かった〜!大宮Beach Storyの羽田(はだ)さんの言うように、確かに都会はセカセカしている。と言うか、エライ「せせこましく」なったよね。映画から50年後の現代は。モノがあふれて便利にはなったが。

 wikiによれば1960年代以降、川口は急激な都市化が進み、鋳物工場は相次ぎ移転。その跡地にマンションが建設される傾向が続いている。ということで林立する高層マンションの姿が、現代の川口の象徴といったところ。「川口市の人口の約2割がマンション居住者」とwikiには書かれている――さぁ、ここで登場するのがFEEL BURGER!


●デリバリー&テイクアウト

 店構えを見てのとおり、デリバリーとテイクアウトがメインの店である。確かにこれだけマンションの多い土地柄であれば、デリバリーの需要というのは十分に考えられよう。

 そごうの裏手、川口銀座商店街(樹モール)のもう一本向こうの通りにあるコノ店を中心に、半径2.5kmが配達エリア。注文総額1,500円から配達OK(+200円の配達料)。

 昨年2010年9月1日オープン。当初はテイクアウトの方が多かったが、その後デリバリーが増え、今では半々くらい。店内かろうじてカウンター4席。中で食べてゆく人は1割。そのほぼ全員が常連さん(笑)。カウンター越しにあれこれ会話もするそうで。


●ブラザーズ

 見てのとおり、完全デリバリー仕様の巨大なキッチンだが、コレにはワケがある。オーナー陳興華さん、通称"ケンさん"は、東京は日本橋人形町の超名店BROZERS'に5年勤めた、この道のベテランである。

 ブラザーズと言えばデリバリーテイクアウトの専門店をそれぞれ構える、大所帯。ケンさんは特にデリバリー店の中心的存在として活躍していた。

 上海のご出身。日本には8年。川口に住んで4年になる。


 2003年、当初は美容師を目指して日本に留学したものの、学費が高く、アルバイトをして稼ぎ出すほかなかった。ハローワーク(!)でブラザーズの求人を見つけ、応募。採用。オーナー北浦夫妻には、公私にわたり本当にお世話になったという。

 入った初日、日本語ができないにも関わらず、いきなりホールを任されるが(笑)、以後はキッチン。とにかく仕事が早いことで有名で、ケンさんが叩き出した"肉の仕込み10kg"のタイムレコード「17分51秒」は、いまだに破られていない。

 一時やめていた時期もあったが、のべ5年ブラザーズに勤務。デリバリー店のキッチン長、後に副店長に昇進、新人・後輩の指導にも当たった。


●バーガー41種、ソース7種

 川口駅周辺での出店を考えたが、やはり駅前の家賃は都内並み。行田cafe easylandの澤田さんが「だったら埼玉飛び越して都内で勝負したい」と言っていたのは本音だろう。


 ケンさんも物件探しに苦戦。ようやく見つけた今の場所も、既に申し込みが入っていた。ところが「キャンセルになった」と友人(たぶん不動産業)から知らせがあり、即申し込み。

 バーガー類41種類は本家ブラザーズ越えの圧巻。オリジナルなメニューとしてレッドワインアップルバーガー\1,000、エリンギバーガー\800などを挙げてくれた。ブラザーズの「ロットバーガー」に当たる最高位バーガーはフィールバーガー\1,300。ソースもブラザーズ越えの7種類から選ぶことができる。

 基本のチーズバーガー単品\850、フレンチフライ、オニオンリング、ピクルス付きのセットで\1,000。この辺の構成もブラザーズと一緒。

 パティは110g。豪州産牛に和牛の脂のミックス。脂分多くやわらか、口の中でよくほぐれる。バンズは地元のパン屋に依頼。やはりブラザーズに通じる、少しドライで表皮(クラスト)がカリカリ砕ける、軽めなバンズである。


 あとはキレイに折り畳んだレタス、ご覧のとおりの美しいトマト。オニオンは生のスライス、とろけるチェダーチーズ、多めのマヨネーズ、ガリガリに振ったコショウ。そして伝家の宝刀バーベキューソース。

 ブラザーズを象徴するソースであるが、本家とは味が「少し違う」とケンさん。確かに本家より塩味が弱く、ライトな甘味が効いている。そうした違いはあるものの、大きく見れば人形町の本家と同じ線上にあるバーガーであると言えよう。言い換えるなら、「人形町のアノ味が川口で食べられる」ということになる。しかも見た目の美しさ、ガツンとインパクトある味わい……一切の迫力とクオリティを落とすことなく。折り紙付きのおいしさ。


●5年で上海

 あえて要望を挙げるなら、順番としてはデリバリーよりレストラン(イートイン)の方が先だったろう。レストランで食べてハンバーガーのおいしさを知った人が、デリバリーする――のが自然な流れだと思う。


 と言うのは、川口の人たちの多くはまだ知らない筈なのだ。一個千円もするプレミアムバーガーの存在を。存在以上にその楽しみ方を。

 『キューポラ』冒頭のナレーションにもあるが、東京と川口、川一本隔てるだけで物価も価値観も、いろいろなことが自ずと違うのである。都内だからこそ、何となく認知されているのであって、神奈川でも千葉でも、「一個千円」はいまだに驚かれるし、食べる以前に店の入り口で引き返される値段なのだ。

 なのでイチから――ファストフードとは違う、ハンバーガー専門店「ならでは」のおいしさと楽しみ方を――イチから伝えてゆかねばならない。


 だからこそ、最初はマンションの一室でではなく、カッコいいレストランの店内で、にぎやかなアメリカン雑貨やアンティークに囲まれ、ゴキゲンな音楽を聴きながら、ときに明るく陽気な店員と言葉を交わしつつ……そんな環境で食べて欲しいと強く思うのである。

 ずばりハンバーガーは「雰囲気」の食べ物である。そうした店の中の雰囲気ごと、シチュエーションごと、ぜ〜んぶまとめて「ガブーっ!」とかぶり付くのが、ハンバーガー「ならでは」の醍醐味だろうと私は思っている。

 なのでもう少し落ち着いたら2号店として、イートインができるレストランを開くことをケンさんにはリクエストしたい。川口にもっともっとハンバーガーのおいしさを広め、ファンを増やしていっていただくべく――。

§ §

 聞けば上海にも、こうしたプレミアムなハンバーガーを出す店がいくつかあるそうである。しかし「どこもダメ」……そりゃそうだ。こっちは天下のブラザーズでバリバリ働いてたんだから。比べたらいかんでしょ。

 と言うワケで故郷に錦――上海への出店目標は「5年以内」と、若きケンさんの夢は万里の彼方どこまでも尽きない。




― shop data ―
所在地: 埼玉県川口市栄町2-1-5 パルクヒサダ1F
      JR京浜東北線 川口駅歩6分 地図
TEL: 048-257-0171
URL: http://feelburger.com/
オープン: 2010年9月1日
営業時間: 11:00〜21:00LO
定休日: なし(要確認)

2011.9.29 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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