2011年09月22日

# 267 THE BEAT DINER [日比谷]




 3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震、ならびにその後も起き続ける余震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

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 『MONOQLO (モノクロ) 2011年8月号』の「ハンバーガーランキング100」から派生して、一都三県24店のベッカーズ(Becker's)を展開するジェイアール東日本フードビジネス、通称JEFB(ジェフビー)が2009年にオープンさせた"一点物"のアメリカンダイナー、THE BEAT DINER(ザ・ビートダイナー)のご紹介。幹書房『THE BURGER MAP 首都圏版』にも載ってます。


 あれ? 既に紹介しているものと思ってたけど……という読者もおられよう。実はオープニングに取材して以来、ちゃんとした記事を上げていなかったのである。今回ベッカーズの、特に「Gバーガー」開発の経緯から、コノ店の存在にあらためて注目してみたい。

●高架下

 ご存知、晴海通り沿いのガード下に在る店。かつてはベッカーズ日比谷店だった。キャッチコピー(特撮ヒーローものなら戦闘シーン前の"名乗り")は「ハートに、ボディに、ガツンと響く『BEAT』の効いた『アメリカンダイナー』登場!」。

 「BEAT」とは高架上を走る列車の通過音でもある。店の真上は京浜東北線か、はたまた山手線外回りか……音だけで車両を言い当ててみよ。鉄道ファンにもオススメの一店。

 薄暗いガード下に、赤レンガの倉庫風なファサード……ソソられる店構えである。レンガ壁に描かれたバーガーはイラストレーター佐々木悟郎氏の作。

 店内は限られた狭い空間をむしろ巧みに「味」に置き換えた、いかにもガード下らしい空気。壁を飾る70年代の名盤・定番の数々。BGMもわかりやすく、無条件にノレちゃう70'sヒッツがノンストップ。


 "一点物"と書いたが、事実、コノ店を他店舗展開する予定は無いという。そうした意味ではJEFB内でも特異な存在だろう。

 がしかし、当時プロジェクトリーダーだった白根氏は、ビートダイナーとそっくり同じ店を2店3店と増やしてゆくことは可能であり、店舗設計もマニュアルもオペレーションも、そこまで考えて作ってある――と語る。外食産業に身を置く者としての矜持たる部分だろう。展開の予定は無いが複製は可能――それがビートダイナーである。

●「G」の遺伝子

 コノ店を語る上で、ベッカーズの「Gバーガー」について触れぬワケにはゆくまい。


 2007年12月、ベッカーズは粗挽き200Gバーガーを発売。「旨さの衝撃」と銘打ってデビューしたこの新メニューは、「自分が食べておいしいハンバーガーがつくりたかった」という、開発部グループリーダー毛涯(けがい)氏の思いに端を発して誕生した。

 パティ200g。出来上がりまでに10分を要する、ファストフードチェーンとしては型破りな、前例を見ないバーガーの開発にあたり、毛涯氏が辞表を三通用意して臨んだという話は、今や社内の伝説になっている(笑)。

 ミートパティづくりに1年半。産地・部位のみならず牛の品種までを指定、超粗挽きに細挽き肉を合わせてつなぐ方法を採用した。冷凍でなくチルド(冷蔵)から焼くことを検討し、各店の厨房で扱えるようパティを1枚ずつ個包装。さらに各店から店長を呼び集め、焼き方の講習と試験を実施。「Gバーガーマスター」取得者のみが作ることができるルールを設けた。


 こうした入念な準備に基づきスタートしたGバーガーであるが、好意的な意見が寄せられる一方、焼き上がりまで「10分」という待ち時間の長さ、とても200gも食べ切れないといった苦情(のちに150gに減量)、パティ内部が薄赤いことに対して理解が得られないなどの声が上がり、また煩雑過ぎる調理工程に根を上げる店舗が相次いで、ついに2年で幕を下ろす。Gバーガーはファストフードのオペレーションにハメ切ることの出来ない、限界のあるバーガーだったのである。

 しかしそうしたGバーガーの成果と反省の中から、二つの新たな道筋が生まれている。片や100gにサイズダウンした粗挽きパティとしてベッカーズのレギュラーメニューに引き継がれ、そしてもうひとつの道がコノ店である――ビートダイナーはGバーガーの遺伝子を受け継ぐ店なのである。

●評判のバンズと16mm

 粗挽きパティの出来の良さに比べ、「バンズが弱かった」との反省から、当代きっての名職人「峰屋」にバンズを依頼。評判のバンズと16mmの超粗挽きパティ、さらにバランスをより重視した、Gバーガーをソフィスティケイトさせたものが、すなわちビートダイナーのハンバーガーである。

 ハンバーガーメニューは圧巻の24品(非バーガー含む)。当初50種類ものメニュー案があり、それを絞っての24品である。サンド4品。ホットドッグは無し……が、昨年東京駅グランスタダイニングにオープンした「東京DOG」が目下大人気と。「天使」とか「悪魔」とか、ド派手な目玉メニューもさることながら、トッピングに注目……ン? 焼きのり¥100? (白根氏のご発案らしい)。

 昼はランチセットが好評。夜は近隣のサラリーマンの飲み処として機能している。ガード下という場所柄、この一帯は飲み屋の激戦区である。八百八町登運とん(とんとん)、居並ぶライバルに対抗すべく唐揚げ、ジャーマンポテト、ポテトサラダなど、ディナーメニューはアメリカンからかけ離れてしまっている点がやや残念。極めつけは……ン? ポッキー¥290?


 さて久しぶりのチーズバーガー¥900。バンズは峰屋の酒種天然酵母。肉は豪州産120g、自慢の粗挽きパティ。ガス火のグリドルで焼いている。はじめの数口は、このバーガーの「ねらい」である肉らしさがはっきりと感じられるのだが、食べ進むにつれ徐々にバンズの主張の方が強くなってくる。もう少しバンズを殺した方が良い。

 「肉の旨味をいちばん引き立てる」オニオンはグリルド。レタスとトマトの間にスイートレリッシュ。ヒール(下バンズ)の上にタルタルソース。↑冒頭の画像を見てのとおり、目に見えてマヨネーズが多い。食べ口を滑らかにしてさえくれれば役割としてはOK、別にその味で食べる食べ物でもないのだから、つまりコレは多過ぎ。

 全体にはレリッシュの味を中心に甘目にまとまっている。最大・最強の武器たる粗挽きパティの威力よりもバランスを重視させた、Gバーガーのソフィスティケイテッド版。

●開発者の思い

 「企業」であるがゆえの制約も多いが、その枠組みの中で「出来るベストの表現をしてゆきたい」と毛涯グループリーダー。ファストフードの常識を覆す「200G」を世に送り出した、型破りな開発者の「思い」が伝わる店である。

 ところで――。カウンターの両端2ヶ所を跨いでるパイプ……アレ、中を何が通ってるか知ってます? あぁ、赤いバルブをひねったらいけませんよ。




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【最新情報】 本日6月24日、日比谷に「THE BEAT DINER」がオープンしました

― shop data ―
所在地: 東京都千代田区有楽町2-1-13
     JR有楽町駅 日比谷口より徒歩3分、
     東京メトロ日比谷線 日比谷駅A1・A4出口歩1分ほか 地図
TEL: 03-3580-7510
URL: http://www.jefb.co.jp/
オープン: 2009年6月24日
* 営業時間 *
平日、土曜: 11:00〜23:00(LO22:30)
金曜: 11:00〜26:00
日祝: 11:00〜22:00(LO21:30)
定休日: なし(要確認)

2011.9.22 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:47 | TrackBack(1) | チェーン店のスピンオフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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ハンバーガー ザ・ビートダイナー (THE BEAT DINER)@日比谷
Excerpt: 東京都千代田区日比谷の ザ・ビートダイナー で ハンバーガー を食す。 最寄り駅は東京メトロ銀座駅。 A1出口から徒歩2分ほどの場所にある。 2009年6月24日にオープンのJR高架下にある..
Weblog: 大豆の気持ち。
Tracked: 2011-10-24 00:02