3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震、ならびにその後も起き続ける余震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
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当サイトは一応、読者は全国(と言うか全世界)という想定なので――なので間違っても飲酒や賭博を自慢しないことネ。全世界に向けて(笑)――読みの難しいであろう地名には、なるべく「よみがな」を振るよう心がけている。その"難しいであろう"という認識が少々難しくって、その土地に長く暮らし、日々生活している住人の感覚では思い至らぬ部分でもある。
たとえば。関東南部の人にとって「鵠沼海岸」と聞けばどこのことだか、ほぼ当たり前のように解るが(書けずともネ)、しかし他の地域に住む人が「くげぬま」と読める確率は、相当に低くなる筈である。そもそも「くげ」と呼ばれる鳥が日常身近に居るワケでもなく、日本語PCで「くげ」と打っても「鵠」とは変換されない。つまり鵠沼という地名固有の読み方なのである。ちなみに「鵠」とは白鳥のことで、「こく」「こう」、あるいは「くぐい」などと読む。若干京極夏彦タッチ……(笑)。
さて、中央線の国分寺駅と立川駅の間で「国立(くにたち)」と……最早"古典"の域のネタながら、それでもきちんと「よみがな」を振っておかねば間違える地名である――「くにたち」です。
東京都西部、内陸、北多摩。最近人気の武蔵野台地の一角、「国立(くにたち)市」に今年5月にオープンした、国立初のハンバーガー専門店の話――その名はCafe La Fresca(カフェ ラ フレスカ)。
●国立
くにたち――国分寺と立川の間のベッドタウンである。文教地区、学園都市といった呼び方をされることもある。一橋大学があり、かつては国立音楽大学があった(附属の幼・小・中・高は国立)。
南口に有名な大学通りが、南武(なんぶ)線の谷保(やほ)駅前まで一直線に延びている。春はさくら、秋はいちょうの並木が有名。都内では「原宿駅舎に次いで、現存する2番目に古い木造駅舎」だった旧国立駅舎も有名だったが、今はどうしようもない仮設駅舎に変わっている。
閑静な高級住宅街である。客層は学生よりも地元のマダムが多い。また横田か福生(ふっさ)辺りからか、案外と外国人客も多くやって来る。生活圏としては立川に近い。
●テラス付きの店
オーナー大原さんは長く音楽業界に身を置く人である。本業はアーティストのマネジメントで、かつてはソニーミュージックに勤務。CHARA、Crystal Kayなどの国内有数のアーティストを多く手がけた。
そんな大原さん、2003〜2004年ごろ、中央線の中野や高円寺(こうえんじ)に「ザッツバーガーカフェ」ができた当初よりハンバーガーに注目し、世の中に先駆けて愛食していたひとりである。そしていつか自分でも「こんな店がやりたい」と、音楽業のかたわら密かに思い続けていた。
「広めでテラス付きの物件」を条件に探すこと1年、やっと見つけた店が国立のこの場所。駅の南口から南西に延びる道路のひとつ、富士見通り沿いにある。商店の連なる道の途中ではあるが、駅から7、8分はあるだろうか。ひとしきり歩く感じである。すぐ近くに一橋大学。
以前はフレンチレストランだった。居抜きをハンバーガー「カフェ」に改装。夜はカフェバーを目指す。正面左にテラス。ターコイズブルーのタイルを貼った丸テーブルが印象的。テラス6席、店内40というゆったり落ち着ける、広い店である。最奥にオープンキッチン。これもなかなかカッコ良い。その手前にソファ席とカウンター席。BGMもゆったりジャズヴォーカルなど。レジ下にウーファーが埋まる変則スピーカーは、BOSEのAM-5 III。
●和牛と峰屋
メニューはハンバーガー13品、そしてチキンを使ったメニュー1品。ほかにサンド4品、カレーなど。夜はスペアリブなども食べられる。
ハンバーガーR¥950。パティのサイズによりスモール(S)とレギュラー(R)があって、Rは120gだが、Sは80gと小ぶり。これは女性客に配慮したサービスである。和牛100%。部位指定。厚みのない薄いパティで肉質は硬め。バーガー全体を通して、噛み応えにおいて強く印象を残すが、一方で和牛という言葉から想像される、丸くやわらかな味わいとはイメージを異にしている。「少量で高効率」という感じの存在感の強さ。グリドルで焼いている。
バンズはなんと東新宿のご存知「峰屋」。大原さん宅まで配送してもらい、自宅から国立までは大原さん自ら運んでいるという。オーソドックスな酒種天然酵母バンズである。ふわっとやわらかな甘めな生地で、特にハンバーガー云々関係無く、広く日本人が好むタイプである……が、もうちょっとカリッとしたエッジやアクセントが欲しいところ。峰屋の社長も言っているが、なにしろ「食感は大事」である。
パティの上にタルタルソースと隠しで少量のバーベキューソース。ヒール(下バンズ)にバターとマスタード。シュレッドしたオニオンがおいしい。全体にはよくまとまり、2011年現在の東京のハンバーガーシーンを忠実に反映した一品と言える。
●究極の目標
ただ、この高さで竹串刺すのはどうかと……。
国立市と言えば、日本の外食産業において記念すべき発祥の地でもある。1970年7月7日、ファミリーレストラン「すかいらーく」1号店・国立店がオープン。所在地は東京都府中市西府町だが、店名は「国立店」である。最近では農家の台所が国立を拠点にして店舗を広げている。今も昔もファミリー層が多く、外食が盛ん、といった土地柄であるようだ。
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そんな国立に初めて出来たハンバーガー専門店である。ファストフードとはひと味もふた味も違う、ハンバーガーの新たなおいしさを伝えてゆく。究極の目標は「東京中から食べに来てもらえる店になること」とオーナー大原さん。オープンから3ヶ月が経ち、次はどういう「色」を出してゆくかという段階に差しかかる時期である。
店名「fresca(フレスカ)」とは、スペイン語・フランス語で「フレッシュ」の意。あえて英語を持ってこなかった一風変わったカフェの、これからに注目したい。
― shop data ―
所在地: 東京都国立市中1-14-4-101
JR国立駅歩7分 地図
TEL: 042-505-7344
URL: http://la-fresca.p1.bindsite.jp/
オープン: 2011年5月18日
* 営業時間 *
平日: 11:00〜15:00, 17:30〜22:00
土日祝: 11:00〜22:00
定休日: 火曜日(要確認)