3月11日金曜日に発生した東北地方太平洋沖地震、ならびにその後も起き続ける余震におきまして被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
※以下の取材は、2月の下旬におこなったものです。震災等の影響により、アップが大幅に遅れました。
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また間が空いてしまったが、新しい店の紹介である。場所は横浜市南部、金沢区。金沢文庫(かなざわぶんこ)というところ。
●金沢文庫
「金沢文庫」とは何なんですか――という人のためにコチラ。なるほど、歴史的に取り扱う場合は「かねさわぶんこ」なのね。駅名は正式に「かなざわぶんこ」。地元民の呼び方は縮めて「ぶんこ」。
隣に金沢八景(かなざわはっけい)という主要駅があるが、地元の人の間では「飲むなら文庫」という共通認識があるらしく、居酒屋の数が多いのも八景より文庫。
この店JAFFE JOFFER(ジャッフェジョッファ)も文庫の駅から徒歩4分圏の距離なのだが、しかし商店街とは明らかに別方向。国道16号沿いの離れた場所に位置するため、辿り着く人はそう多くない。
1個1,000円もするハンバーガーが認められるには、まだ時間のかかる土地である。逆に言うと、1個1,000円もする噂のプレミアムバーガーを、都内まで足を運ぶことなく、近所で気軽に食べられる店なのだが。
コノ店の説明をするには、まずこのライオンキングチックなロゴマークと、ミョウな店の名の由来を説明するのが早いだろう。
●星の王子ニューヨークへ行く
ジャッフェジョッファとは、店長辻倉さんが小学生の頃から何十回と観続けたお気に入りの映画『星の王子ニューヨークへ行く』に登場する、主人公の父親の名前である。
エディ・マーフィ主演。アフリカの王国「ザムンダ」の王子が花嫁探しのためニューヨークへ行くという、コメディと言うよりファンタジー寄りな作品。原題はそのまんま"Coming to America"なので、何で「星の王子」などという邦題になったのか理解に苦しむところ。監督は『ブルース・ブラザース』『サボテン・ブラザース』のジョン・ランディス。
そのエディ・マーフィ演じる王子の父親であるザムンダ国王がKing Jaffe Joffer……って、ダース・ベイダーじゃん! ベイダーの声を当てているジェームズ・アール・ジョーンズがジャッフェ・ジョッファ王役。どこをどう聞いても、声はダース・ベイダー。お供を従え王子の行方を追うシーンは『帝国の逆襲』を彷彿とさせる。
●マクドーウェル
アフリカから出て来た"アキーム"王子が、ニューヨークはクイーンズでアルバイトする先が「McDowell's」というハンバーガーショップである。そう、思いっきり「McDonald's」のもじり。
オーナー曰く「奴らは"マクドナルド"、うちは"マクドーウェル"」「奴らは"黄金のアーチ"、うちは"黄金の弓(アーク)"」「ビッグ・マック対ビッグ・ミック。どっちも100%ビーフでレタス チーズ 玉ネギ。向こうはゴマつきパン、うちはゴマなし」、自慢のシェイクは「ミック・シェイク」、だけど事務所でこっそり「McDonald's」のマニュアルを読んでる(笑)。
このマクドーウェルが物語の重要な舞台として、劇中何度も登場する。辻倉さん自身はハンバーガーへの「特別な思い入れ」を否定するのだが、当人の意識の有無に関わらず、後年のハンバーガーと辻倉さんの切っても切れない関係を見るに、この『星の王子』のマクドーウェルとの出会いが少なからず影響しているのではないかと思うのである――そう、これは「運命」だったに違いない。It is your destiny, my son!
●自家製バンズ
マクドーウェルを意識していたか否か、辻倉さんは、金沢文庫の近所、鳥浜にある「BAYSIDE DELI(ベイサイドデリ)」というアメリカンダイナーで7年と8ヶ月の間働いていた。「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド(略してMOP)」の中に在る、海に臨む人気店である。経営はかのスティルフーズ。
このベイサイドデリで辻倉さんは日夜ハンバーガーを作り続けていたのである。つまり辻倉さんのキャリアは現時点で既に9年を数えることになる。
バンズの作り方は、ベイサイドデリのキッチンの裏にあったベーカリーキッチンの様子を見て覚えた。まさに「門前の小僧」状態。
その辻倉さん手作りのバンズがおいしい。言われなければ自家製とは夢にも気付かぬほどのみごとな出来映えである。特にツヤの無いクラウン(上バンズ)のカタチは食欲そそる美しさ。
生地の気泡が粗く、水分を奪うようなドライさがあるが、そこを克服すれば、プロのパン職人が作るものと比べても遜色ないほどのパーフェクトなバンズになることだろう。
バーガー類12品。4〜5種類のチーズを程良くブレンドしたワンダフルチーズバーガー¥950や、特製ハバネロペッパーソースのファイヤーホットバーガー¥950などが自慢の一品だが、それらはすべて次に回して、まずは基本のチーズバーガー¥850から。チーズはチェダー。
パティはオージービーフに国産黒毛和牛のミックス。120gだが分厚く成形されており、やわらかで上質な食感。真っ黄色なチェダーチーズに真っ赤なBBQソースの組み合わせで見た目ハデハデ。味もピントがはっきりしており、チーズ味しっかり。
ポイントは時折顔を覗かせる、ガーリックマスタードのアンチョビのような味わい。山盛りのフレンチフライにも自家製ケージャンスパイスがかかり、アルコールを欲する味付け。BBQソースはもう少し量を加減しても良いかと思うが、この道9年、さすがのまとまりである。
●繁盛しなかったら意味がない
付け合わせにピクルス。フライドポテトは夜は別売。樽生は2種類、黒ラベルと琥珀ヱビス。ボトルビールの中ではピルスナーウルケルのチョイスが秀逸。
店内はカフェバーといった雰囲気だが、比較的シンプルと言うか殺風景な部分もあって、ジャッフェジョッファ色に染め上がるのはまだこれからといったところ。特筆すべきはトイレの奇抜さ。かつてのテナントだった不動産屋の置きみやげなのだが、コレは壊さず残して大正解。このアクの強さをホールにも活かしたい。
「昼はハンバーガー、夜はお酒がメイン」とは言うものの、冒頭書いたとおり、駅前からわずかに外れるこの不利を今後どう跳ね返すか。一方で、昨年ワールドカップ南アフリカ大会の際には、PV(パブリックビューイング)で60人を集めた実績を持つ。
わざわざ都内まで出掛けずとも、1個1,000円する噂のプレミアムバーガーが近所で気軽に食べられる、そんな実力店である。キャリアも腕前も折り紙付き。
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しかし辻倉店長はそれでは満足しない。「『ハンバーガーに千円』は特別なこと。だからおいしいのは当たり前。それ以上のものを提供しないとお客さんは着いて来てくれない」と、どこまでもストイックだ。特に初めて来店するお客様には相当なプレッシャーで臨んでいる――そんな作り手の熱〜い心意気が伝わる、金沢文庫の新名所。そう、こういう「熱〜い」人がいないことには、ドラマは始まらないのである。
店の脇の道を入ってゆくと、10分ほどで神奈川県立金沢文庫、さらにその先に金沢北条氏の菩提寺、称名寺(しょうみょうじ)。庭園と森に囲まれた名勝で、春は桜、5月には薪能が催されるという。ほぉ……あの野村萬斎さんもご出演(コレ観てみたいな)。もう歴とした観光地ですな。
そんなワケで、鎌倉文化ゆかりの町にライオン印のハンバーガー。花見の前に"ジャフェ"ってバーガー、薪能の後にも"ジョファ"ってバーガー(笑)、文庫の観光みやげにはぜひバーガーを(笑)。
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― shop data ―
所在地: 神奈川県横浜市金沢区谷津町36 MAHALOPLACE 1F
京急電鉄 金沢文庫駅歩4分 地図
TEL: 045-352-8595
オープン: 2010年1月20日
* 営業時間 *
火〜土: 11:30〜15:00(LO14:30), 17:00〜22:00(LO21:30)
日・祝: 12:00〜20:00(LO19:30)
定休日: 月曜日(要確認)