2009年12月12日

# 218 TSUNAMI/津波 [横須賀]


# 横須賀
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 そしてどぶ板通りをゲート近くまで進むとコノ店。2009年1月30日、ヨコスカネイビーバーガー開始時4店のうちの1店である。本来はメキシコ料理。


●狼煙

 昨秋11月、市役所より「ヨコスカネイビーバーガーを始めませんか」と話があり、急ピッチで準備を進めて本年1月末にゲッティングアウト。当初感じを掴むまではパティは自分で手で捏ね、まな板をくり抜いて作った「木枠」を使って成形。なので1日限定30個しか出せなかった。


 ところが開始早々予想をはるかに上回る反響があり人気爆発! いきなりのテイクオフ。8月は1ヶ月の販売数なんと5,000個! 創業40年の老舗「ハニービー」と共に2本柱の大活躍を見せた。

 爆発したのは人気だけではない――日々凄まじい数の肉を焼くため、メンテに時間を当てる暇の無いままダクトの中に煤(すす)が溜まり続け、ついにコレに引火。ぼや騒ぎに。スタートからまだふた月半、春4月のことである。この火事を機に厨房内を一新、排煙装置2本を建物の5階屋上まで伸ばした。設備投資も全く馬鹿にならない。


 しかしそんな熱狂の日々にもオーナー夫妻は一向に満足していない。「毎日ばたばたしています。数は出ますがちゃんとできてるか不安な日々です」とお便りまでいただいた。そう、それがこのにわか町おこしイベントに私が興味と好感を持った理由である。市の取り組みはもちろん、関わっている人々はとにかく真剣だ。「ハンバーガーは奥が深くて、手を染めるほどに難しい」とオーナー夫人につくづく語られたときは、私もただ「そうですね」としか返しようがなかった。


●波乗り「シゲ」の伝説

 オーナー飯田さんは三浦で最初にサーフィンを始めた日本人の一人である。当時16歳。あだ名はシゲさん。伝説の人である。


 父親はベース(海軍基地)の中の「SRF」、艦船修理部で働いていた。そんな事情もあり、シゲさんは小学生の頃からビートルズを嗜む「ませた」……訂正、「トッポイ」少年に育つ。

 中学生のとき念願のベース内でのアルバイト。就いたのはなんとボウリング場のピンセッター! わかります? 昔はピンは人間が立ててたんですよ。このバイトで一気に世界が変わった――「だって塀の向こうはアメリカなんだもん」。ちなみに60年代当時、ベース内ではハンバーガーよりホットドッグの方が断然多かったという。

 そんなシゲ少年が小学5年生のとき、横須賀の観音崎から鎌倉の七里ヶ浜まで自転車を遠乗りしたことがある。往復軽く40km、小学生の距離ではない。もちろん今のように何十段ギアなどない。


 自転車は隣家から借りた。友人と2人早朝に観音崎を発ち、ようやく七里ヶ浜に辿り着いたのは昼過ぎ。そこで少年が目にしたものは、渚に浮かべた板の上に立ち上がり、打ち寄せる波に乗って楽しむ人々の姿だった。

 キラキラと午後の日差しに輝く波間にシルエットになったネイビーが3、4人。日本にサーフィンが入って来たばかりの頃で、サーフィンをする日本人はまだ居なかった。「サーフィン」という言葉すら少年はまだ知らなかった。強い衝撃を受けた。そして16、17の頃には自分でサーフボードを作り、見よう見まねで海に浮かべていた。それが伝説の始まりである。

 すぐに70年代が到来、『Made in U.S.A. Catalog』『POPEYE』などの情報誌が相次ぎ創刊。カリフォルニアのカルチャーが紹介され、サーフィン人気も一気に加熱する。シゲ青年もライトニングボルトが誕生するやハワイまで乗りに行くなど、波を求めて世界中を渡った。御年50歳を越えた今でも、もちろん現役の波乗りである。年に何回かしかない波がある時は「何があろうと行っちゃう(笑)」。許されるものならきっと今でもバッグパックをやっていただろうと、奥さん。

●CRUEL SEA

 父親に倣ってか、シゲさんは初め造船の仕事に就くが、勤め人は性に合わず、程なくして趣味と実益を兼ねた仕事を始める。


 1979年、1坪半ほどの店舗(今のSURF TACOの在る場所)で「CRUEL SEA」というサーフショップをオープン。サンディエゴにあるファクトリーの国内総代理店となりサーフボードや服などを輸入、卸しと小売りをやった。以降どぶ板界隈を転々とし、2002年に現在の地に移転新築。ところがサーフショップは3年ほどでやめてしまう。

 売り場の一部を改装してホットドッグとバーを始めたのがきっかけだった。初めはまだ2階で板を売り続けていたが、それも程なくバーに改装。サンディエゴとの物販・小売の全権利は友人に譲り、完全に飲食店にシフトする。「やりたかった? いやー、そうなっちゃった(笑)」。

 飲食をやるようになったのは奥さんの影響が強い。ご主人を無理矢理引きずり込んだとの思いもあるそうだが、それでもその「包丁も握れなかった主人」が、今では活き活きと目の色変えてハンバーガーづくりに没頭しているのだから――エ〜話やないですか!

●メキシコ料理


 やるからには半端なモノはやりたくない。どうせやるなら本場の味を――と、メキシコ人の先生に師事。ベースの中はメキシカンが多く、その奥さんやお母さんから熱心に教わった。サーフィンの仕事ついでにサンディエゴから国境を越え、何度もメキシコを訪ねた。その結果、日本人の好みをまるで無視した、本場に迫る味の再現に成功――「本物を作ればわかる人が着いてきてくれる」。

 右の写真は1皿で3度おいしい1タコ、2チーズエンチラーダス、ライス、ビーンズ添えのコンビネーション¥1,200。本場の家庭料理を彷彿とさせるこの盛り! この彩り!


 サルサやワカモレにはメキシコの香菜「シラントロ」が容赦なく加わり、クセのある独特のニオイを醸している。皿の隅に盛られたライスはインディカ米に非ず。国内入手不能のメキシコ産の長粒種――で、コレがまたおいしくないんだ(笑)。だがそれがいい!! この米がおいしかったら気分出ないですから(笑)。

 他にも「ハマイカ(JAMAICA)」と呼ばれるハイビスカスティー¥350や、専用のギザギザのスプーンで固形を砕いて飲むメキシカンホットチョコレート¥450など、どれもクセ者揃い。横須賀どぶ板通りの異国情緒にピタリとハマっている。

●ネイビーバーガー

 そのメキシコ料理に注入した徹底した本物志向をそのままに、今度はネイビーバーガーに挑戦したのである。


 先天的に、すごくハンバーガー「向き」な店であると言ってよい。

 そもそもハンバーガーの「ために在った」ような店である。本物を求め、原点を探り、手間暇を厭わず、安易に商売に走らない――昨今のハンバーガームーブメントは、こうした真面目な店々があってこそ堅実を保っている。

 店内1階はファミリー向け禁煙、2階はプールバーでダーツもあり喫煙可。週末は朝の5時まで営業する。天井に渡したロングボードはサーフショップ時代の名残だが、売り物もあり、売れない物もあり。

 さてネイビーバーガー。米軍からの公式レシピを基にした限りなくアチラの味に近い、シンプルでストレートなバーガーである。


 レギュラーサイズはハーフパウンド227gという無茶苦茶な数字だが、こんなのホントに見張り番の水兵さんたち食べてんのかね?

 さらに全長333m、乗員5,680名を誇る原子力空母ジョージ・ワシントンにちなんだジョージワシントンバーガー¥1,300は総重量500gの桁外れ――あなたの体重はこのGWバーガーを食べた直後、500g増えます(笑)。

 当初4品から始めたハンバーガーは、その後アレンジを加えつ、現在12品。自慢のサルサ+ワカモレを乗せたメキシカンバーガー¥900やチリビーンズチーズバーガー¥850辺りはコノ店ならではの味だろう。

 チーズバーガークォーターパウンド113gで¥750。ハーフパウンド225gのレギュラーは¥1,100。安い! クラウン(上バンズ)の裏に少量のタルタルソース、チーズ、パティ、グリルドオニオン、トマト、レタス、マスタード、ヒール(下バンズ)。いたってシンプル。

●産地は三浦、横須賀

 バンズは三浦半島沖で採れる海洋酵母を使用、地元横須賀のパン屋が溶岩窯で焼いて……と大層なモンである。フランス粉と米粉を多く含み、目が細かく詰まって硬いため、ノドも詰まる。歯もめり込む。当初はさらに塩味がキツかったが、硬さとともにだいぶ落ち着いた。


 野菜は三浦半島の有機栽培農家と契約、ハンバーガーに入る野菜はオール横須賀産。町おこしなのでこうした地産地消は非常に趣旨に適っている。どんどんやるべし。

 パティは今や定番、オージービーフに和牛の牛脂。赤身肉中心、味付けは塩コショウのみ。ガス火のグリルでしっかり硬く焼き込み、コゲのニオイが香ばしい。日本人の肉の好みとは明らかに違うが、「本場アメリカの」となると、やはりこう来なくっちゃあ調子が出ない。

 グリルドオニオンに甘味あり、ケチャップ&マスタードの酸味が酸っぱいトマトによって一層強調され美味。バンズとパティが共に持つドライな感じが少なからず食べづらいが、そこはドリンクでぐいと流し込んで、シンプルでソリッドな味わいと迫力、そして軍港YOKOSUKAならではのこの雰囲気を楽しみたい。

§ §

 ドラフトはスーパードライ。米兵の間でも「ASAHI」の名はよく知られている。店名と同名のハワイのビール「TSUNAMI」もあり。不評らしいのだが、そう? 食事と合わせて飲むとビックリするぐらいおいしくなりますから。

 「Tsunami」は世界で通じる国際語。その名の如くのビッグウェイブをこの横須賀の町に起こせるか――。「伝説の波乗り」の名に懸けた、シゲさん人生最大のライディングは今まだ始まったばかり。



【エフヨコ SPチケット】 TSUNAMI [神奈川・横須賀] のジョージワシントンバーガー
# TSUNAMI [神奈川・横須賀] のマッシュルームチーズバーガー
# TSUNAMI [神奈川・横須賀] のプレインバーガー
# ロコモコ ◆ vol.4 TSUNAMI [神奈川・横須賀] のロコモコ
# TSUNAMI [神奈川・横須賀] のパイナップルBBQバーガー
# TSUNAMI [神奈川・横須賀] のベーコンチーズバーガー
# TSUNAMI [神奈川・横須賀] のメキシカンバーガー
# 221 SURF TACO [神奈川・横須賀]


― shop data ―
所在地: 神奈川県横須賀市本町2-1-9
    京急電鉄 汐入駅歩5分 地図
TEL: 046-827-1949
URL: http://navyburger.com/
オープン: 2004年5月25日
* 営業時間 *
 1階: 11:00〜22:30LO
 2階: 平日11:00〜25:00、金土11:00〜29:00
 (※深夜フードメニューは22:30〜25:00まで)
定休日: 1月1日(要確認)


2011.4.26 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 横須賀編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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