NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第2回、海軍兵学校のシーンでカレーライスが出て来た。
◆ vol.4 ◆
vol.1 | vol.2 | vol.3 | vol.4 | vol.5
(前回よりつづき)
とは言え「よこすか海軍カレー」の方が10年先輩である。
日本における歴史で言うなら、カレーライスが明治初期から既に各所で食されていたのに対し、ハンバーガーがようやっと登場するのは太平洋戦争後であるから、優に70年の開きがある。実質的に世間に広まるのは1970年代に入ってからであるのを考えれば、90年近い。横須賀の港を舞台とした今回の対決も、当分の間はヨチヨチ歩きのハンバーガーが大横綱カレーライスの胸を借りるかっこうになることだろう。
ネイビーバーガーのルールは簡単。司令官より拝受した秘伝のレシピを基に「これでハンバーガー作んなさい」と横須賀市が市内の飲食店を募集、応じた各店は独自のアイデアを凝らした独自のネイビーバーガーを考案・開発し、レギュラーメニュー化する。
ちなみにその海軍伝統の公式レシピ、内容はいかにも鷹揚なアメリカらしく、かなり大まかなものである……らしい(笑)。一般非公開。
店はハンバーガーショップである必要はなく、喫茶店でも洋食屋でもフレンチレストランでも可。「ヨコスカネイビーバーガー」と冠するハンバーガーをメニューの中で扱えばよい。なので各店同じ「ヨコスカネイビーバーガー」という名前でも、それぞれに味も内容も違うのである。
2009年01月30日、「TSUNAMI/津波」「ハニービー」「グールマン」「LAUNA」の4店からスタート、現在は13店を数える。この夏は横須賀港内を約50分かけてクルーズする「YOKOSUKA軍港めぐり」との連携もあり、行列ができるほどの大人気を博して滑り出しはなかなか順調。「よこすか海軍カレー」とともに軍港の町・横須賀をアピールする観光の目玉となるか――。
ところがネイビーバーガーに関する横須賀市の扱いは、よくある「町おこし」の鼻息の荒さとはまるで逆をゆく、実に真面目なものである。
たとえば、参加できる飲食店はどぶ板通りを中心とした米軍基地周辺一帯に地域が限られている。基地独特の「あの雰囲気の中で」味わって欲しいという思いによるものであり、市内であってもこの地域から外れる店の参加は、残念ながらNG。
同様な理由から「市外には出さない」ことも基本方針としている。観光施設への出店、大手コンビニエンスストアからの商品化、ファストフードチェーンからの誘いなどすべて断っている。「少しもったいないかも知れませんが……」と担当者コメント。
また、いかに調理が簡単(と軽視されがち)なハンバーガーとは言え、それなりの設備(と心構え)が不可欠であるため、参加を希望する店に対しては事前の説明をきちんとおこない、安易に勧めることはしていない。 (つづく)
参考資料:
新名物「ヨコスカネイビーバーガー」−米海軍基地周辺で販売始まる - 横須賀経済新聞(2009年01月30日)
広報よこすか/2009年3月号/月下独酌 海軍カレーとネイビーバーガー(横須賀市長のコラム)