◆ vol.3 ◆
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ヨコスカネイビーバーガーの事の起こりは昨年2008年の11月、在日米海軍司令官から横須賀市長に海軍直伝のレシピが手渡されたことより始まる。
全くもって意外なことに、実は米軍からの申し出である。
近年、横須賀市と米軍基地との間に定期的な情報交換の場が設けられ、日米相互の友好的でより親密な関係づくりが盛んにおこなわれるようになった――これまであまり無かったことである。その昨年7月末の懇談において、米軍司令官から提案のあったのがネイビーバーガーなのである。
懇談の様子はおそらくこんな感じ――(以下完全なる想像)。横須賀は海上自衛隊と米海軍、"日米の"基地の町である。米軍基地だって今や横須賀の「文化」(客観的に観てそれは否定はできない)。片や日本には海軍ゆかりの「よこすか海軍カレー」があるのに、どうして米国側には何も無いのか。横須賀はカレーだけの街ではない。海軍カレーに対抗して米国は……おぉ、そうだ! HAMBURGER! ヨコスカネイビーバーガーを始めたらどうだ――。
文字通りの日米友好親善である。そして地域活性化の共同推進である。その象徴に、チューインガムやキャンディーバー、ホットドッグやパンケーキ――他のあらゆるライバルを蹴落としてハンバーガーが選ばれたことをハンバーガー愛食家としては大いに喜ばねばならない。
かくして2008年11月19日、在日米海軍司令官 James D. Kelly 海軍少将から蒲谷亮一横須賀市長へ、公式レシピ授与の「式典」が行われた。大変異例なことにプレス多数が基地内に呼び入れられ、しかも会場内でハンバーガーを調理して市長と司令官、両者が頬張るサービスショットあり。
以下は完全なる私見――「深読み」である。
但しこのネイビーバーガー、友好の証であることはもちろんなのだが、しかし同時に「米海軍の威信を懸けた」一面もゼロではなかろう、と密かに勘ぐっている。自国の食べ物に矜持を持つのは当然のこと。「在日米海軍司令官からの贈呈文」の中にも「海上自衛隊の海軍カレーと共に誇りを持って人気を博すことを願って止みません(I sincerely hope the “Navy Burger” can proudly stand alongside JMSDF’s “Kaigun Kare”)」と記述がある。
さらに言えば彼らは軍人さんなのである。こうした他愛もないスキンシップの中にさえ勝負にこだわる本能がつい働いてもおかしくはない。番組内のちょっとしたゲームにさえ常に燃えまくるキムタクと原理は一緒である。
旧日本海軍の軍隊食に端を発し全国の家庭へと広まったカレーライス。簡易な携帯食として米国全土に広まり、米海軍の軍隊食として重宝されたハンバーガー。日本代表カレーライス(ん?)と米国代表ハンバーガー――コレ、実は横須賀を舞台とした日米国民食同士の代理戦争……であるかも知れない(笑)。言うなれば「めんこ」のいちばん強いの同士出し合っている様なものである。 (つづく)
参考資料:
横須賀市報道発表資料 - 「2008-11-17 横須賀プロデュースの新しいグルメブランド「YOKOSUKA(ヨコスカ) NAVY(ネイビー) BURGER(バーガー)」が始動(定例記者会見)」
横須賀の新ブランド・海軍バーガーでまちおこし − タウンニュース(2008年11月28日号)
カレーの街よこすか・カレーライス誕生秘話