2009年10月14日

# 215 Cherry Beans [静岡]



 静岡では「チェリビ」の愛称で知られる超老舗カフェの、あっつ〜〜い店長の話。

●創業1982年

 通称「センター(新静岡センター)」という静岡鉄道新静岡駅の駅ビル真横にあるこの老舗。

 人通りの絶えぬ好立地だったが、今年2月にそのセンターの改築工事が始まり、ビルは解体。駅の入り口が移動したため、人の流れが一本向こうにズレてしまった。「かえってそっちの方が好きだ」と半端なく熱い店長、八田さん。お隣のバー「グッドオールドテーブル」のオーナーと共に、客足が遠のく現状を「センターが潰れたせいにしてる、この辺の街の雰囲気がイヤだ」とむしろそっちを嘆かわしく思っている……熱いゾ、二人とも。


 1966年(昭和41年)オープンのセンターには敵わぬが、チェリビだって1982年、昭和57年が生まれ年である。3年前に創業者が引退(?)し、現オーナーは2代目。場所も店名もそのままに、伝統ある店を引き継いだ。

 そんな歴史を聞いて、スポーツ新聞広げたお父さん達がタバコ吹かしてる「喫茶店」を想像したら、大きな間違い。

 入ってすぐ、ボトルビールがずらっと並ぶ冷蔵ケースにまず目が奪われる。GROW STOCK(グローストック)というビアバーを姉妹店に持つが故の豊富な品揃えで、世界のビールが40種……ね? 侮れなくなってきたでしょ?


 L字型の店内は奥に深く、テーブル16席(詰めれば32)、ソファ16、あとキッチンに向いた半円のカウンター6。床から天井から茶系でまとめられており、カフェ&バーの名にふさわしい落ち着いた雰囲気である。BGMにストーンズの「悲しみのアンジー」など。こんな店がまさか女の子の溜まり場とは……。

●チェリビと言えばポテト

 なにしろポテトで有名な店である。ハンバーガーよりポテト。

 その正体は各種シーズニングをかけて味付けたフレンチフライ。ファーストキッチンがフレーバーポテトを始めた1996年よりはるか以前から、ココ静岡では塩味以外のフライドポテトが長らく食されていたワケである。味は現在5種類。


 ちなみにファーストキッチンは「ポテトパラダイス」なる専門店を2006年に始めたが、今はどうなってんのかな? ウィキペディアには「2009年1月現在わずか2店舗のみ」とあるが、その2店の調べがつかない。静岡とファーストキッチンにはこんな話もあったり。

 実はハンバーガーも開店当初からあったのである。しかしポテトばかりに人気が集中、ポテト目当てのお客さんがいまだに多数を占めている。30〜40代を中心に下は高校生まで、女性の率が圧倒的。歴史ある店なので親子2代のお客さんもいる。「もっとハンバーガーを出していきたいんだけど、ポテト目当てでしか来てくれない」、コレが半端なく熱い八田店長の、目下の嘆きの「壁」である。ポテトとハンバーガーを2枚看板に――八田店長の熱き挑戦が始まった。


●君は天然色

 八田店長は信州は安曇野の出身。高校卒業後、建築業に就き、現場仕事などしていたが、その頃は「人生やる気無かった」「熱くなれなかった」「燃えてなかった」。


 音楽がやりたくて22歳で上京。スリップノット(Slipknot)とか、コーン(Korn)とか、あんな感じの「ギターのチューニング2音下げちゃうぐらいな」コアでアンダーグランドなヘヴィロック、ミクスチャー・ロックをオリジナルでやっていた。ヴォーカル担当。でも、歌えないヴォーカル(笑)。歌じゃない、叫ぶっ! 自分を痛めつけて、自身のダークな部分をえぐり出しさらけ出す、暗〜いジャンルであると……違うんです! こういう音楽やる人ほど、純粋なんです!

 都内ライヴハウスを中心に5年ほどアングラな活動を続けていたが、ある日突然音楽をやる意味がなくなってしまう。その必要がなくなったのである。なぜか……今の奥さんと出会ったから(笑)。

 「東京にいた5年間ってモノクロの世界で、で今の嫁さんと出会ったときの感覚が、唯一そこだけ"カラー"になった」――それで曲が作れなくなった。それで音楽やめちゃった……クサイです! でもカッケェ〜!

●羽衣の松

 モノクロームの大都会から一転、奥さんの出身地である静岡へ。そしたら静岡が住み良かった! 「長野も大好きですけど、静岡もっと好きです」――そう、彼は長野の山育ちなのである。海に強い憧れがあった。甲斐の武田と一緒ですな。


 まず三保の松原に感動! このときまで浜辺にも松が生えることを知らなかった。久能山東照宮でさらに感動!海の幸は食べ慣れないので、「かっぱ寿司」の鮮度にまたも感動! 食べ物はおいしいわ、海はあるわで、静岡大好き!

 海の仕事に憧れて港で働くも、体力的に挫折。そこで奥さんが勤めていたチェリビで共働きすることに。飲食歴は3年目、今や堂々の店長である。ハンバーガーとも出会えたし、世界のビールにも出会えた。曰く「毎日が勉強で、今までに無いぐらい充実感がある」と――そうです、熱いんですっ!

●料理の師匠はいない

 料理の面白さにどっぷりはまり、静岡中を食べ歩いた。ところがシャレた料理やカッコつけた料理ばかりで、それが面白くなかったと――「もっとシンプルでいいのにな、っていうのがずっとあったんで」。


 たまたま働くことになったコノ店で、ハンバーガーこそが自分の求める食べ物であると気付かされ、オーナーと共に東京を視察。食べたのは「エーエス」と「ベーカーバウンス」。

 チェリビのバーガーは、20年前のモノを基本そのまま受け継ぎつつ少し手を加え、種類を増やしているのだが、最近ちょっと息詰まっている。「何か真似事なんですよ、今やってることって。オリジナリティがまだなくて」。

 料理の師匠がいないので、本買って来て読んで全部独学。「有名店行って料理教わるというのは誰かの物真似、誰かの味でしかないんで」「イチから全部自分で勉強した俺でも出来るんだよ」という部分で見返したい気持ちがある――「それがハンバーガーなんですよ」。


 パスタもピザもプレートものも「全部中途半端になっちゃった」と、今年の初めにやめてしまった。最初、ベーシックとチーズとフィッシュの3品だけしかなかったハンバーガーは今では18品。「でも物真似なんですよ、コレも」。今は"何となくな"ハンバーガーしか作れない。

●新バーガー登場

 チェリビの伝統的スタイルを受け継ぐチーズバーガー¥650。ポテトとドリンク付きのセットで¥1,150。木の皿に乗って。

 白くてふわっと軽いバンズの下にケチャップ&マスタード、そこまで甘くないスイートレリッシュ、シュレッドオニオン、チェダーチーズ、合い挽きのパティ、トマト、畳んだレタス、マスタードフレッシュ(マスタード風味のバター)、下バンズ。付け合わせに名代のチェリビポテトがどっさり。


 実にキレイに丁寧に作られたハンバーガーである。但し合い挽きパティには歯応えというものが無く、存在感希薄。あとケチャップとマスタードにやや頼り過ぎ。ちょっとした「おやつ」として、甘〜くて辛〜い味付けでおいしくいただくバーガーとして、コレはコレで満足できるのだが、率直なところ値段相応とは言い難い。650円とるんなら、ケチャップ&マスタードの味で食べさせてはならない。

 というワケで第2ラウンド。「メニュー全部変えたいです」と切望する店長が心血注いで試作中の新バーガーをいただいた。


 パティはオージービーフのつなぎ無しで、従来の80gから110gにボリュームアップ。バンズも天然酵母使用のオリジナルを新たに開発。ご覧のバーガーはオリジナルのバーベキューソースをかけた何とも豪快で賑やかなバーベキューベーコンチーズバーガー(仮)なのだが、コレだとさすがに味が賑やか過ぎる。

 ベーコンもチーズもソースもどれも塩分が強く、加えてパティにも塩気があるため、すっかり飽和状態。全体にかなり濃い味になってしまっている。さらにはココにバンズの余計な甘味が乗っかってくる。折角オニオンをグリルしていることだし、そうした掛けた手間暇が正しく活きる方向に持って行けたらと思う。

 その後さらに改良を重ね、いよいよ今月10月よりディナータイムの試験販売開始。来月以降さらに個数を増やしてテストを続け、好評ならついに来年より全メニューリニューアルの運び。「ポテトのチェリビ」から「ハンバーガーもチェリビ」に生まれ変われるか――。

●ハンバーガーもチェリビ

 半端なく熱い八田店長、テレビの取材を断ったことがある。テレビカメラが来、芸能人が来ることで話題になってお客さんに来てもらえるというのが「実力じゃないみたい」でイヤなのだそうである――ね? やっぱり熱いでしょ?


 「ハンバーガーって、これ以上のスローフードないなって思ったんですよ。拘(こだわ)れば拘っただけ、おいしくできると言うか。限界が無いと言うか」。ハンバーガーは今や「オレの自己表現。と言うか、ココのお店のですネ」。

 「グッドオールドテーブル」さんや「ジャッカル」さんらと静岡を盛り上げよう、一緒にムーブメントを巻き起こそうと、ますます熱いことを企てている――静岡が熱い! そしてハンバーガー専門店の出店計画も浮上する、創業27年目のチェリビが、いま熱い!

# Cherry Beans [静岡] のベーコンエッグBBQバーガー
# Cherry Beans [静岡] のハンバーガー
# Cherry Beans [静岡] の夏のスタミナ元気バーガー


― shop data ―
所在地: 静岡県静岡市葵区伝馬町8-1 サンローゼビル2F
     JR静岡駅歩10分 地図
TEL: 054-253-4678
URL: http://ameblo.jp/cherrybeans-blog/
オープン: 1982年
* 営業時間 *
月〜木、日: 11:00〜22:00(21:30LO)
金・土: 11:00〜24:00(23:00LO)
定休日: 不定休(要確認)

2009.10.14 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:57| Comment(4) | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
熱き店長、大いに羽ばたけ。自分を表現できるものに出会えhappylife驀進。
夢の海をたっぷり泳げ!!
Posted by カズパパ at 2009年10月15日 20:15
De Verboden Vrucht(ヒューガルデン禁断の果実)が有りますね、生産が不安定なためか手に入れにくいビールです。
個性のあるフルボディ、これに合わせるハンバーガーは力強さが必要かな?
Posted by Xeno at 2009年10月15日 22:30
>Xeno 様

コメントありがとうございます。今さらお返ししております。

> 生産が不安定なためか手に入れにくいビールです。

そうだったんですか。飲んだことはあるんですが、知りませんでした。またベルギービールの店なんか行くと軽く1,200円以上はするでしょ?


またよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2009年12月02日 12:59
>カズパパ 様

コメントありがとうございます。今さらながらお返ししております。

カズパパ様も熱いですねぇ〜!そうです、そういう熱〜い人々の集うブログです、ココは。熱〜い人々が関わっているからハンバーガーは面白いのです。熱〜い人々に支えられてハンバーガーは在るのです。


今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2009年12月02日 13:04

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