2009年09月29日

# 213 California Diner JACKAL [静岡]



 「ジャッカル」とはオーナーのニックネームである。

●コードネームはジャッカル

 とある筋では彼はジャッカルで通っている。自身のニックネームを店の名にすることは、3年前から既に決まっていた。


 ジャッカル氏は生まれも育ちも静岡市内。居酒屋→メキシコ料理→ハワイ料理の順に店を渡り、経験を積んでいった。なのでコノ店の味のベースはメキシカンとハワイアンである。

 いつか自分の店をやりたいとずっと思っていた。「料理が好き」なのと「アメリカンカルチャーが好き」なのを結びつけると「ダイナーになる」という、極めてシンプルな答えを導き出すに至り、昭和通りと青葉通りの交差するこの角地のビル2階にダイナーを始めた。

 物件探しは2ヶ月と掛かっていない。当初、同ビル3階が空いていたのだが、「でも3階か……」と迷っていたところ、程なく2階も空くことになり、即決。2階は以前は服屋だった。

●ビッグ・ダディ

 三角形をした面白い店内である。配管の都合で、キッチンおよびカウンターがホールの高さよりガボッと2段上がっているのだが、むしろその高低差が空間に変化を与えている。


 店の外には青葉緑地(青葉シンボルロード)という市民憩いの緑道、遊歩道が通っており、その「空間」に向いて大きく窓がとられているため、さほど狭くは感じない。

 テーブルが14席、カウンター10席……と指折り数えていると、「24席が僕の中のベストだった」と横からジャッカル氏。24席以上だと2人でこなすには限界がある――と、この辺りの分析も長きにわたる業界経験に裏打ちされたものである。

 Rat Fink(ラットフィンク)をはじめ、店内随所に飾られる小物・雑貨の数々は、すべてジャッカル氏の自宅に在ったモノ(ネオン管は除く)。自室を「アメリカン」に仕立て、レイアウトからバランスから「予行演習」していたとのこと――実に入念である。

 そのRat Finkの作者であるエド・ロスばりのタッチでロゴやメニューをデザインしたのは、名古屋「ポークパイハット」のオーナー夫婦。


●「バック・トゥ・ザ・フューチャー」か「スタンド・バイ・ミー」か

 さてそのジャッカル氏のアメリカ好きの根源を探ると……コレがはっきりしない(笑)。


 おそらく中学生の時分に観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』か『スタンド・バイ・ミー』がルーツだろうと。それまで映画と言えばジャッキー・チェンだったのが、世界が180度変わった。

 強烈に記憶に残っているのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する50'sの世界、「自由な高校」の様子を見て憧れて……かも知れない。とにかく映画が入り口だった……のだろうと。

 その後アメカジブームが到来、高校を卒業して二十歳ぐらいでハーレー買ってカルチャーにどっぷり漬かり、アメリカ行き。ちなみに愛車は97年式、ソフテイル。

 ハンバーガー5品、ホットドッグ5品、タコス5品、ケサディーヤ5品という、至極バランスのとれたメニュー構成であるが、中でもハンバーガーを前面に押し出してやっている。うちは「ハンバーガー屋ではない」とは言いつつも、やはりハンバーガーはダイナーの看板にして花形、ダイナーの世界へと誘(いざな)う「入り口」である。

●チリドッグ

 「いちばん最初はチリドッグを食べて欲しい」というくらい、チリに自信があるのだが、でも「ハンバーガーはなるべくシンプルに食べて欲しい」、なのでチリバーガーはそもそも「メニューに無い」と……この辺り、作り手の熱い思いが交錯していて面白い。


 たっぷりチーズバーガー¥980。チェダーチーズのスライスをなんと3枚も使用! もう真っ黄っ黄ですから! さらにシュレッドモッツァレラを2種加えた超強力チーズバーガーである。クラウン(上バンズ)の下はオリジナルソース、みじんのタマネギ、モッツァレラチーズにチェダーチーズ、パティ、トマト、レタス、ふたたびソース、ヒール(下バンズ)。

 このバーガーの主役は明確に「肉」である。ビーフパティはオージー100%のつなぎ無し。粗挽き。あまり焼かずに中に噛み応えを残し、ステーキを食べているかのような味わいに仕上げている。

●ブルーチーズ

 ソースはマヨネーズとサワークリームをベースに、ブルーチーズ、チポトレ(スモークしたハラペーニョのペースト)などを加えた、かなり個性的な一品。ブルーチーズのアノ独特の香りとザラっとした舌触りが巧い具合に効いていて、印象的。ナッツでも食べているかのような風味の良さだ。


 バンズはあまり重たくさせずに、ふわっと軽め。「お酒と一緒にハンバーガー」がコンセプトである。主張のはっきりした肉、ソースのユニークな風味、そこに絡みつく五重重ねの怒濤のチーズ……目鼻立ちのはっきりしたハンバーガー。しかも品良くまとまってなどいやしない。この「戦闘態勢」こそ、夜の店のバーガーである。

 見た目にも存在感十分、食べ応えも十分――さぁ静岡の皆さん、飲みのバリエーションを増やすときが来ましたよ!


 私の舌にはやや塩気が強く感じられたが、現状どこを食べてもチーズだらけなチーズバーガーなので、その辺多少加減して塩分を抑えても、なお「チーズ感」は十分得られると思う。特にチェダーよりモッツァレラの方がよく効いていて、食べるうちに何だか「ピザ」な気分になってくるので、ココの比率は考えても良いかと。

 「チーズ食べた〜!」感がバッチリあるので、その点申し分なし。そう、チーズバーガーと称してチーズがどっか行っちゃってるケースも結構多いのである。

●トルティーヤチップス

 付け合わせはピクルスと、ポテトではなくてトルティーヤチップス。トウモロコシの粉を原料とするアレですな。しかもココのトルティーヤ、袋開けてガサッ……ではなく、自分トコで油で揚げているのである! 確かに甘味が違う! こんな店もめずらしい。


 「1週間に1度食べたくなるハンバーガー」がもうひとつ掲げるコンセプト。実際リピート率はなかなかだそうだ。食べたとき「アレなんだろう? と思わせる」→「もう一度食べてみたくなる」、この辺りが反復のカギ。

 あと、「カールスバーグが食べ物とよく合う」という意外な発見もした。

 そもそも遭遇機会の少ない銘柄である。「おいしくない」という人も周りに数名。確かにビール単体で飲むうちは別にどうとも思わないのだが、ひとたび食事と合わせると「昼行灯」的なそのぼんやりした味わいが食事と馴染み、不意に相性の好さを発揮するのである。岐阜の「セッキーズ」も樽生はカールスバーグ。

§ §

 ハーレー乗りジャッカル氏が始めた、静岡発のカリフォルニアダイナー。ちなみに静岡県静岡市はカリフォルニア州ストックトン市と姉妹都市(旧清水市が提携)。アスパラガスで有名。

 なおジャッカルの分布域はアフリカ、ヨーロッパ南東部〜アジア南部で、北アメリカに棲息するのはコヨーテ。ジャッカルは「一夫一妻」を生涯貫き、夫婦の絆は強いとか。

 オープンから半年。店を始めた今もなお、おいしいハンバーガーを求め、草原を彷徨い歩くその姿……「ハンバーガーの狩人」とお呼びしましょうか(笑)。


# California Diner JACKAL [静岡・東静岡] のベーコンチーズバーガー

# California Diner JACKAL [静岡] のチポトレマスタードベーコンバーガー
# California Diner JACKAL [静岡] のたっぷりチーズバーガー(再食)
# California Diner JACKAL [静岡] のハンバーガー
# California Diner JACKAL [静岡] のBLTバーガー
# California Diner JACKAL [静岡] のチーズバーガーwith BBQソース
# ロコモコ ◆ vol.8 California Diner JACKAL [静岡] のロコモコ

― shop data ―
所在地: 静岡県静岡市葵区常磐町1-8-2 アスピスU2-A
     JR静岡駅歩10分 地図
TEL: 054-221-5223
URL: http://cal-jackal.seesaa.net/
オープン: 2009年3月23日
営業時間: 17:00〜24:00
定休日: 日曜日(要確認)

2009.9.29 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 17:14 | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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