2009年05月23日

# 209 Burger Boy Cafe [京都・亀岡]



 国境の長いトンネルを抜けると亀岡であった。

●丹波国

 話はまだ続く――桂川サイクリングロードの起点、嵐山からさらに川を遡ってゆくと、山谷険しくなり、やがて保津峡(ほづきょう)。トロッコ列車に川下り――新緑の候、イイ季節になってきた。


 保津川(桂川)の上に跨る保津峡駅は秘境駅として知られている。ココが京都市西京区と亀岡市との市境であり、古くは山城国と丹波国の国境であった。保津峡よりふた駅先、山陰本線(嵯峨野線)亀岡駅近くには明智光秀が築いた亀岡城の址がある。


 その亀岡駅のさらにひと駅向こう、並河(なみかわ)の駅前に、オーナー筧(かけい)さんが物件を買ったのは3年前のこと。4代住み続けた京都市内の土地家屋を手放して、こののどかな郊外に移り住んだ。

●整備士


 以前は自動車を診たり、戦車を診たり(?)、整備士の仕事をしていた。なので機械仕事はお手の物。店前に置いてあるラジオフライヤーや、店奥の壁に突っ込むミニクーパーは、すべて筧さんの手になる。ちなみにトランクの中は……宝箱!

 実にアメリカンな店内である。白黒チェッカー模様のフロアにターコイズブルーのダイナーチェア。かかる音楽はオールディーズに時折グレン・ミラーやベニー・グッドマンなど。片道2時間かけて尼ヶ崎のコストコに買い出しに通う成果が、店内の其処彼処をポップに賑わせている。


●洋食屋で仕込み

 その整備士の時の仕事先や移動途中に、よくハンバーガー屋があった。

 '71年、日本にマクドナルドが上陸して後、「そこら中でぼつぼつゝゝ出来た」ハンバーガー店の名残りが、その当時京都・近畿地方に点在していた。ハンバーガー屋とも付かぬ、まぁ要は喫茶店で、「ハンバー""をパンに挟んだみたいな」そんな喫茶メニューのハンバーガーを口にしたのが、筧さんのハンバーガーの思い出のひとつである。


 遡ることさらに前、ひょんなことからアルバイトで行った洋食屋で、スジ切って、叩いて、衣付けて……そう、ハンバー""の仕込みをしていたことがある。このときの経験が元となり、このバーガーボーイカフェを始めることになったのである。

 幾山も越えて、街からだいぶ遠い場所のように思えるが、縦貫道で京都市内まで「ズボーッと行ける」。しかも大井ICが店から3分ほどの近さ。近年ベッドタウン化も進む並河である。

●亀岡牛と「スマッシュカイザー」

 肉はご当地自慢の亀岡牛


 しかし一度は取引を断られた。高級で売りたい肉が安物になってしまう――「ハンバーガーにする」ということは、肉屋にしてみればそういう感覚のようなのである。それでも「ホンマのちょっとやったら卸して上げられる」と言われて、ごく少量から取引はスタート。

 店の上の仕込み部屋でミンチと成形をやっている。クーラーを全開にかけて、混ぜる時には手の熱が伝わらへんように、軍手の上から使い捨てのビニール手袋。10℃以上で脂が溶けだし、ミンチにした時点で酸化が始まる――鮮度の低下を最大限防ぐべく、それこそこんな「かじかむ」思いをしながら日々仕込みの作業に当たっている。

 バンズは亀岡最古、大正時代からやっている西脇製パン。小麦だけの味でおいしく作った「言うたら食パンですネ」。


 結局味が勝ってしまうんです。邪魔しだすと言うか。あんまし一等粉・二等粉になると粘りがあって、おいしいんやけどハンバーガーには合わん。トンカツ定食食べに行って「酢飯」が出て来たみたいな……(笑)。

 筧さん呼ぶところの「スマッシュカイザー(生焼けパン)」バンズ。名前通りの「生焼け」ゆえ、グリドルで10分かけて焼き上げる。

●亀岡牛チーズバーガー

 パティもバンズもサイズは2種類。レギュラー(R)はパティ120gにバンズ100g。スモール(S)がパティ80gにバンズ65g。バンズとパティのバランスから言うと、レギュラーバンズを間5〜7ミリ分抜いてレギュラーパティを挟むのが実は隠れベスト。


 メニューに載るハンバーガーも2品のみ。「亀岡牛ハンバーガー」R¥680と「亀岡牛チーズバーガー」R¥750。「言うたら1種類にチーズ入ってるか、入ってへんか」(笑)。

 亀岡牛チーズバーガーR¥750。上バンズ(クラウン)の下は、刻んだピクルス(レリッシュ)、トマト、刻んだオニオン、ケチャップ、マスタード、パティ、レタス、下バン(ヒール)。付け合わせのポテトは余すぐらいどっさり――「そやないと満足して帰れないでしょ?」

 チーズがまた手間がかかっている。豪州産レッドチェダー2枚の上からさらに国産レッドチェダーの細切りチーズを散らして、それをバーナーで「バーッと」。子曰く「フタするには鉄板の面積が要る。炙ってる方が早い」と。


 国産の牛らしい非常に甘くやわらかな味のバーガーである。抵抗無くスルスル入る感じ。余韻が良い。ただキャラクターとしてはちょっとバンズに負けてるかなぁ。バンズはビスケット風、ほんわり薄い甘味しか帯びていないのだが、それでも肉より存在感あり。両者のバランスはイマイチ。以下記す良質な野菜陣も含め、誰を主役に打ち立てたいのか、いま一度、整理が必要なように思う。

 「日本の海の塩やったら生臭いんですよ」ということで、パティには豪州産の塩を使用。たまねぎは亀岡産の無農薬。辛くなく、甘味が強く美味。このたまねぎにレリッシュとマスタードの酸味が集まって好ましいアクセントを打ち出している。加えて、レタスとトマトも収穫時期であれば、すべて亀岡産。特にレタスは大変困難な栽培条件だそうなのだが、それを乗り越えて収穫されたものは、ものすごくおいしいらしい。

●名水・亀岡

 店前に駐車スペースあり。駅からも至近なので電車組にも便利。ただ「ハンバーガー売り切れまで」という不確かさだけは、特にはるばる遠方から訪ねて行く人にとっては非常に高いハードルであるので、今後の課題として、多少の期間を要してでも、ぜひともクリアしていただきたく、何卒お願いをいたします。


 今回ちょっとした発見があった。ディスペンサーで提供するコーラには、その土地の水が使われるのである――「言うたら原液をその土地の水で薄めて出すんで、ウマイですよ」。

 「京都は亀岡もそうやし、大山崎もそうやし、琵琶湖の何倍も水がある。地下に。むちゃむちゃキレイですよ」……そぉか、どおりでおいしいと思った。都市部から離れると、そんな楽しみもあると気付いた山陰本線の旅――旅ゆけば その土地の水で コーラ飲め

§ §

 旅と言えば、『水戸黄門』の"街道を行くご一行"のシーンは、並河近くの桂川の堤でよく撮影されるのだそうで。ご参考→ TBS「水戸黄門 第39部」/かわら版




― shop data ―
所在地: 京都府亀岡市大井町並河2-3-2
     JR山陰本線(嵯峨野線) 並河駅歩3分 地図
TEL: 0771-20-7908
URL: http://ameblo.jp/0511wiree34/
オープン: 2007年10月19日
営業時間: 10:00〜ハンバーガー売り切れまで
定休日: 月曜日・火曜日(その他不定休。要確認)

2009.5.23 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 10:08| Comment(2) | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
自分は大学3年で昼休みや休日にハンバーガーを食べ歩くのが最近趣味になってます。
写真がとてもおいしそうに撮れてるので文を読むと食べに行きたくなりました。
更新たのしみにしています。
Posted by minatoro at 2009年05月25日 03:41
minatoro 様

お返事たい〜へん遅くなりました。すっかり忘れておりました。失礼いたしました。

コメントありがとうございます。大学生からハンバーガー……イイと思います!ちなみに私は大学半ばから「パン」に惹かれまして、以来十年の間、ハンバーガーを食べるのは年に一、二度という食生活が続いておりました。滅多に食べなかったですね、ハンバーガー。

そんな次第でよいキャンパスライフを!ありがとうございました。
Posted by ハンバーガーストリート at 2009年07月15日 13:46

この記事へのトラックバック