長野県第二の都市、松本。
●長野と松本
「長野と松本の仲の悪さは有名」「ことあるごとに長野と松本は対立し」「何かにつけていがみ合っている」など、この2都市間の「穏やかならぬ」関係について触れる記事をいまだ多く見るのだけれど、しかしさすがに近年、特に若い世代の間にあっては、そうした意識はだいぶ薄らいできているようで、日常彼らの間でそこまで激しい議論・討論の類が繰り広げられることは、ほぼ無いようである――ま、たまたま私が出会ったのが温和な人物だっただけかも知れないが。
ただし、松本で働く若者たちには「松本の方が良い街だ」という、我が街に対する自負があり、誇りがある。そうした「ごく穏やかな範囲」における地元贔屓や地元愛というものは、彼らの間にもしっかりと根付いている。片や長野の若者たちはどうだろう――やはりこういうことは両方から意見聞かないとネ。
とは言え、駅前を見れば両都市の規模の違いは明白。県庁所在地かつ新幹線停車駅である長野の構えには流石にかなわぬが、しかし松本の場合、再開発成った中央一丁目周辺に活気があり、特にパルコは若者の支持厚く、休日のお出かけスポットとして、一帯の中核的役割を果たしているという。
●中町通り
女鳥羽川(めとばがわ)、ガス灯で知られる千歳橋(せんさいばし)の手前、なまこ壁の土蔵が今なお残る中町通りに、コノ店はある。
つい2、3ヶ月前まで、この場所はスナックだった(って、前の記事と一緒だな)。
入ってスグが注文を受けるレジ、その奥にキッチンへと通じる出入り口が覗き、右手は待合いロビー風のソファとテーブル一組、その奥に壁に向いてカウンターが横並びに並んでいる。この見渡せる範囲がすべて……と思いきや、ドリンクのディスペンサーの後ろ、ガラス窓の向こうに広大なホールがドーンと控えていて、たじろいだ。まさに「大奥」……スイマセン。
●教会
席数40――とにかく巨大。
スペインバール風とも思ったが、聴けば教会をモチーフにした空間という。店のロゴには十字架があしらわれており、間接照明を多様した空間演出は、言われてみればアーチ型天井(所謂「ヴォールト」)にとれなくもない。
壁伝いに真っ赤なソファが奥まで伸びる煉瓦畳みのホールの奥の、そのまた奥に鎮座する椅子は何と座面ごと回転する珍品……「どこの国のいつ頃のモノですか?」と訊けば何のことはない、お向かいの増田家具百貨店で買ったものという――その辺のリラックスしたモノの考え方が好きである。
最初に注文を済ますシステム。バーガー類9品。変わり種はベーコンオムレツバーガー¥590、「BROZERS'」の必殺メニューでもあるスイートチリチキンバーガー¥590、そして「ピーナツバター+バナナ+はちみつ」でエルビスバーガー¥490。どれも500円前後で健闘する中、ほぼ全部乗せのBIGモンスターバーガーがドドーンと¥1,390で唯一の大台突破。
スタンダードU2バーガー¥690にトッピングチーズ¥100。付け合わせは無いので、メッシュフライポテト¥270。お供に地産地消でthe 信州ラテM¥390を。
●重量級
平べったいバンズの下にマヨネーズ、ピクルス、地物の色鮮やかなトマト、辛味を抜いた生オニオン、チーズ、パティ、レタス、下バンズ(ヒール)。
大きいと言うより、ズドンと「太い」バーガーである。「サクサク感重視」という特注のバンズは65gと軽め。薄くてカリカリとしたおいしさ。写真の通り、中身よりひと回り大きいのが難――なるべく直径を揃えましょう。
一方パティはドーンと150g。国産牛のみ100%で作ると「コテコテし過ぎちゃう」ので、オージーをバランスよくミックスして、つなぎ無し。コゲがやや多いのと、塩の振りがキツいのが気になったが(ピクルスが無意味になっている)、肉質のやわらかさは丁度。
量がとにかくハンパでない。「BAR+CAFE U2 桐店」「BIBIN-BAR U2 元町店」で目指す「安くてボリュームあるフードメニューを、お腹いっぱい食べて満足して帰ってもらいたい」というサービス精神そのままを形にしたのが、このバーガーなのである。しかもこの値段! まさに冥利!
まぁでも一方でアレですよ。
特に夜はサイドメニュー(おつまみ)が充実しているので、ジョッキを傾けつつ、サラダやチキンやピザやといろんな皿を摘みつつ、最後「そろそろ締め行こうか!」というタイミングで"必殺のバーガー"が登場すれば、そりゃもぉ〜見事な流れと言いますか、そういう食べ方の方が「ハンバーガー1個でお腹パンパン」より、得られる満足は結果的に高いのかなぁ、と思うのが一点。
あと、コレだけ量があるということは「同じ味をずっと食べ続けねばならない」ということなので、よほどの工夫がされていない限り、途中で飽きちゃうかなぁ……とも。バーガー全体をまとめ上げるビシッ! とした味わいを持たせたいところであります。
●ワンランク上の
1店目「BAR+CAFE U2 桐店」を始めて、今年で8年。上記2店に加え、美容室1店を経営するオーナー臼井さんは元はバーテンダー、つまり夜の人。昨年6月のオープン以来、ずっとバーガーカフェの厨房に入り続けていたら、おかげで生活がすっかり健康的になったという。
U2が標榜する「ワンランク上のファストフード」とは、単に「おいしいバーガー」と「居心地好い空間」を提供する――という意味だけには留まらない。何より「サービスの質」においてワンランク上を目指したいのだと、コレは店長・北山さんの言葉だが、まさに正論である。
なぜなら「ハンバーガー=ファストフード=おやつ」というイメージはいまだに強く、深いのである――言うなれば「相手が相手」という無謀な挑戦なのだ。だから「ウチはおいしいモノ出してるから」と、ただ黙々と作り続けているだけでは、やはり打つ「手」としては圧倒的に不足している。無敵のチャンピオンにはまるで通じないのだ。
だから、もっとおいしい・もっと楽しいハンバーガーが、もっとたくさんの人に知られ、広く親しまれるようになるためには、そうしたヒントやアイデアを店自らが率先して発信・提案してゆく必要があるだろう。お客さんとの頻繁で盛んなコミュニケーションこそが、唯一確実で着実なハンバーガー普及と定着への道である。U2の掲げる「ワンランク上のファストフード」とは、そんな壮大なチャンレンジを表明する言葉なのだ。
§ §
新宿からスーパーあずさで2時間半――松本初のハンバーガー専門店。店名「U2」とは、人にやさしくありたい――やさしいから、優=U。コレが「U」の意味のひとつ。もうひとつの「U」は……また今度にしましょうか(笑)。
― shop data ―
所在地: 長野県松本市中央2-5-13 マルタンビル1F
JR・松本電鉄 松本駅歩9分 地図
TEL: 0263-50-7677
URL: http://20070112you.blog89.fc2.com/blog-category-18.html
オープン: 2008年6月5日
営業時間: 11:00〜22:00(LO21:30)
定休日: 無休(要確認)