2008年09月28日

# 203 toms [京都・一乗寺]



 京阪のる人、おけいはん ―― そうだ 京都、行こう。

●Ichijoji Sagari Matsu(一乗寺下り松)

 そんな赤と黄(きい)の肖像、京阪電鉄から乗り継いで、ココは叡山電鉄一乗寺駅。


 駅の東は徐々になだらかな傾斜が付いて、街中とは趣を異にする住宅地。その只中に、宮本武蔵と吉岡一門の決闘(fight)で有名な、あの下り松(さがりまつ)がある。下り松の辻から緩やかな坂をさらに登れば圓光寺、八大神社、狸谷不動院など。この日は江戸初期の文人・石川丈山の山荘だった詩仙堂に長居して、夏の都の涼やかな風をしばし楽しんだ。

 本日の真の目的は詩仙堂ではなく、平らかな駅の西側。世に「ラーメン街道」と呼ばれる、西国一のラーメンの"メッカ"に隣接しつつ、その熾烈な争いをよそ目に、のどやかにハンバーガーを作るカフェバーのお話である。

●Northern Ireland(北アイルランド)

 以下、アイルランド人の店主と英語に不慣れな日本人との会話につき、軽度のルー語発症……(一部原文掲載)。


 左京区は大学が多い。お隣・修学院駅近くには京都大学の International House (国際交流会館)があり、付近には大学で英語を教える外国人講師たちが多数住んでいて、ちょっとしたコミュニティが形成されている。breakfast が絶品の「SPEAK EASY」は、そんな彼らの溜り場。

 さて彼ら英語教師たちが講義の行き帰りに stop off, 取り留めない世間話などしながら、のんびりお茶する(orお酒する)場所が、此処 toms である。店主曰く―― rest & relaxation.

 店主、Tom Brown さんは北アイルランドの首都・Belfast (ベルファース)から車で1時間、Bangor (バンガー)という街の生まれ。To be honest, フットボールよりラグビーの方が好きで(I prefer rugby)、アイルランドチームの試合は全て観たいそうなのだが(I love to watch all of Ireland games)……おっ? 9月22日からハイネケンカップ?


 6,7歳の頃、"NATIONAL GEOGRAPHIC" に載っていた Saihouji (西芳寺、苔寺)の写真に惹かれ、ずっと日本に行ってみたいと思っていた。Hirohito, 昭和天皇崩御の頃、初来日。その後香港に渡り、日本の Yamaichi (山一証券)の社員相手に英語を教えていたが、そのまま英会話講師として再来日。最初は一年日本に居るつもりだったのが二年になり、二年が三年になり、気が付けば滞在のべ18年。その間、あの NOVA などで教鞭を執っていた。修学院界隈の英会話講師仲間は、多くがNOVAつながりという。

 ちなみにYamaichiとNOVA、Tom さんの関わった2社はいずれも倒産しているが、無論当人の力に因るところではない。


●only NOVA(駅前留学)

 素敵な奥さんとも巡り会い、日本に腰を据えることに決めたので、英語を教える傍ら、何か「自分の仕事」をやろうと始めたのが、この toms である。

 何処に出すのが良いやらと、京都市内を cyclist になって探し回った。今の店は以前は簾職人の作業場。売りに出ていたのを建物ごと買い取り(I found this place when I was cycling back home from work. We bought this)、NOVAのレッスンの合間を縫って、なんと1年もの期間をかけてコツコツと、ほぼ Tom さん独りで完成させた(I reformed by myself working in NOVA, it took 1 year)。


 さすがに structure (構造部分)は大工に任せたものの、内装については日本の大工は too perfect. なのでワイヤーブラシを使ってワザと床を傷付け、壁は"珪藻quick" を自分で塗って、全体に rustic な仕上げに。想像以上の難敵はキッチンカウンターだったそう。

 細長い店内、入ってすぐが8席ほどの喫茶空間。書架には帰国した友人らが置いて行った、あらゆる種類の洋書が並んで book for sale. 窓外の石像の配置が秀逸。ストーンヘンジに代表される英国巨石文化と、室町以来の日本の伝統的庭園様式との融合か... maybe not.

 長ーいカウンターは、その長さの割りに実は3席。お昼前からチラホラやって来た講師仲間数名は、カウンターの中に回り込んでの世間話。この日は岡崎「58 DINER」のオーナー・森口さんも遊びに来ていた。カウンターと平行するように、木造の階段が2階の英会話教室へと伸びていて、奥がキッチン。Thanksgiving Day のパーティーの際には、ココでターキーを3羽も焼いた。

●good-simple(シンプルなだけじゃダメ)



 「私の好きなものが menu 」という toms 最初のメニューは「ステーキサンドイッチ」¥800。いまだに人気のメニューである。「私たちはいつも new menu 考えます」――いつも次の plan があり、a little edge, 何処もやっていない「隙間」なメニューを常に探して徐々に buildup させ、現在のメニューに至った。「Fajita (ファヒタ)」¥700〜や「Huevos Rancheros (ホエボスランチェロス)」¥700など、中米系のメニューが多い――アイルランドのふるさとの味は?

 ハンバーガーを始めたのは半年前。「こういうのが食べたかった」けど「無かった」から、自分で作ったと――。去年の秋頃より研究を重ね、trial しておいしかったので、レギュラーメニューに昇格。

 「ハンバーガー」¥700、フレンチフライ付(サラダにもできます)。あとはトッピングでハラペーニョ、目玉焼き、アボカド、ワカモレなど。一番人気はベーコンチーズ。


 チーズ¥100のトッピングでチーズバーガー¥800。パティは Aussie 100%。no filler (つなぎ無し)。サイズは quarter pounder, グラム換算およそ114g。近所の焼き肉屋でミンチャーを借りて、自分で挽いている。「No.4は細かい、ウチはNo.5……」ってプレートの穴の大きさのことネ。粗びきにして texture, つまりしっかりとした肉の食感・噛み応えを重視した。

 バンズは町の馴染みのパン屋さんにお願いしたところ、コレがヒット! セサミいっぱい、ドライだがモチッと口に残る、粘りのある生地の texture が好く、美味。肉に合う食事系な存在感。バンズの下はマヨネーズ、トマト、レッドオニオン、チーズはホワイトチェダー、赤身肉のパティにリーフレタス1枚、下バンズの上にケチャップ、マス、マヨ。

 とにかく赤身パティの texture, たくさん入っているのに邪魔にならない調味料、そしてトマトの甘味。背の高さ。シンプルなだけじゃダメ、欲しいのは good-simple (←コレ造語です)。「味過ぎても」ダメ、大事なのは balance と。

●BROWNS ENGLISH(ブラウン英会話教室)


 妥協無く迎合無く、他人の顔色を窺うこと無しに、純粋に「こんなハンバーガーが食べたい」という思いのみから作られたバーガー。その思いを貫いたところにこそ、このバーガーのおいしさがあり、強味がある。醍醐味溢れる、力強い一品。

 ハンバーガーを食べるにはクセが強過ぎると、普段私はギネスを敬遠していたのだが、まさに本場の Irish が薦めるものだから、サージさせた真っ黒いグラスを持ってきてもらったところ……コレが相性抜群! Tom の作る料理と見事なコンビネーション・プレイ。

 BGMはスティクス、ゴードン・ライトフット、ダイアーストレイツなど'70s。日々の〜んびりと、マイペースに店はやっていると Tom & 奥さんのミツミさん。看板犬、イングリッシュブルテリアの Cozmo (コズモ)はたまーにご出勤。

 2Fはアットホームな英会話教室、1Fも近隣英語教師のアットホームな集いの場――やはりみなさん "Kyoto" という共通の目的でもって遠国よりはるばる来ている人達ですから、Tokyo の busy な感覚とはまた違うワケですよ。いかにも京都らしい、「侘び寂び」効いたスローな Irish cafe ...先週25日で 4th Anniversery! Congratulations!



# toms [京都・一乗寺] のスーパーチーズバーガー TOPPING ハラペーニョ
【おしらせ】 toms [京都・一乗寺] は9月より週2日営業
# TOM'S cafe再訪記 by "タカシのB級グルメ日記"
【最新情報】 toms [京都・一乗寺] がリニューアルのため、3月20日より臨時休業

― shop data ―
所在地: 京都府京都市左京区高野泉町1-23
     叡山電鉄 一乗寺町駅歩5分 地図
TEL: 075-703-3711
URL: http://tomskyoto.com/
オープン: 2004年9月25日
営業時間: 12:00〜23:00(LO)
定休日: 日曜日・月曜日(要確認)

2008.9.28 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 18:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いやぁ、参った。修学院の一つ手前にこんな素敵なお店が有ったとは、HPも検索に掛からなかったのだろうか。半年前からバーガーがメニューに載ったという事は私の取材時期と微妙に重なっていますね。
ギネスとバンズで満足度は50%以上と推察しましたが如何。来る10月には再度上洛を予定している身としては選択肢が一つ増えました、参九縁燐寸。けだし良いお店だ。
Posted by タカシ。 at 2008年09月29日 18:52
タカシ。様

すっかりご無沙汰してしまい……スイマセン。

コメントありがとうございます。私としてはむしろ「元祖」溜まり場である SPEAK EASY に次回はぜひ伺いたいと思っております。SPEAK EASY 無くして toms も無し――でしょう。Tom さん&ミツミさんも「よく行っていた」と言っておられましたし。

"生"はハイネケンですが、コチラの店に関して言えば、やはりギネスでいきたいですネ。ステーキサンドイッチやファヒタその他ともきっと好い相性だと信じます。
Posted by ハンバーガーストリート at 2008年09月30日 00:53

この記事へのトラックバック