交通の便が良くって、静かで住みやすい。今やすっかり住みたい街の上位にランクされる[要出典]、大井町――。西口、京浜東北線に沿って大森方面に少し歩くと、程なく道は下り坂に。ちょうどその下りかけた辺りにコノ店はある――もちろん、店の運気は上り坂。
●大井町(Oi, Shinagawa City)
この大井町、都心へのアクセス良好、人気の街ではあるのだがしかし、西口は、改札出ると再開発の申し子が如き人工地盤がデンと幅を利かしているワケでもなく(ペデストリアンデッキと呼んだ方がわかりよい?)、航空障害灯が赤く明滅するタワーマンションが厳(いか)つくそそり立っているでもなく、従来の「大井町」の規格を守りながら、商店街あり飲み屋街あり、無理なくまとまったその程好いサイズが、この町最大の魅力である。ひと言で言うなら……住みたい!
さてこの店、トラストサルーン――前はJR、後ろに住宅街を従え、「帰る前にもう一杯」という使い勝手の立地である。外観は最低限のアイキャッチ、かなり抑えた感じだが、「ホントは(店内に)バイク入れちゃいたかった」というオーナー中山さんは大のハーレー好き――愛車はFXST。スペースさえ広ければ、シルバージュエリーや自作のレザークラフトの売り場も設けたかったという、長年アパレル業界で活躍していた人である。
●鉄馬の友(Dutch Oven)
デザイナーとして渋カジ全盛の頃を経験。ときには売り場にも立ったが、「洋服屋さんって、100人お客さん来たら10人買うかどうか」という、その「売れるか分からないストレス」というものが「すごくイヤで」、片や飲食業という、目の前のお客さんに全身全霊を挙げて臨めば、それが必ずや結果へと繋がる商売(「飲食店は来たお客さん全員注文をする」)に、職業としての魅力をより強く感じていた(同様のことを「LATINO HEAT」田辺さんも言っている)。
父は中華の料理人だった。門前の小僧、料理は昔から得意で、特にキャンプにおいてその遺伝子は発揮される。
HDO、「ハーレーとダッチオーブン」なる会に所属するダッチオーブンの使い手である。鍋を片手に『クラブハーレー』なる専門誌(我らがエイ出版刊)の表紙を飾ったこともある。特集タイトル「鉄馬に乗った旅人へ、ダッチ・オーブンのススメ」――割れ鍋に綴じ蓋、鉄馬に鉄鍋。
キャンプにおける本式は、まず炭を作り、その上に鍋をかける。圧力釜と同様の効果により、おいし〜いローストビーフやチキンや何やが、ただ放って置くだけで出来てしまうという手間要らず、まさに男の料理の至上。「ローストチキン」¥2,000(ゲームヘン使用。要予約)はこのダッチオーブンによる自信作。「ニンジンがまたおいし〜い!」と自慢されたが、何だよ話だけかよ、こちらも要予約(泣)。
●ジェダイ(Jadeite)
バーがやりたかった。
実家の建て替えに乗じ、その一角を間借りしてバーにしようと思っていたのが場所柄、深夜に酒類が提供できない地域であったため、食事も合わせて出すべく方針転換。父は中華、じゃあ僕はヌーベルキュイジーヌ……だけどちょっと待てよ。どうせやるんならキラーコンテンツを――ということで、己の趣味と経験の延長線上に結ばれた"交点"にはハーレーがファイヤーキングが、そしてハンバーガーが燦然と輝いていたのである。
店内は米南西部、メキシコ風なエッセンスを盛り込みつ、田舎風。ペンダントの下にはビリヤード台が似合いそうだ。テーブル8席にカウンター5席という目の届く空間に、売るほど置いてあるファイヤーキングだジェダイだ何だは、eBayで少量ずつ買い集めていった成果。棚にはホントの売り物あり、アドマグあり、佇立するmomokoドールあり、その書割はトミー・ボーリンの『The Ultimate...』であり(←限定盤)。ハンバーガーに合う「かも」との話から登場したジャックダニエルのグラスもコレ、60年代に生産されたヴィンテージもの。
●スキレット(Skillet)
メニューは簡にして要、実にシンプルで読みやすい作りなのだが、上部の英語だけなぜかファイヤーパターン。
バーガー7品。チーズバーガー¥1,100。フレンチフライにピクルス、さらにはオニオンリング("オニリン"ね)まで付いてコノ値段とは安っ! バンズの下におとなしめのタルタル、それを乗せたトマト、レタスは玉、チーズはチェダー、パティの下にグリルドオニオン、下バンズ。
バンズはなんと自家製。朝食の食パンはずっと自分で焼いていたという。「もっちり」とした食感と風味を出すべく、水でなく牛乳を使用。神戸屋キッチンにハースブレッドという、やはり牛乳を使ったパンがあるが、まさにあんな感じの、目の詰まったやや重めな生地で、その「自重」を使い、上下から中の具材を巧く挟み込んで、ハンバーガーとしての安定感がある。
パティは100g。100%穀物肥育のオージー(と、和牛の脂)。スキレットの遠赤効果で、しっかりした焼き上がり。赤身メインの締まった肉感で、この噛み締める食感が巧く効いて、赤身がおいしいハンバーガーにまとまっている。確かにジャックダニエルはいけるかも。
邪魔をしないバンズのサポートが良好。オニオンは「水にさらすと養分抜けちゃうので」グリルに。少し甘味が目立ったが、帯びた熱がまたバーガー全体に好影響。あとセサミのひと乗せでもあれば変化が付いて、さらに良いだろうか。どこかにキュッと締める味が欲しい。良質な食材と精緻な研究に裏打ちされた、まさに信頼のバーガー。夜のお店なのに何だか健康的。ドラフトは水のようにゴクゴクいけるバド――夏向きである。
●安全と信頼(Trust)
バンズが自家製ゆえ1日に10〜15個程度と、出せる数は少ないが、その分手をかけ、材料を吟味し、品質の良さと安全・安心を掲げてやっている。信じられるものだけを使い、信じられるものを提供する――食の安全と信頼が大いに揺らぐ今日なればこその、大いなる挑戦である。
「ベーコンエッグバーガー」¥1,200に使う玉子は、千葉県某所の山中で放し飼いにされているシャモの産。濃厚な黄身の色と表面の隆起が猛烈に食欲をそそる(が、入荷できない日もあり)。
信じられる友と酒を酌み交わし、信ずる音楽、バイクを語り合う――ジェダイの食器群のおかげか、カウンター周りはすっかり翡翠(ひすい)色。近所に欲しい、ちょいちょい腰を落ち着けたくなる店である。
この夜のBGMと言うか"BGV"は、1本目『ゴーストライダー』('07)、ニコラス・ケイジ跨るはパンヘッドの"チョッパー"。2本目が傑作! 『プッシーキャッツ』('01)、正直一発KO! 何でコレが日本未公開? いいから観なさい。見どころ満載のクセになる面白さ(こういう精神の雑誌が作りたいのだよネェ……)。
こうして幼気(いたいけ)な客がまた一人、酒場の主の術中にハマってゆく……それでも平和な大井町の夜。
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― shop data ―
所在地: 東京都品川区大井4-10-7 アルテール大井1F
JR京浜東北線・りんかい線・東急 大井町駅歩5分 地図
TEL: 03-5742-3302
URL: http://www.trust-saloon.com/
オープン: 2008年5月10日
* 営業時間 *
火〜土: 18:00〜26:00
日曜日: 14:0018:00〜24:00
定休日: 月曜日(要確認)
本日、TRUST SALOONさんに行って参りました。
お店の雰囲気とても良かった、外観が控えめで隠れ家的な所が良いですね。
そんなワケでついつい飲み過ぎてしまいました。
ベーコンチーズバーガーをお願いしたのですが、全体が良くまとまって安心して食べられるバーガーと感じました。
コメントありがとうございます。
Xeno さんの評、実に的確だと思います。リラックスできる店ですよね。
故意に殺虫剤が混入されるような世の中なんで、こちらのお店では安心・安全には特に重きを置いていらっしゃいます。