2008年05月22日

# 198 SEA DINER [福岡・西鉄平尾]




 舞台はふたたび博多。「トマトファーム」のある高宮から西鉄福岡(天神)へひと駅戻って、平尾の駅――。

●クルマ好き

 ここ平尾は住宅街とオフィスが混ざり合う、境界線のような場所であるという。駅から歩いて2分足らずの好立地に、この輝くアメリカンダイナーが出来たのはちょうど10年前。

 オーナー馬場さんの終わり無きダイナーへの挑戦は、自身のクルマ好きからスタートした。アメ車の雑誌を眺めるうちに、興味の対象が背景のダイナーへと拡大、ついには自分の手で再現してみたくなった――しかもなるべく"忠実"に。

 のべ10年近く、イタリアンをはじめさまざまな飲食店を渡り歩いた人である。ダイナーオープンを決意したのが20代の前半。始めたのが27歳。始める際には親戚一同全員反対の憂き目に遭い、「いつか見ておれぇ〜」的悔しさをバネに買った愛車がシボレーのC/K・94年製という、根っからのクルマ好きである。

●目指すは「ふつう」

 店は道路よりやや奥まって在り、店前には駐車スペースがゆったりと確保されている。


 ステンレスボディに青いネオンがクールなファサードを一歩入ると、店内は戸惑うくらいにガランとしている。白壁に掛かるROLLING ROCKのプレートと、ベンチシートに並行して横一線に取り付けられたマガジンラックを除けば、装飾らしい装飾はほとんど無く、殺風景にすら感じられる。

 これまで見てきたダイナーは、無数のネオンサインがきらめいて、ジュークボックスありピンボールあり、天井にはファンが回っていたりと、こってり濃厚&ド派手な、極めて彩度の高い場所ばかりだったが、引きかえコノ店のシンプルさはどうだ。その辺りの匙加減こそ、馬場さんのまさに意図するところなのである。目指すは「ふつう」――。

 「いかにも」なアメリカン雑貨で飾り立てるのでなく、実際に向こうで使われているモノ――シュガーポットやナプキンディスペンサーを始めとする店舗用品、プロ向けに造られた厨房機器など――アチラの店舗で「ふつう」に業務で使用されているモノを使ってこそ、真にアメリカらしいダイナーなのではないかと。


●BUNN


 特に米国BUNN社製のコーヒーブルーワーは馬場さんの大のお気に入り。しかし値段が"べらぼう"なら大きさも"べらぼう"、消費電力に至っては極度に"べらぼう"という……まぁその辺からして、アメリカらしいと言えばらしいのであるが。

 壁にいろいろ飾っていた時期もあったが、今ではほとんど外してしまった。当初あったカウンター席も、大量の注文をこなしながらの応対の難しさもあって今は無く、代わりにコロナライトが一直線(アルコール度数3.8度)。そしてフロアにはパッキリと色鮮やかな青いベンチシートが、不思議な重量感を伴って配されている。

●白と青

 色使いは白と青――。はじめ「SEA DINER」と聞いて、百道(ももち)辺りの海縁(うみべり)で、潮風とカモメの鳴き声に混ざりやっている店を想像したのだが、実際のコノ店は駅至近かつロードサイドという、願ってもないこんなオイシイ立地に着けている。


 昼はパスタ、ピッツァ、ホットドックなどでランチセットを出し(いずれも終日食べられる)、夜ならバッファローウィング、フィッシュ&チップスなどの王道的サイドメニューももちろんあるのだが、圧倒的一番人気はやはりハンバーガー。

 「人気過ぎるくらいの人気」になって、今では半ば「ハンバーガー屋」のイメージにとらえられている辺り、馬場さんにはいささかバランス悪くも思えるのだが、それでもハンバーガーはダイナーに無くてはならない「マスト」メニューであるだけに、今後も力を入れてゆくことに変わりなく、すると益々人気が高まって……と、おいしい「ループ」は延々繰り返される。でも極めたいのはあくまで「ダイナー」と。

●190g

 バーガー7品。パティはなんと190g! ヨコに広げて厚みをなくし、食べやすさを重視した。チーズバーガー¥950。野菜は外に出た状態で供される。挟むと上からクラウン(上バンズ)、タテに切ったディルピクルス、分厚く切ったトマト、レッドオニオン、レタスはポピュラーな玉レタスとリーフレタスの2層構成、ケチャップベースのバーガーソース、チェダーチーズ、パティ、ヒール(下バンズ)。


 和牛と米国産牛を合わせたパティは、コレが一見粗雑な感じに見せながら、脂豊かで「実はおいしい」というフェイントもの。コショウの振りも適量。バーガーソースがまた的確な量と役割で、たださえ大きなこのバーガーをストレスなく食べ続けさせることに十二分に威力を発揮している。でも、さすがに最後の4分の1はキツかった〜! (ちなみにこの日、5バーガー目にて……)

 添えられたマヨネーズを乗せるとコクが増して、深みのあるマイルドな味わいでいただける。あとはもう少ししっかりした生地のバンズを選べば、さらにおいしさが増すだろう。パティに合わせてヨコに大きなバンズなので、何度も口に運ぶうちに、手を添えた辺りから次第に千切れていってしまうのがやや難。いかにもアチラらしいダイナミックで大味なビジュアルを体現しつつも、しっかりおいしいという、内外両面を併せ備えたバーガー。なにしろ迫力!

●アメリカンベーコン

 ミラーの樽売りが終わり、ビールは今は瓶のみ。この日のお供はオーナー推奨のミラーのMGD。付け合せに太めのシュースト。BGMはNYのFM局の放送がリアルタイム。ネオンの似合うロックが賑やかに流れていた。


 サンドイッチ、クラムチャウダー、パンケーキ、レモネードといったダイナーの王道が現在メニューから姿を消している一方で、「これはヨソに無いでしょ!」という、まさにダイナーの神髄的必殺メニューがアメリカンベーコン¥700。目玉焼きにハッシュポテト、そしてしっかり焼き込んだ米国産ベーコンが丸いプレートに無造作に乗った涙モノ――かなり趣味入ってます。コノ店の紹介は、あるいはこのプレート一枚で足るかも知れない。

 フランスやイタリアや中国の食堂を再現するのに、ここまでの情熱を燃やす人はあまり居ないが、なぜかアメリカの食堂だけは、一生を懸けるに値するほどの憧れの対象となっていることは、冷静に考えると不思議である。案外と……上に挙げたどの国の料理よりも「文化」と結び付いて語られることの多いのは、実はアメリカ料理であるかも知れない――まぁいろいろと理由も思いつくワケですが。しかし大変な国と絡んでしまったなぁ。

 オーナー馬場さんの志向する「ダイナー」への道のりは、10年を経た今にしてなお半ば。アメリカから取り寄せた自慢のメニューボード(コルトン)を壁の端いっぱいまで延ばすことが夢という、「ダイナー道」永遠の求道者の店。



扉の向こうにダイナーがある

― shop data ―
所在地: 福岡県福岡市南区高宮1-1-10
     西鉄天神大牟田線 西鉄平尾駅歩2分 地図
TEL: 092-522-8299
URL: http://www.seadiner.com/
オープン: 1998年10月28日
営業時間: 11:00〜24:30(LO24:00)
ランチ: 11:30〜14:00
定休日: 第1・3・5月曜日(要確認)

2008.5.22 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 16:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして、大熊猫庵(panda_an)といいます。

私もバーガー好きなんで、ここのサイト参考にしてます♪

ひさびさに覗いたら、私の大好きな『SEA DINER』
が紹介されてる!
なんとなくうれしくてコメント入れちゃいました。
あのボリュームとアメリカンな感じがいいんですよね〜

『SEA DINER』、私のblog"大熊猫庵"でも数度登場してます。
他のバーガー店も気まぐれにUPしてますので、ご参考下さい(^^)v
Posted by panda_an at 2008年05月24日 10:47
panda_an さま

お返事大変遅くなり、ごめんなさい。
コメントありがとうございます。

音に聞くSEA DINER、早10年だそうですからね。アメリカの食文化が今ほど良く知られていなかった頃からのお店ですから、苦労もひとかたでは無いでしょう。

とにかくアメリカンベーコンを食べ逃したのが痛恨で、そして次回への課題となりました。また行かねばなりませんね。


そんな次第でいつもありがとうございます。
またよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2008年05月30日 21:41

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