YONOJI
New American Food & Bar
ご存知の通り、札幌は碁盤目状の計画都市なので、現在地および目的地の見当を付ける上では至極便利であるのだが、しかし旅人にとっては何とも移動が不便な街である。たぶんあらゆるものが道に沿って、長く長く伸びる傾向にあるからではないだろうか。
●お引越し
かつては南六条西17丁目にあったコノ店、昨年12月に引越しを敢行し、南二条西7丁目へと移転して来た。中心地にグンと4条分近寄ったことになる――と、この辺の移動距離の把握も札幌では容易である。
狸小路のほど近く。ちょうどこの7丁目アーケードのみ改築を逃れ(計画から外れ?)昔のままの姿を留めている。セリの終わった中央市場のような、ややガランとした空気。
「M'sスペース」という建物の名前から、イベントホールのような外観を想像していたら、あにはからんや、東京なら新宿〜中央線沿線にでもありそうな、低層の老雑居ビルであった。
聴くところによると、建物全体が「酒豪共和国」であるらしい(……共和制か)。しかもコノ店、狭い通路を入り込んだ2Fの「奥のまた奥」にある。この奥地一帯には文系サークル、さらに言えば演劇系のサークルが群れ集う学生会館のような、実にアングラなニオイが立ち込めている。
●黒い螺旋階段
以前は美容室が入っていた――それも微妙に不自然。
エクステリアは洋食屋的。入ると一瞬カフェ的、店奥には白いL字のカウンターがデンと鎮座し、バー的。横を向くと黒い階段が螺旋を描いて上昇しており、2階(地上3階)が存在する。ココはベンチにクッションなど並べて、屋根裏的(?)。入り口の佇まいからは想像もつかぬ、40席を誇る大所帯――最初の店が14席だったので、一挙に3倍増ということになる。
カウンターはじめ、酒瓶の収まるキャビネットに椅子や机――これらインテリアの大部分はオーナー夫人"JUMBO-M"が女手一つ、ほぼ独りで組み立てた。メニューやフリーペーパーも自作……ってコレがまた凝りまくってるワケですよ。まさにカフェ道の「鑑」のような人である。
ちなみにこの日、黒ラブのカツヲはお休み。螺旋階段下の定位置は空席だった。
●ドイツのアメリカでイタリア
オーナー鈴木さんがハンバーガーを始めようと思ったきっかけが、また複雑にして奇妙である。
鈴木さんはドイツでハンバーガーと出会った……おっ!さてはハンブルクか?と思いきや左にあらず。内陸の小都市ハイデルベルクに留学していたとのこと。
隣町(と言ってもこちらの方がハイデルベルクより大きい)マンハイムにイタリア人が営む食堂があった。ピザやパスタをメインに、惣菜なども扱うデリカテッセン的な店だったのだが、そこで出て来たハンバーガーに鈴木さんは強い衝撃を覚え……ん?「ドイツ」で「イタリア」人の作るハンバーガーに感動??しかも鈴木さんが留学していたのはアメリカ系の大学という。
●二代目継承
いつも夫婦二人で「いつかカフェやりたいネ」と話していた。
そんなところに折良く、鈴木さんのご両親が営む居酒屋「酒菜屋 よのじ」の「もう閉めるから」宣言が電撃的に下され、そんなことならと息子夫婦が店舗と名跡をそっくり受け継いで誕生したのが、KITCHEN YONOJI+Jr.――文字通りの「よのじ二代目」である。
場所は南6西17。内装そのままで飾り付けだけ好きなようにアレンジ。同地で4年近く続けたが、手狭になったため、思い切って現在の南2西7に引越した。周知も十分でない、わりと突発的な移動だったという。かくしてYONOJIは「M's諸島」に上陸を果たしたのである(ほぉ、諸島か)。平成19年(2007年)12月25日のことであった。
●デラックス
メニューのコンセプトは「自分が好きなもの」で「自分で作れるもの」。「世界基準対応型創作多国籍厨房」というサブタイトルの如く(?)、ダイナー的食事メニューがメイン。中でもオープン当初からあるハンバーガーは最大勢力を誇っている。
"狭義"のバーガーは現在5種類。コノ店では「ビーフパティを挟んだもの=ハンバーガー」「それ以外=サンド」の呼び分けが徹底されていて、その他ポーク、チキン、ステーキなど挟んだものまで含めて、バーガー/サンドは全15種類になる。
このうち5〜6種類は毎年新作が発表される、言わば「年替わりバーガー」。コレらを総称してデラックス・キラー・バーガーなる名前が付いている……ん?キラーバーガー?
●サルサとモヒートの対決
デラックスチーズバーガー\1,000。どれも頭に「デラックス」と付くのだが、何かをサイズアップしたとか、トッピングを豪勢にしたとか、そんな意味合いでなく、そもそもデフォルトがこの呼び名である。
巨大。2つに切った状態で供される。バンズは「フランスパンを意識したドイツコッペ」で(?)がっしりと身の締まった、ハードな食感。中はサルサソース、チェダーチーズ、トマト、そしてパティは200g!
ガーリックのよく効いたサルサソースがチェダーチーズ&パティと合わさると、まるでパスタな味わいに。しかしガーリックもココまで効くと、さすがに効かせ過ぎだろう。JUMBO-M推奨、ミントの葉の天然メントール成分が威力絶大なクラシックモヒート\650が颯爽と挑みかかるも、食事後の後味でサルサに力負け。中和のためにサワークリームかワカモレでも投じたいところだ。
圧倒的ボリュームなので、酒を傾けながら2人で分かち合って食べると、一層おいしく楽しめることと思う。そのサイズを考慮してポテトは別売、付け合わせ無し。
●中央線か
「ランチやりたい」が次なる野望――おぉ、偶然にも最近、同じ思いをついに実現させた店を私は2店知っている。成せば成る!まずは土曜日を昼から営業にするとか。
昨年行ったコチラ以来、久々に奇天烈なお店。そう考えると「中央線テイスト」と説明しておくのが最も近いかも知れない。2度目以降の訪問で俄然楽しさの増す、あまりにも怪し過ぎる一店である――なんかヤバイ店知ってしまったなぁ。
― shop data ―
所在地: 北海道札幌市中央区南二条西7丁目 M'sスペース2F
札幌市交通局 大通り駅歩10分 地図
TEL: 011-233-0708
URL: http://www.yonoji-jr.com/inde.html
オープン: 2003年1月7日
営業時間: 18:00〜27:00
定休日: 日曜日(要確認)
2008.5.9 Y.M
ヨノジのバーガーはほんっとにおいしくって
大好きです♪
たくさんの人に味わってほしいと思います☆
コメントありがとうございます。
こちらのバーガーはとてつもない「巨艦」バーガーですけど、あのミステリアスな店の雰囲気も込みで、おいしくいただけますよネ。久々に出会った底知れないダークな闇を持つお店です。ほんとはもっと足繁く通いたいのですが。絶対面白いはず!
ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。