話変ってココは北国、札幌。
●妖しのブログ
福岡にホークスあり、アビスパあり。札幌にはファイターズあり、コンサドーレあり。そして福岡も新千歳も、ともに鉄道が直下まで乗り入れている空港であり――。
さて、いとも面妖なるこの店のブログを発見したのは春3月。スポーツ紙の見出し的な(?)思わせぶりな記事作りを信条としているそうで、おかげで見てるコッチは視界5メートル、どんな店だか皆目見当が付かない――まぁそれこそが狙いではあるのだが。まだ雪残る春の札幌に、謎のベールに包まれた、何ともミステリアスなコノ店を恐る恐ると訪ねてみたのである。
●ディープ東区
札幌駅から徒歩10分弱といったところ。東区にある。地図を眺めて、駅より続く繁華な飲み屋街の一角にでもあるのだろうと予測を立てていたのだが、札幌駅の周辺は意外とすぐに静まり返る。
この辺り、40年前には国鉄関係の官舎が林立し、そのお膝元として大いに栄えた繁華街であったが、今では昔日の面影薄く、代わりにすぐ先にファイターズの練習場のあることから「ファイターズ通り」なる新たな名を授かって(旧称「ななめ通り」)、渋く盛り上がっている。
立地のよくないこんな場所を、オーナーKOZYさんはあえて選んだ。「ディープ東区」「秘境」などと、愛を込めてそう呼んでいるらしい――案外と「奥深い」土地という。
●中興の祖
業界一筋20余年。高校3年間は駅前通のロッテリアでバイトしていた。これがKOZY氏にとっての「バーガー原風景」だろう。大阪の某調理師学校を卒業後、10年近く関西で活躍する。
最初京都のフレンチなどで調理の経験を重ねたが、当時流行りのギャルソン(ホール、給仕)を目指してみたくなり、大阪でホールワークに転身。さらに縁あって某ビールメーカー直営のビアレストランにマネージャーとして迎えられ、以後、寺町の市場小路など、マネージャー業が相次いだ。
北海道に戻ってからも、すすき野界隈でマネージャーを歴任するが、8年前、ついに自身の最初の店を北二十四条に構えた。飲み屋である。
しかし迂闊(うかつ)にも(?)、ついついお客さんと一緒になって遊んでしまい、売り上げをコトゴトク使い果たす。これ以上遊んだら……というギリッギリのところで、かつての上司からお呼びがかかり(まさに天の声)、再びすすき野戦線に復帰。以来、赤字店舗を建て直すことにかけては右に出るもの無き「建て直し屋」「中興の祖」として一名を馳せた。
で、とりあえずひとしきり目覚しく働いたし……というところで構えた二度目の店が、この東区のバーガーBARなのである。
●飲み屋でバーガー
何十人ものスタッフを陣頭指揮してきた司令官が独りきりで始めた店である。すすき野からは一度離れ、静かな場所でゆるくやりたいと考えていた。
ラーメン屋の居抜き物件を探していた。自分のキャパというものを熟知していたので、独りでやるにはその程度のサイズがちょうどよい。イニシャルコストも抑えた方が賢明――ということで確かに費用はかかっていない。
どう見ても飲み屋な外観である。入るとカウンターのみ7席――やはり飲み屋である。カウンターを挟んで、黒シャツに黒ネクタイ姿のKOZY氏――益々もって、やはり飲み屋である。
「ハンバーガーとアルコール」というこのシチュエーションは、KOZY氏自身もかねてより欲しかったハンバーガーの楽しみ方である。
半ば否応無きこの状況には、競走馬のゲートインにも似て、何やらゾクッとテンションの上昇を覚える。世が世なら「武者震い」ですな――あぁもちろん、ソフトドリンクも各種ございますので。
当初目標は「東区のニーズに受け入れられること」だった。基本的には住宅街であり、小ビジネス街の裏手でもある。「地域的な中でやってゆくべき」と考えていたが、しかしフタを開けてみれば案外といろんな人がやって来る。夜だけ営業の店では入りにくくなると思い、昼間から開けておくことにした。営業時間は12〜24時。
●ゆるくやりたい
どうも飲食という仕事は、一歩間違えると職業そのものの面白味や喜びを忘れて、ビジネスばかりに目が向いてしまう傾向にある、とKOZY氏。「この仕事に喜びを感じられないようなら、違う仕事で稼げばいいんじゃないかな」と、何よりもそんな思いから、昨今の飲食店に見られるそうした「ハードな体制」とは対極の「なんとな〜く」「ゆる〜く」やる店を目指して、コノ店を始めた。
バーガー類11種。サーモンフィレバーガー\480、KOジンギスカンバーガー\680、帆立ホワイトソースバーガー\680など、北海道らしさを活かしたメニュー多々。他にドッグ、パスタ、ロコモコ、カレー。えぞ鹿の生ハムなどのおつまみ各種。当然アルコールも各種。もちろん生はサッポロ。
チーズバーガー\580。パティは国産牛100%。注文を請けてから計量、成形する。なにぶん手狭にて、これを焼くのはフライパン。KOZY氏いうところの「昔バンズって確かこんな味だった」という白いバンズは、表面硬めでツヤなし&ゴマなし。卵たっぷり。淡白でカチッと締まった食感である。クラウン(上バンズ)を小さく切っている辺りが非常に好感。バンズの下に粒マスタード、ピクルス、ケチャップ、道産のとろけるチーズ、パティ、オニオンはスライス、マヨネーズ、レタス、ヒール(下バンズ)。
全体比において若干パティが負けているのと、ケチャップとマヨネーズの量が多く、ややコレに持って行かれている点が気になったが、酒場のバーガーらしく胃袋に収まり良い、ちょっとしたサイズであることに何より満足した。出来たら軽いJAZZをバックに、生ハムなど2,3種類のつまみを経た後、「締め」でバーガーにゆくのが"乙"かなと。
●理想へ向かって
行く行くは100%道産食材を目指したいという。TREASURES山田氏も同様なことを述べているので、これは道産子共通の願いかも知れない。5〜9月だけ有機野菜が使えるという。
◆
このバーガーBARは、キャリア20余年のベテランKOZY氏にとって、真に理想の飲食業へ向けた「スタート」である。
自分で店を持つなら「ハンバーガー」という思いは以前からあったというが、それにしても20数年積み上げたキャリアの上にさらに打ち立てるこの新たなるスタートに、よりによってハンバーガーが選ばれたというのも何やら不思議と言えば不思議、光栄と言えば光栄(?)な話である。おそらく、さまざまな可能性がミニマムに凝縮されている点が、ハンバーガーという食べ物の何よりの魅力なのではないかと、KOZY氏の理想を前にして、ふと思った。と言うワケで>KOZY隊長……カウンター差し向かいという「地の利」を活かし、その魅力について大いにしゃベくり倒して下さい。
常に「まるはだか」で居たい――というオーナーKOZY氏が、裸一貫……ではなく、何ともミステリアスな黒いベールの向こうに正体をチラつかせながら営業する、東区の"謎多き"迷店。
― shop data ―
所在地: 北海道札幌市東区北七条東4丁目28番地
JR・札幌市交通局 札幌駅歩10分 地図
TEL: 011-827-5403
URL: http://ameblo.jp/kozy-sburger/
オープン: 2007年12月10日
営業時間: 12:00〜24:00
定休日: 不定休(要確認)
2008.4.28 Y.M
さすが、パティの評価あたりに私との差異があるところ、私の実兄と嗜好が似ているかもわかも。
L.A.等の「サンドウイッチ(yonojiタイプ=バンズの違い)」でもなくて「てりやきバーガー」でもなくて「佐世保バーガー」でもなくて「ハムバーガー」(リサのマスター曰く、ハンバーガーをバーガーと略すのはゆるさん)の味に慣れ親しむと、パティがマヨケチャに溺れてる段階で許せない・・ってやつですね。
いつもコメントありがとうございます。そして先日はどうもすいませんでした。
基本的にはおいしいなと思えれば、それで良いのです。だから「ケチャップ味で唸らせたい」という話であるなら、かつそれが意図したとおりに美味しいのであれば、それはそれでOKなのです。また非常に粗悪で安い肉を使っている場合には、ケチャップ&マスタードがそれを巧くカバーしてくれる役目を果たします。
逆に「お肉の味を第一に活かしたい」となれば、過度のケチャップは邪魔になりますし、「トータルのバランスを味わって欲しい」というなら、全体を見て分量を決める必要があるでしょう。
こちらのお店は別にケチャップ&マスタードで「誤魔化さねば」いけないような安いバーガーを出しているお店ではないので、バーガー全体の味がケチャップに支配されるような配分は、ちょっと「もったいないかな」という話になるわけです。
なのでたとえ「ケチャップの海」であっても、それがそのバーガーにふさわしく、かつ美味しいのならOKですよ。
そんな感じでしょうか。
ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。