出だしはやや重く――。
●思い詰める
オーナー城後(じょうご)さんは大学・就職・結婚まで、生まれてこの方、ずーっと博多で過ごしてきた。この間さまざまなことから、日々の生活に行き詰まりを感じ(しかも夫婦ともども、それぞれに)、思い詰めた果てに「一度博多を出て、別なところでイチからやり直そう」と結論したのである。「ハンバーガー屋やります」と言って10年勤めた会社を辞めた――そう言われて受け容れた上司も上司である。
とは言え腕の覚えは学生時分、モスバーガーでバイトしていた程度。どうせやるなら外人に見てもらおう、彼らに「YES!」と言わせれば、どこででも通用するんじゃないか――と、そんな思いを胸に、新天地沖縄へと飛び立ったのである。
●沖縄へ
移住後しばらくは、ひたすらのバカンスモード。合間に物件探しと試作を続けた。ある日散歩中、空き店舗の看板がふと目にとまり、そのままそこがバーガーズ創業の地となった。
那覇から車で40分、北谷(ちゃたん)という町にある。300〜400坪はある広大な駐車場の端にポツンと建つ、元焼き肉屋だった木造店舗を明るいクリーム色に塗り替え、いかにも南国らしい開放的な店にリニューアルした。店内16席+テラス最大20席、向かいは安良波公園、その向こうはアラハビーチ――たまらぬロケーション! (→地図)
用あって行く場所でもなし、しばらく客入りはサッパリだったが、やがて徐々に日本人もアメリカ人も来始めて、特にアメリカ人はバーガー食べて泣いて喜んだという。沖縄のburgersは極めて盛況だった。
その成功を見て、商売に「不向き」とされていたこの場所に、後から8店が続いた。のんびりした場所で気ままにやっていた筈が、急に気忙しくなり、手狭になり、煩わしさが生まれ、お子さんが小学校に上がるタイミングだったこともあり、福岡に戻ることに決めた。
かくして4年弱続いた沖縄のburgersは'06年2月に閉店。同年10月27日に福岡市南区野間二丁目に再開した――という次第。なお北谷の店舗跡は、現在別のバーガー店になっているが、両店につながりはない。
●野間へ
本当は街中に出したかったが条件合わず、この近郊の物件に決めた。高宮駅から歩けばバス停3つほどの距離。野間2丁目の交差点、あるいは野間のトンネル(筑紫丘トンネル)の入り口などとも言われる、ソノ所在地。
ドラッグストア級に大きな店である。どうせなら街中ではできないことをやろうと、その大きさを「ムダに大きく」使っている点が何より魅力。このガランとした奥行きこそ、南国リゾートの空気そのものである。ホールも大きければ、キッチンもまた巨大。「せせこましさ」の一切無いのが痛快だ。
床に板を張り、壁はカラーガイドで色指定した特注色――沖縄の店と全く同じ配色にした。ただし野間のこの店は、総壁面積があまりに広過ぎて「こげんすると!」というくらいペンキ代がいったと。
このだだっ広いフロアに並べられた椅子、ソファ、スピーカー、ピンボール――ひとつひとつ語ってゆけば、底無しの薀蓄が繰り広げられるだろうことは火を見るよりも明らかなのだが、しかし今回はスペースの都合上、涙を呑んで省かざるを得ない。特に続く見出し↓を見て狂喜乱舞、泪にむせばれし諸兄諸姉は、ぜひとも一度オーナーとお話しされんことをオススメせん。
●サウンドストリート
ところで城後氏のアメリカ好きは中学生の頃から始まっていた。
きっかけは『アメリカン・グラフィティ』。劇中登場するクルマ、ファッション、音楽に次々と心奪われた。とりあえずYMOを聴くのをやめ、ロックンロールからロカビリー、そして14、15歳にしてドゥ・ワップに辿り着く。NHK-FM毎週木曜夜9時放送、山下達郎がDJを務める「サウンドストリート」を愛聴し、エアチェックしたテープは200本。愛用のテープはTDKのAD60ですよ!
その他古着の造詣(特にジーンズ)など深遠極まりないものがあるのだが、長くなるので割愛……。
そんなアメリカ好きが造ったコノ店だが、しかしどっぷり&コテコテに造り込むことはしなかった。むしろ誰にとっても居心地好く、過ごしやすい空間を心がけた結果出来上がったのが、コノ店である。
●和牛の自家製ミンチ
さてバーガー類15品。ドッグ3品。アルコールも各種。
チーズバーガーレギュラー¥730。食パン生地に近いバンズは、焼いた表面がカリッとライトな食感。エッジもカリッと印象的。
和牛のブロック肉をスライスの状態で仕入れ、チョッパーで二度挽きにミンチして手作りするパティは、丸く高さがあって、ハンバーグ的。しかし身の詰まったタイトな食感で、しっかりと歯が突き通ってゆく感じである。和牛だけに後味やさしく、やわらかく、食べやすく、何ともマイルドな旨味が支配する。溶かさないチーズの上から特製ソース。全体に明快な味わい。
この日のバンズの出来が大き過ぎたか、パティとバンズの直径が著しく違い、両者が重なり合う時間が少ない、ないしはパティに到達するまでの時間が長くなってしまう点が難。あと出来たら新鮮野菜をふんだんに使って欲しいかな。「パンと肉だけ」というバーガーに、一般的な理解が果たしてどこまで着いて来るだろう――という疑問も多少ある。
しかしここまで「肉」を全面に押し出したメニューもそう無いかも知れない。コノ店のバーガーは、多くのメニューがパティを中心に、それに合う「+α」という考え方で組み合わされている。安心・安全疑いなしの手作りパティだからこそ胸を張ってアピールしたい、オーナーの強い自信が窺える。
●とろけるアーバンリゾート
付け合わせは太めのシュースト(フレンチフライ)とタテに切ったピクルス。
食の安全に対する関心の高さも手伝い、特に主婦層に人気がある。こどもたちの大好きなハンバーガーを安心して与えられること、そして広々としたフロアにベビーカーを押したまま乗り入れられることも利点だろう。専門店として、自分たちの作るハンバーガーの安全について堂々と語れることこそ、ファストフードとの何よりの決別である――と城後さんは語る。
こんな気持ちのイイ店、近所にあれば間違いなく通い詰めている……いや、入り浸っていることだろう、きっと。南国沖縄の光と風と波音を伝える、極上の骨抜きアーバンリゾート――ついつい現在地を忘れます。
→ 【最新情報】 3月18日、burgers [福岡・高宮] が警固に移転、再オープン
― shop data ―
所在地: 福岡県福岡市南区野間2-5-13
福岡県福岡市中央区警固1-6-56 サウスガーデン1F
西鉄天神大牟田線 高宮駅歩15分 地図
西鉄天神大牟田線 西鉄天神(福岡)駅歩10分 地図
TEL: 092-512-1259
092-716-3221
URL: http://www.burgers-japan.com/
オープン: 2006年10月27日
2011年3月18日
営業時間: 11:30〜22:00
定休日: 水曜日(要確認)
夜行きたいなぁ〜。
コメントありがとうございます。
そうそう、ピンボールマシーンがポイントかな?個人的には。