2007年11月26日

# 191 Boots [外苑前]



 恋とお酒とブーツバー……五反野のパブ、クローバーに引き続き、お酒の話――。


●TRADER VIC'S


 外苑西通りから一本入った路地裏に昨年'06年4月にできたバー。やはりこういうお店は表通りに面してあるより、こうして一本なり入り込んだ処にある方が、ホッとするものだ。それこそ路地端にうずくまるネコに挨拶すれば「ニャー」と返ってくるような、そんな路地裏である。半地下というのがまたよい。


 オーナー奥山さんはコノ店を始める以前は、ニューオータニにあるTRADER VIC'S(トレーダーヴィックス)でシェイカーを揮っていた……なんて言い方はしないか。そう、例のマイタイ発祥の店。ウォーレン・ジヴォンの歌にも出てくる。ココで飲んだホットバターラムがきっかけで、以来私はラム酒好きになったのだが、その話は後述……。


 ホテルに勤めた当初は宿泊部の配属で、ベルボーイなどをしていたのだが、それが突如「酒に目覚め」て、「手に職を」と一路、酒の道を目指すことになるのである。


 バンバンと叩き上げられた末、独立。ココ南青山に店を構えた。「落ち着いてできるから」というのがコノ場所を選んだ理由である。自分のペースで好きなように仕事した方が、ストレスも溜まらず、リラックスできて、そのぶん息長く続けられる――六本木でも赤坂でも渋谷でもない、どこの街からも少し距離を置いたココ南青山三丁目は、そんな街……だそうである(伝聞御免)。




●出前天丼


 店内7席ほどのカウンターと、その背後にラウンジ風にゆるりとソファの並ぶスペースがあり、どちらも照明は相当に落としてあって、まあちょっとゆっくりしましょうか……といった感じのまったりした空間。BGMはSotte Bosse――J-POPのブラジリアン仕立てシリーズ。


 前回「バーはお酒が目的であり、食べ物はほどほど」などと書いたが、こちらのバーはフードメニューが実に多彩。と言うか、ずいぶん遊んでる感じである。


 熱々餃子\750、ゆうちゃん家のさっぱり冷麺\900、沖豚玉子鋳炒飯\990、はまちゃん家のオムライス\900、ナシゴレン\990、豆多彩キーマカレー\1,050……って「フツーに居酒屋じゃん」って勢いでもって「いやーお腹すいちゃってサァ。マスターなんか作ってヨ」といった使い方ができちゃう、このざっくばらん


 挙句はお隣の天ぷら屋さんから天丼の出前まで取ってしまうという……「バー」の名のもとに格式張ることなく、気取らず気負わず等身大で――がコノ店の持ち味だ。さてそんな中あるワケですよ――ハンバーガーが。




●元パン屋


 キッチンを預かる右佐林(うさばやし)さんもニューオータニのご出身。ベーカリー部門に所属していたのだが、元々は製菓を志していた人であり、いずれはそちらの道を目指すであろう人である。なのでチョコレートはもちろん右佐林さんのお手製。元パン屋・右佐林さんが加入して以来、バンズも自家製になった。


 自家製フォカッチャのアボガド&トマトバーガー\1,000。自家製フォカッチャバンズは表面パリパリと硬く、歯応え軽快。中にアボカド、分厚く切ったトマト、パティ、大きく刻んだ生オニオンの上から特製ドレッシング、レタス、下バン――いたってシンプルな構成。


 各食材の直径差が著しく、見るからに安定を欠く積み方なので、上から串を刺し通しているのだが、ひとたび抜いてしまうとアボカドが真っ先に脱落してしまうという難を抱えている。フォカッチャバンズも硬く平たいつくりなので、クッション的な役割にはならず、とにかくアボカドのスリップを止めるものがない。願わくば袋に入れたいところ。


 パティはきめの細かなミンチをやわらかくまとめて、いかにもホテルらしい上品さ。ハンバーグサンド的な味わいである。


 お酒の「アテ」ということを意識すれば、粗挽きのブラックペッパーがガッツリかかっていたり、チリソースなどピリ辛くかかっていたりするとアクセントになるのだが、このバーガーにはそれがなく、かえって肉とバンズの甘味がオモテに立って、スッキリと素直な味わいのバーガーになっている。付け合せにナチュラルカットのフレンチフライ。




●バーの楽しみ


 バーの楽しみとくれば、何てったっていろんなお酒と出会えること。そしていろんなムダ知識が得られることだろう。


 本日1杯目はブーツの形したジョッキでエビス生ビール\500。このジョッキには飲み方があって……あ〜面倒くさいので、現地で教わって下さい。だいぶ酔っ払ってきた……。


 2杯目。「ハンバーガーに合うお酒を」ということで、オーナーが考えたのは、1.味の邪魔にならないもの、2.その逆にクッサーイの――結局出て来たのは1.の方、「グレイグース(GREY GOOSE)」\1,050という英語名のフランス産ウォッカ(……どうなってるんだ?)をレモンフィズで。バーガーの後ろで青く光ってるのがソレ。


 次いで3杯目は、右佐林さんのチョコレートを食べながらキャプテンモルガンの「PRIVATE STOCK」\1,000なるをロックで。普段飲んでるキャプテンモルガンにグッと深みが加わって、俄然美味!Bootsは特にラム酒が豊富で、その数21種類!トレーダーヴィックス出身というのも影響しているのだろうか。Authentic(オーセンティック)佐藤さんから教わったロン・サカパも健在。


 以上計3杯、違う種類のお酒をおいしくいただいて、しかも立地を思えば良心的なお値段である。場所で値段を決めるのでなく――とオーナー。次は寒〜い冬の夜にあったか〜いホットバターラムを所望いたそう。




●バーとバカラック


 名古屋SOUVENIR DINER(スーベニアダイナー)の福永さんは「ショットバーにサンドイッチ」こそ理想のスナックと位置付けた。六本木のHard Rock CAFE(ハードロックカフェ)で出遇ったニューヨーカーのお気に入りのハンバーガーは、マンハッタンのとあるバーで出すsoy sauce(醤油)を使ったものだという。


 「バーとハンバーガー」という取り合わせは決してめずらしいものではないようだ。むしろ「パブとハンバーガー」の方が環大西洋的ミックスカルチャーであり、稀有なことのように思われる。


 飲みの締めのラーメンはさすがにニューヨークにはなかろうから、ごはんものでも麺類でもない、パン類を酒場で――という、そんな選択肢に自然向かってもゆくのだろう。


 店の名は、店と客、片足ずつをそれぞれ履いて「ともに歩んでゆきたい」という意味の「ブーツ」、そして最初の商いなのでまずはしっかりと「地に足を着けて」という意味の「ブーツ」である。手には職、地に足着けて、いざブーツ――




― shop data ―
所在地: 東京都港区南青山3-2-4 セントラル青山ナンバー6 B1F
      東京メトロ銀座線外苑前駅歩5分 地図
TEL: 03-3475-7717
URL: http://www.aoyama-boots.co.jp/
オープン: 2006年4月
営業時間: 18:00〜05:00(04:00LO)
定休日: 日曜日(要確認)


2007.11.26 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:59| Comment(4) | TrackBack(0) | 東京編◆西部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ゴローズから此方に移動して呑めれば良かったですねえ。ラムと言えば私はハバナクラブばかりですが少量で直ぐ酔えて楽です。キャプテンモルガンも今度呑んでみよ〜っと。バーの楽しみと言えばやはり「紫煙」を気兼ね無く、くゆらすことが出来ることでしょう。お店にはシガーの香りが残って無かったですか。
Posted by タカシ。 at 2007年11月27日 17:45
参宮橋のバーシャンクスと言うバーでもハンバーガー出しており、スモーキーバーガーと言う燻製ハンバーガーがあります。そちらはウイスキー&ビールがたくさんあります。
Posted by けん at 2007年11月30日 19:36
タカシ。様

コメントありがとうございます。お返事遅くなりました。

もちろんシガー置いてますよ。


お酒から食事から、この一軒でひと通り楽しめてしまうお店ですね。


またよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2007年12月06日 12:35
けん 様

コメントありがとうございます。そしてお返事遅くなり、すいません。

参宮橋の「バーシャンクス」ですか。バド・シャンク……はウェストコースト・ジャズですね、すいません。

では今冬の課題といたしましょうか。やっぱり寒い冬の夜には温〜いバーがよいですよネ。


ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2007年12月06日 12:40
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