ココんとこ、base(ベイス)の小悪魔に魅入られているのか、どうにも寝付かれない夜が続いている――。
●その場所
目白通りと不忍(しのばず)通りとの分かれ目、背に日本女子大、前に附属豊明小・幼稚園という位置で、通り沿いには学生をターゲットにしたカフェが並び、街並みにはどことなく雑司ヶ谷から続く妖気のようなものが感じられ……って京極夏彦の読み過ぎか。でも椿山荘へ向かって通りをさらに行くと、幽霊坂なんて名の坂もありますから。
学生の街、そして都内有数の高級住宅街である目白台。目白駅から徒歩15分、護国寺から8分(10分以上歩く感じだが)、どこの駅からも離れていることを考え合わせると、駒沢のASに似た地元密着型の店の条件を備えているように思われる。
で、さらにもう1店、コレによく似た立地の老舗があります……そう、島津山の下に構えるフランクリンアベニュー。
●フランクリンアベニュー
オーナー菅原さんは自身のバーガーショップ開店に当たり、その2年前から綿密な事業計画を立てていた。その計画に基づく開店前1年間の実地研修の場として、「ぜひココで!」と門を叩いた店こそが、五反田のハンバーガーレストラン、フランクリンアベニューである。
アルバイトながら僅か3ヶ月で店長に昇格。店の切り盛りほぼ一切を任される、又とない好機を得、10ヶ月で"卒業"。そしていよいよ自身の店の開店準備に取り掛かる……のだが、ではその事業計画とは一体何ぞやと……(今回時制を遡って進めております)
●事業計画書
大学生のとき、既にバーガーショップ構想が胸にあった菅原さん。卒業後まず広告代理店に就職、来るべき日に向けさまざまな経験を重ねた。
勤務3年目はほとんど自身の事業計画について考える毎日。ベンチャーを後押しする社風であったことから、菅原さんの練りに練った計画書は直属の上司(とその夫人)の目を通すところとなり、ダメ出しされてはまた書き直し……を繰り返すうち、さらに練り上げられて、最後は社長も頷くまでの計画が出来上がった。
3年で会社を辞めたのは本人にとって唯一「予想外」に早い展開だったそうだが、退職後は計画通り、フランクリンでの実地研修へとフェイズを進めている。
では菅原さんがハンバーガーに対し、どうしてそこまでの熱意を燃やすようになったかというと……(今回時制を遡って進めております)
●イビサ島の衝撃
海外旅行に明け暮れた学生時代、菅原さんはその旅路の末にこんな真理を見出すに至る――本場アメリカよりも世界各国の観光地へ行く方が、おいしいバーガーに遭遇する率が高い
たとえばタイのパンガン島、そして菅原さんがバーガーの洗礼を受けたスペインのイビサ島といった、世界中から旅行客が訪れる観光地やリゾート地において、バーガーはグローバルスタンダードな価値を発揮する。
現地の味にも飽きて来て、食べ慣れた食事が恋しくなる頃、ハンバーガーは信頼の置ける「間違いのない味」として("無難な"とも言う)、各国のツーリストから一様に受け容れられる→人による好き嫌いがあまりない→世界各国から人が集まる観光地に向いている――存在であるという。つまりハンバーガーは、アメリカ固有の地域語でなく、世界で通ずる国際語として、今や七つの海にまたがるユニバーサリティを持った食べ物になっている――というのだ。恐るべし、米国の世界戦略。
なので世界各地の観光地へ行くと、その土地の特色を活かしたローカルなハンバーガーに巡り会うことができ、それはときに発祥地・アメリカを凌ぐ逸品である――という次第。
イビサ島は地中海屈指のリゾート地にして、実はクラブのメッカ……"夜"が極度に発達したリゾートである。
深夜、これからクラブに繰り出さんというクラバーたちの、出陣前の腹ごしらえにBar(バル)で供されるハンバーガーは重宝され、ソノ"味"如何でその夜の調子が決まろうというほどに(やや誇張アリ)、ハンバーガーはイビサ島の夜のキーアイテムとして重要な役割を占めている……らしいのだ。
そんなイビサ島の、とあるBarで巡り会ったハンバーガーに菅原さんは超弩級の衝撃を受け、それが今日のbaseへと繋がる足掛け5年の一大事業計画の発端となったワケである。その衝撃の味とは……(ここから現在に戻ります)
●超粗挽き
なので20席強が小じんまりと収まる奥に長い店内は、アメリカンなサインプレートなど飾りつつも、欧風の白壁にシャンデリア、シンプルなスレートのタイルと、「ハンバーガー=アメリカ」の図式にとらわれない造りで、そのミックスカルチャーぶりはカフェ的とも、またビート系の夜っぽいBGMを流せばクラブ的とも呼ぶことができようか。オモテには緑を並べたちょっとしたデッキが延びて、上に赤い庇屋根。誰からも好かれるやさしい店構えで、昼どきは女子大生で満席になるというのだが……学生がランチに1,000円って……きっ、キミたち……
バーガー類13種、サンド16種、メニューはほぼこの2本柱。チーズバーガー\950、オーバルの皿にオープンにして、クレソンがふた添え。実に可憐な見た目だ。フランクリン譲りのセサミバンズにレタ、生オニ、トマ、タルタルソー、チーズはモントレージャック、パティ、下バン。
合間にクレソンをかじりつつ、やはり主役はお肉。イビサの衝撃を伝える超粗挽きパティは、筋が残るか残らないかのギリギリの境界を行く(けっこう紙一重)、コリッコリ←コレぞイビサ島の衝撃。
歯応え優先と言いつつ、脂の旨味が終始よく効いていて、チーズとタルタルがコレにさらに深味を加えている。特にチーズはパティの特徴を消すことなく、しっかりとコクを効かせて貢献度大。穏やかな味わいの中から峻烈な辛さを覗かせるオニオンが良いアクセントに。螺旋状にカットされたカーリーフライ(ポテト)は少な目だが、全体の味のバランスを思えば適量か。イビサ島で出会った衝撃の味を再現するコリッコリの荒くれパティを、フランクリン一流の端正な味とバランスで包み込んだ、コノ対比の妙が何とも類稀なる逸品。
生ビールはハイネケン\600。世界のビールも4種。折り畳み戸全開にしたテラスから、蚊取り線香の芳香を乗せて流れ込む夜風がカリブビールに火照った顔に当たって、気持っちイイ〜!
●小悪魔の冒険と成長、そして誘惑
と、こんな店を、代理店時代に培った人脈と経験を総動員して今年'07年の4月にオープンさせたのである。
目白台という立地――言われてみれば確かに好条件を備えた有望なエリアであり、それが手付かずにぽっかりと空いていたことに着目した菅原さんは、やはり流石である。
但しバーガーの場合、いかに綿密な計画を立てても、それだけを根拠とする限りは容易にGOサインの出る食べ物でないのが現状。ハンバーガーには少なからず「冒険」が必要なのだ。優等生的計算だけでは括れない、そんな遊び心や悪戯心が「base(秘密基地)」という店の名や小悪魔キャラ(女の子です)に巧く表されているように思う。
向かいが学校という場所柄、お母さんに手を引かれて食べに来たちっちゃい女の子が、大学生になって食べに来て、やがてお母さんになって子供を連れて……と、月日のめぐりをそんな形で感じ、一緒に年を重ねてゆくことができたらと、菅原さんはそれを楽しみの一つに挙げている。10年後20年後にも、同じ場所・同じ店で同じハンバーガーの食べられる、世代を超えて愛される店を目指して――いや、ほんと楽しみです。
このプロジェクトのため呼び集められたスタッフは、菅原さんの幼馴染、焼き場の"ハチ"に豪州帰りの"シノ"(あと週末にはプラス女の子1名)。普段は男ばかり"隠し砦の3イケメン"体制――正直イケてます!男だけの店というのも独特の雰囲気があってイイものだが、残念ながらそれについて触れている余裕が無くなってしまっ……
→ 【二ッ目!】 base [初台] のチーズハラペーニョバーガー
# テリヤキバーガー ◆ base [目白台] のテリヤキバーガー
# 179 base [目白台]
― shop data ―
●目白台店
所在地: 東京都文京区目白台2-9-5 目白台サンハイツ1F
東京メトロ有楽町線 護国寺駅歩9分 地図
TEL: 03-5848-4043
URL: http://www.base-burger.com
オープン: 2007年4月17日
* 営業時間 *
月曜日: 11:00〜16:00(15:30LO)
火〜日: 11:00〜21:30(21:00LO)
定休日: なし(月曜が祝日の場合は11:00〜21:30営業。要確認)
●初台店
所在地: 東京都渋谷区本町2-46-1
京王電鉄京王新線 初台駅歩3分 地図
TEL: 03-6276-8323
URL: http://www.base-burger.com
オープン: 2008年8月8日
* 営業時間 *
月曜日: 11:00〜16:00(15:30LO)
火〜日: 11:00〜21:30(21:00LO)
定休日: なし(月曜が祝日の場合は11:00〜21:30営業。要確認)
Base (ハンバーガー / 早稲田駅(都電)、鬼子母神前駅、雑司が谷駅(東京メトロ))
夜総合点★★★★☆ 4.0
ハンバーガーが食べれるお店って、たくさんあるんですね。行ったことないお店ばかりです。
baseは行ったことありませんが、行きたいお店の一つです。記事を読んで、一層食べたくなりました。
近いうちに行けたらいいな。
ではでは。
コメントありがとうございます。
私も近々もう一度行こうと思っているのですよ。と言っても今月は無理かな?お目当ては「クリームきのこバーガー」です。気になってしょうがない。
またよろしくお願いいたします。
気になっていて、私は本日行ってきました。
「クリームきのこ」最高でしたよ!
店員さんたちも確かにさわやかなイケメンでした。笑)
もっと近ければなぁ・・・
コメントありがとうございます。
> 店員さんたちも確かにさわやかなイケメンでした。笑)
砦にはあと一人、「姫」がいる筈なのですが、そちらにはまだお会いしたことがございません。
クリームきのこバーガー、秋になりましたし、そろそろ行っときますか。
でも秋の目白台はさびしいだろーなー……。私、さびしいのはどうにも苦手なもので。もぉつらくて、つらくて……。
そんな次第でよろしくお願いいたします。
チーズバーガー950円をいただきました。
確かにやや肉汁が少ない感じもありましたが、非常に美味しく頂きました。
お店の雰囲気も良いですね。次は夜にビールを飲みながら、かな?
一人でも落ち着けるカウンターもあるし。
もう少し店員さんが(焼いている方でなく)はきはきしているといいかな、と少し気になりました。姫の声は聞こえましたがお顔は拝見できず。味とは関係ありませんが...。
私はついクレソンもはさんで一気に食べてしまいましたが、別にしてかじった方が良かったのかな。
Firehouseも近所で美味しいですが混んでいますし、Fireburgerはあまりに質素でチープな内装の上に店員さんも商品を渡したら終わり、みたいな感じでおしゃべりばかり。美味しいのに残念。絵はかわいいけど。ビールもないし。
くつろげる度から言うと、one's driveかここbaseかな、と感じました。我が家の近所では、ですが。
色々なお店の情報、楽しみにしています。
コメントありがとうございます。
そうなんですよ。サイトやってること、なかなか気付いてもらえなくて、身辺秋風が吹きまくっております。
立地的にもカフェ色が強いかとは思うんですが、夜は夜でまたグダグダと楽しめる――といったところでしょうか。
お店の善し悪しは、あとは好みですよね。空いているのを「静かで居心地が好い」と解釈する人もいれば、混んでいるのを「賑わっていて活気がある」ととらえる人もいるでしょうから。私も食べたあと長居したいときは、そこまで考えてお店選びますし。
FIREHOUSE、FIREBURGER、ONE'S DRIVE、base――いずれにせよ、非常にアップダウンのある場所にお住まいなのですネ。自転車で行くのは大変だ。
今後ともよろしくお願いいたします。
お久しぶりです。ベイスの菅原です。何度もご連絡いただいていたのに申し訳ございません。2号店(初台店)出店準備と重なってしまい、申し訳ございませんでした。無事に、8月8日OPENいたしました。
で、松原さんの雑誌の件、再度ご協力させてください。ご連絡お待ちしております。