2007年05月24日

# 175 Burger Shop UNICO [栃木・那須]


Ingot Gallery NASU
Burger Shop UNICO


●発端

 野州那須町――東京から新幹線で1時間15分、クルマで2時間。歴史ある別荘地は今や都心への通勤圏であり、また週末を過ごすセカンドハウスとして、近年にわかに注目を集めている。

 そんな目下注目の那須に、昨夏'06年7月、那須高原バーガーが登場した。

 冬期は持ち帰りのみ。イートインはいつから可能か訊いたところ、暖かくなる4月頃からOK。でも5月半ば、高原の緑が一斉に萌え出す新緑の頃がベストシーズンなので、ぜひその頃いらして下さい――との返事をいただいた。ほぉ……それはよき・こと・きく

●新緑の海

 那須を訪ねるのは今度が初めて。那須ゝゝと聞いてはいたが、行ってみて驚いた。有料道路途中の展望台から見下ろすと、木々がまるで大海原のように果てしなくどこまでも広がっている(即ち"樹海")。その新緑の海の波間にクルマを入れて、道なりに走らせると、黒磯、塩原と地名だけを変えながら別荘地、牧場、キャンプ場などが途切れなく延々と続く、その規模の大きさ――那須は我が貧弱なる想像をはるかに上回る、一大避暑地だった。

●Ingot Gallery NASU


 東北自動車道・那須ICを降りて別荘地へと向かう、その途中。観光気分あふれる那須街道沿い。広い駐車場のずいぶん奥に引いて構えるのがシルバージュエリーの店Ingot Gallery NASUである。宇都宮店の職人が作るオリジナルはじめ、国内アーティストの作品からインポートジュエリーまで魅力的な品揃えで人気の店。この春からネット販売も始めた。

 はじめ銀河高原ビールのビール園の中に店を出していたのだが、ビール園が閉まってしまったため、内装に使っていた木材一式を解体・搬出して、街道沿いの飲食店跡にごっそり移築したのが1年前。

●Iターン

 那須にはその豊かな自然とスローな空気に惹かれ、多くのアーティストたちが集まってくる。陶芸家、彫刻家、建築家、音楽家、イラストレーター……。ひと癖もふた癖もある連中が集まるほどに、同じニオイを嗅ぎつけ、さらに同類が寄り集まってくる「類友」方式。こうした変わり者歴々の趣味趣向がミックスされて「那須」の空気が構成されているのだと、そう説明するIngotの宮本さんだって、那須にすっかり魅せられて東京から移り住んだIターン組だ。


 そんな那須の空気の中にあっては「ただ商売するんじゃなく、なにかしら面白くやりたい」という、そんな気分にさせられるらしく、そこで店の移転に際し、何かやりたいなぁ――と宮本さんが考えついたのが、この「Burger Shop UNICO(ウニコ)」だった。

 店の裏手は那須岳の眺望が良いだけが取り柄の、ただの野原。ココにイスでも置いて、雄大な那須の山並みを眺めながら"何か"をゆ〜っくり食べたいなぁ……そんなイメージが浮かんだ末、宮本さんの頭の中で像を結んだその"何か"こそハンバーガーだったと――まさに絵に描いたようなスローフード&スローライフ


●廃材利用と地産地消

 ただやるんじゃつまらない――そんな那須の不文律に従い、UNICOにも明確なコンセプトが立てられた。一つが廃材利用。

 裏手のデッキは旧店舗の廃材を組み立てたもの。丸いテーブルは電力会社が使っていた巨大コイルの芯のお下がり。デッドスペースをちょっと有効活用という感じで、ヨソ行きではない、ある種「地元特典」的な裏なりの那須気分が楽しめる。BGMはカーティス・メイフィールド......Move On Up!


 もう一つのテーマは地産地消。

 那須の新鮮な高原野菜と那須牛……と言いたいところだが、ちょっとでも使おうものなら途轍もなく値が張ってしまうため、まぁ妙に背伸びなどせず、地に足のつく範囲でしっかりやって、お客さんにはぜひ気軽に食べてもらいましょう――ということで、パティはAUSSIEビーフに実はおいしい那須豚を僅かの割合混ぜて、ほの甘い、やわらかな食感で出している。那須豚を侮る無かれ。

 トッピングの目玉焼きはこれまた実はおいしい那須鶏の卵。このフルフルとした黄身の弾力! 濃厚な黄色! 片面焼きにしたのは大正解。ぜひこの瑞々しいルックスは目で味わいたく。

●NASUバーガー

 バーガー4品。地産ルールに基き、お隣のはちみつやさん繋がりのハニーマスタードバーガピリ辛チリソースの中に地元味噌屋の味噌を加えたペペバーガーバジルに松の実、パルミジャーノチーズを使ったジェノバーガーはどれもセット¥1,200。看板メニューNASUバーガーはセット¥1,000。単品は各¥700。トッピングの目玉焼き、ベーコン、チーズ各¥100。

 この日はNASUバーガーのセット¥1,000に目玉焼き+ベーコントッピング。自家製ジンジャーエールという変わったドリンクをお供に指名。コレがのどに効く効く! 実はコーヒーもクセが少なく、香りの高いハンバーガーに合う豆を地元の自家焙煎の店から……と挙げればキリ無し。


 バンズは黒磯の名店温香(はるか)の白パン。以下、目玉焼きにベーコン、パティ、トマト、オニオン、レタス、下バン。バンズは表に打ち粉がされてカフェ風。控え目ながら粉の風味が活きており、邪魔にならない甘さ。オニオンは時期もあって非常に甘く、コリコリとおいしい。季節になればトマトも超絶おいしいものがいただけるそう。

 パティは「限りなくパティ寄りなハンバーグ」といった趣き。イタリアンハンバーグをパンに挟んだイメージとのことで、ふっくら分厚く、どこか丸みがあって、クサミやトゲのない味わい。軽くコショウを振っただけでマヨネーズもケチャップも入れていないため、素の甘味が挽きの粗いしっかりした噛み応えの中から伝わって、肉の存在が極めて大きい。硬めに焼いたベーコンはパティに比して埋没気味。目玉焼きトッピングは有効。黄身を崩しながらいただきたく。

 食べ応えあるパティの上下をさっぱりした白パンで挟み込む、後口さっぱり目の高原バーガー。ポテトはクランチ付きでピリッと刺激的。傾向のまるで違う残りのメニューもすごく気になる……

●山とハンバーガー

 もっとワイルドでアメリカンなモノも思ってはみたのだが、しかし那須連山を見ながら緑に囲まれて食べる様子を想像すると、味が自然とやわらかくなったと宮本さん。なるほど……ロッキー山脈を見ながら食べるバーガーは、また味が変わるワケですな? 確かに日本の自然は「たおやか」にて。

 前回の湘南・茅ヶ崎や、滋賀・大津などもそうだが、やはり大都会の喧騒から離れて食べるソレの方が、スローフードとしてのハンバーガーを素直に体現できているような気がする。まぁ分刻みの世界でスローフードなどと言われてもネェ……。

 店名は宮本さんの名にちなみ、ラテン語で「特別な」「唯一の」といった意味。那須与一は有名だけど、これからは那須の……。行楽地・那須の地元的一面に触れることのできる那須ローカル、知る人ぞ知るマニアックなハンバーガーショップ。これからもさらにマニアに!




― shop data ―
所在地: 栃木県那須郡那須町高久甲2888-38
     東北自動車道 那須ICより3q 地図
TEL: 0287-64-1508
URL: 栃ナビ!/Ingot Gallery NASU
オープン: 2006年7月21日
営業時間: 11:00〜17:00(LO)
※7/19〜8/31までは21:00まで
定休日: 夏期−10月まで無休(冬期−火水曜休。要確認)

2007.5.24 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 15:34 | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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